保険学雑誌
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「生命保険契約における『対価関係』の考察」—令和4年度大会共通論題—
生命保険契約における「対価関係」とは何か
原 弘明
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2023 年 2023 巻 661 号 p. 661_65-661_80

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抄録

保険法学では,人保険契約の固有権性に関連して,第三者のためにする契約における対価関係に注目する見解が有力である。本稿では,他人のためにする生命保険契約が民法上の第三者のためにする契約の一種であるとされていることを踏まえ,対価関係を含む民法学上の第三者のためにする契約の議論を確認した。対価関係論の影響の有無を独立的対価関係・従属的対価関係の区別に依拠しつつ検討した結果,契約者と被保険者が同一人の契約(契被同人契約)・同一人でない契約(契被別人契約)のいずれにおいても,モラル・リスク対応はできているので,残る問題は保険金受取人の特定により解決すべきとした。受益の意思表示の拒絶に相当するとも考えられる生命保険金請求権の放棄については,対価関係を考慮してもいずれの見解に有利な結論が得られるものではないと考えた。さらに,被保険利益概念については,対価関係概念の代替性を有するものではないと考えた。

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© 2023 日本保険学会
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