日本関節病学会誌
Online ISSN : 1884-9067
Print ISSN : 1883-2873
ISSN-L : 1883-2873
原著
内側人工膝単顆置換術における後方傾斜決定のための脛骨プラトーの直接参照
―MRIと術中単純X線膝側面像を用いた残存軟骨の影響の評価―
綾 久文森下 貴文赤木 將男井上 紳司山岸 孝太郎森 成志
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 41 巻 1 号 p. 6-11

詳細
抄録

目的:十字靱帯を温存する人工膝単顆置換術(UKA)においては,患者固有の関節面形態を再現することが求められる。しかし,脛骨後方傾斜(posterior tibial slope: PTS)の決定については一定の方法がない。我々はCTによる脛骨プラトー内側1/4のPTSは単純X線膝側面像でのPTSに一致することを報告したが,実際の術野ではCTでは評価できない残存軟骨の影響を受ける可能性がある。本研究では術前MRI,さらに,関節鏡プローブを内側脛骨プラトー上に置いて撮影した術中単純X線膝側面像を用いて,残存軟骨による脛骨プラトー直接参照への影響を評価した。

方法:UKAを施行した37膝の術前MRI MERGE画像を用いて内側脛骨プラトー1/4および1/2における脛骨プラトーの軟骨下骨に対する軟骨表面のなす角を測定した。さらに,11膝を対象とし,関節鏡プローブを前後方向に内側脛骨プラトーの内縁から1/4および1/2に置いて術中単純X線膝側面撮影を行い,軟骨下骨とプローブのなす角度を測定した。

結果:MRIにおける検討では,脛骨プラトーの軟骨下骨に対する軟骨表面のなす角は,内側脛骨プラトー1/4および1/2でそれぞれ−0.8°±0.7(範囲−2.4~0.0,n=37)および−0.7°±0.6(範囲−1.8~0.2,n=37)と小さかった。術中単純X線膝側面像による検討では,脛骨プラトーの軟骨下骨に対するプローブのなす角は,内側脛骨プラトー1/4および1/2でそれぞれ−0.1°±0.5(範囲−1.7~0.0,n=11)および−0.4°±0.4(範囲−1.2~0.0,n=11)と小さく,同様の結果であった。

結論:残存軟骨による内側脛骨プラトーの直接参照への影響は小さかった。脛骨プラトーの内縁1/4から1/2において関節鏡プローブのようなデバイスを前後方向に置いてPTSを直接参照することは可能と考えられた。

著者関連情報
© 2022 日本関節病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top