保険学雑誌
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【一般論文】
損害保険における事故自動車の修理工賃単価の決定方法の現状と課題
饗庭 靖之
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2024 年 2024 巻 666 号 p. 666_47-666_71

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抄録

自動車車体整備業者が持続的に事業を行うために解決が必要な問題として,「損保会社と整備業者の団体の間での指数対応単価を引き上げる団体協約締結のための交渉を行うことによる団体協約を締結すること」と,「指定工場制度(DRS)(損保会社が,事故により所有自動車が損傷した保険契約者に対して,自動車の修理を行う整備業者を紹介する制度)において,損保会社が整備業者の技術力に対応した工賃単価に契約上の工賃単価を改善すること」と,「損保会社が損害保険代理店であるディーラーの利益相反行為が生じることを防止すること」があり,これら三つの問題は相互に連関した問題として総合的に解決されていく必要がある。これらの問題は,自動車保険の適用ある自動車の所有者との接点を,損保会社や自動車ディーラーが主に持っているため,整備業者は,損保会社やディーラーから仕事を受注することにより,実質的な下請業者となっていることを原因として生じている。しかし,自動車車体整備業者は,自動車の再利用を担う事業者であり,自動車産業の SDGs の担い手であるとともに,損害保険において事故車の修理を行うことにより,自動車保険の保険契約者の被った被害を回復する損害保険にとって不可欠な存在である。上記の三つの問題を総合的に解決していくことができるのは,損保会社であり,自動車保険において保険契約者が被る損害を回復するうえでの損保会社にとって不可欠のパートナーである整備業者が技術力を生かして,自動車の被った損害を回復させる業務を行うことを,損保会社が支援していくという姿勢を持つことによって,自動車車体整備業が現在の再生産が困難な状況を脱し,諸外国と同様に自動車を巡る SDGs の担い手として活躍再生していく状況を作り出すことができる。

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