2023 年 2023 巻 663 号 p. 663_67-663_88
本研究は,高等学校商業科教科書における保険活動の「働き」に関し,「理解しやすい表現か否か」を主題として考察を行うものである。戦後の一連の高等学校商業科教科書(22種類)を研究材料として選定し,保険活動の「働き」に関する表現から導出した恒常的要素を変数とし,真理値表を作成した。そして統計ソフトを利用し樹形図のplot outを行い,さらに学習チャネルに翻訳変換するというプロセスにより,商業科高校生にとって理解しやすい表現へと練り上げを行った。高等学校商業科教科書に採用され,保険知識に不慣れな高校生が理解しやすい表現に触れることになれば,保険活動の「働き」を学び身に付け,将来,ビジネス活動に携わるようになる際に活動力発揮に寄与すると考える。本研究には「理解しやすい表現か否か」について実証的確認を行っていないという限界が存在し,その克服は今後の課題である。しかし,別言するなら,本研究のプロセスにより練り上げられた「理解しやすい表現」は完全なものではなく,現在の教科書の表現には改善すべき余地があることを示唆している。改善の余地という点から,今後の教科書研究の更なる進展が期待される。