抄録
インターンシップ経験が新入社員のキャリア適応力に及ぼす影響を実証的に検証することを試みた。キャリア適応力とは、職業人が自らの能力や適性にあわせて職業上の希望を持ち、職業や職場から要請される様々な内容を受けつつ自律的な能力開発を行うことで、個人と環境の間の葛藤を改善するという能力・態度であり、特に環境変化の激しいIT業界に今後入社してくる新入社員には大いに期待される能力である。IT業界10社の新入社員へのアンケート調査から、新入社員のキャリア適応力が「キャリア自信」、「キャリア好奇心」、「キャリア自己決定意識」、「キャリア他者調整意識」の4次元構造であることを確認した。また、インターンシップ経験の有無とキャリア自信との間に有意な関係性を確認した。これは、学生時代のインターンシップ経験が、新入社員のキャリア自信を高める影響を及ぼすことを示唆するものである。さらに、インターンシップ経験の有無と学生時代の重視活動との交互作用により、インターンシップ経験が新入社員のキャリア自信を高める影響は、学生時代のサークル活動に不熱心だった者にとって、より大きいものであることを示唆する結果となった。