保険学雑誌
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【一般論文】
英国最新保険判決にみる因果関係論
-[2023] EWHC 630(TCC)(22 March 2023) Allianz v University of Exeter-
森 明
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2023 年 2023 巻 663 号 p. 663_121-663_144

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抄録

2023年3月22日に英国高等法院・技術建設法廷は,2021年2月に大学構内に隣接する工事現場で建設工事中に発見された第二次世界大戦中の1942年4月~5月に,敵対する独軍によって投下された爆弾が,80年近くを経た2021年2月27日に制御起爆によって爆破された事件で,保険証券の「戦争除外条項」の適用有りと判示した。複数の原因が同時又は順次並行的に併発した保険事件で,何が主因で何が従因・副因であるのか,即ち,因果関係をどのように捉えるべきであるか,ということを的確に判断することは容易ではない。この事件は因果関係に関する先例(主として海事判例)を的確に選別して検討した簡にして要を得た判決である。近年の英国の裁判官に通底するものは「常識」によるとするものであるが,本稿ではこの規準に加え,Lord Hoffmann が1999年に案出した“a pedantic lawyer”(a reasonable person の対義語)にも焦点を当てて解説する。

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