2024 年 2024 巻 664 号 p. 664_107-664_134
マイクロ保険仲介者の意義や役割,マイクロ保険の対象となる加入者層を保護するための枠組みを概観し,その検討課題を明らかにする。マイクロ保険の普及が進む国は少なくないが,インド,フィリピン,南アフリカは監督機関によるマイクロ保険仲介者等に対する具体的な監督規制を設けており,これらの国々の法規制を対象に検討を行う。およそマイクロ保険の流通にあたっては,マイクロ保険の提供者とその対象となる顧客との間に保険商品の購買動機となる信頼が欠如している状況にあるが,そこで重要な役割を果たすのがマイクロ保険仲介者である。マイクロ保険は,安価な保険料により提供されることが求められるため,募集人等の資格登録のためのトレーニング要件を緩和してコスト削減が図られるが,他方で,仲介者として必要な資質や能力,遵法精神を有しない仲介者による不適切販売も懸念される。監督規制によってバランスのとれた加入者保護が要求される。より低廉な紛争解決システムの導入も課題である。