2024 年 2024 巻 666 号 p. 666_73-666_92
本稿は日本人の寿命限界を,男はグンベル分布,女はワイブル分布で算出した。その結果値は男が119歳,女が122歳である。この値は男が1967~2020年,女が1966~2023年の長寿者没年数より推計したものである。もとより,平均寿命は伸びているので,寿命限界も遺伝子の突然変異やiPS細胞(Induced Pluripotent Stem cell,人工多能性幹細胞)の実用化等により代謝効率が高まれば,更に伸びるが,ここ数年では困難であると考えている。第二点は,寿命限界値の推計にあたって,男は老衰死亡の最高年数,女は105歳以上のそれが適しているとするものである。その理由は誕生から死亡に至るまでを三区分し,男は比較的医療技術の影響を受けない老衰死亡の最高年齢の分布とデータ解析によりグンベル分布が,女は三区分の最高値105歳以上の死亡率分布が一様分布になると仮定できることとデータ解析により,女はワイブル分布が寿命限界の推計に適しているとするものである。第三点は,病死も老衰死亡(自然死)も遺伝子と環境が関係している。このため,細胞の寿命から個体の寿命限界値を推計することが困難であり,統計調査を利用するのが適していると考えたのが本稿である。