2023 年 2023 巻 663 号 p. 663_47-663_66
生命保険信託を利用すると,生命保険契約による利益を実質的に享受する者の決定方法等について柔軟な定めを設けることが可能となり,生命保険契約の締結のみでは実現困難な契約当事者の意図の実現が可能となる。他方で,法令を形式的に適用するときには,生命保険契約のみが締結されている場合と生命保険信託が設定されている場合とで,当事者の意図しない不合理な差異が生じうるために,そうした差異が生じないような解釈をすべき場合がありうる。具体的な例としては,①生命保険信託の受益者を変更するにあたっては保険法45条が準用されると解すべきであり,②生命保険金受取人による保険金請求権の放棄の効果には信託法99条2項が類推適用されると解したうえで,当該生命保険契約に適用される約款に保険金受取人が存在しなくなった場合の取扱に関する定めがあれば当該定めに従い,そうした定めがなければ保険契約者が保険金受取人となると解すべきである。