日本関節病学会誌
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Editorial
原著
  • ―患者レジストリシステムからの報告―
    大高 圭司, 竹上 靖彦, 大澤 郁介, 今釜 史郎, 福島 若葉, 坂井 孝司
    2025 年44 巻1 号 p. 3-8
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:大腿骨頭壊死症(ONFH)では他部位にも骨壊死を合併することがあり,解剖学的に異なる3部位以上の骨壊死を認めるものは多発性骨壊死(MFON)と呼ばれる。本研究ではステロイド関連ONFHについて,定点モニタリングデータ(厚生労働省ONFH研究班運用のレジストリ)を用いてMFONに関連する因子を検討した。

    方法:2009年10月から2023年6月に全国43施設からレジストリに報告されたONFH4,986例のうち,ステロイド全身投与歴があり,他部位の壊死の検索が行われた658例(平均年齢46.4歳,男性294例,女性364例)を対象とした。検討項目はMFONの頻度,骨壊死の部位,またMFON群とONFH以外の骨壊死を認めない群(Non-MFON群)の2群比較を行いMFONの危険因子を評価した。

    結果:MFONを35例(5.3%)に認めた。主な骨壊死の部位は膝関節35例(100%),肩関節24例(68.6%)であった。Non-MFON群は458例あった。MFON群で有意に年齢が低く,女性の割合が多かった(P<0.01)。ステロイド使用期間・最大使用量・パルス療法の有無,習慣飲酒歴,喫煙歴,病型・病期分類に有意差は認めなかった。罹患疾患はMFON群で全身性エリテマトーデス,血液腫瘍の患者が有意に多かった(順にP<0.05,P<0.01)。多変量解析の結果,若年,女性,血液腫瘍の罹患が独立した危険因子であった。

    考察:ステロイド使用歴のある若年,女性,血液腫瘍患者ではMFONを発症する可能性が高く,全身検索を考慮すべきである。

  • ―Yakumo Study―
    井戸 洋旭, 竹上 靖彦, 大澤 郁介, 小澤 悠人, 船橋 洋人, 大高 圭司, 今釜 史郎, 関 泰輔
    2025 年44 巻1 号 p. 9-16
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:酸化ストレスによる軟骨細胞機能低下が変形性膝関節症(KOA)発症や進行要因の1つとされるが,ヒトにおいてKOA進行と酸化ストレスの関連についての報告はない。本研究の目的は地域一般住民において,酸化ストレスとKOA進行の関連について検討することである。

    方法:対象は2017/2018年の北海道八雲町運動器検診受診者の内,活性酸素種量を示す酸化ストレス度(d-ROMs)を測定し,5年後の検診も受診した95例(平均年齢64.2歳,平均BMI23.4,女性52例)とした。計測ソフト(KOACAD)で関節列隙最小距離(mJSW)を計測した。d-ROMsを中央値(320 U.CARR)で2群に分け,5年後と初回受診時のmJSWの差との関連について比較した。また,内側mJSWの1 mm以上狭小化をKOA進行と定義し,その危険因子について多変量解析を行った。

    結果:初回受診時の内外側の関節裂隙距離はd-ROMs高値群は低値群より有意に狭く(P≦0.01),d-ROMs高値は5年後の内側mJSWの狭小化と関連した(低値群/高値群,0.09 mm/0.70 mm,P=0.004)。多変量解析を行うと,d-ROMs ≥ 320 U.CARR (P=0.014,オッズ比2.63,95%信頼区間1.21-5.70)とBMI,mJSW が独立したKOA進行の危険因子であった。

    考察:血液中の活性酸素種量が初回受診時の関節裂隙狭小化と5年後の関節列隙狭小化の進行と関連を認めた。活性酸素種量の増加がKOA進行に関連し,重要な因子であると示唆された。

  • 園部 正人, 中島 新, 山田 学, 細川 博昭, 山本 景一郎, 岩井 達則, 中野 志保, 船登 規孝, 中川 晃一
    2025 年44 巻1 号 p. 17-23
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:RA疾患活動性を評価するバイオマーカーとしてCRPや赤沈が広く用いられているが,疾患非特異的である。またIL-6阻害薬使用下ではCRPや赤沈が正常化し疾患活動性評価が困難となる場合があるため,新しいバイオマーカーが求められている。近年,DダイマーがRAのバイオマーカーとして有用との報告があるが,一定した見解は得られていない。本研究の目的は,DダイマーがRA疾患活動性を評価するバイオマーカーとして有用かを明らかにすることである。

    方法:当院でTKAを施行したRA患者63例を対象とした。対象をCDAI10以下群(寛解+低疾患活動性,n=25)とCDAI10超過群(中等度+高疾患活動性,n=38)の2群に分類した。検討項目は(1)DダイマーとCRP,赤沈,MMP-3,DAS28ESR,CDAI,SDAIとの相関,(2)Dダイマー,CRP,赤沈,MMP-3の疾患活動性に関するROC曲線下面積(AUC)と感度・特異度,(3)多変量解析による疾患活動性に関連する独立した因子の同定,とした。

    結果:CDAI10超過群はCDAI10以下群に比べ,Dダイマー値が有意に高値であった(3.3±3.6 vs. 1.6±2.2μg/ml,P=0.022)。DダイマーはCRP,赤沈,MMP-3,DAS28ESR,CDAI,SADIのすべてと正の相関を示した(r=0.517,0.641,0.545,0.589,0.373,0.416)。AUCはDダイマーが0.671,CRPが0.542,赤沈が0.592,MMP-3が0.669であり,感度・特異度(%)は,Dダイマーが57.9と80,CRPが52.6と56,赤沈が76.3と48,MMP-3が76.3と52であった。多変量解析ではDダイマーが疾患活動性に関連する独立した因子として抽出された(オッズ比:4.19,95% CI:1.19-14.70)。

    考察:DダイマーはRA疾患活動性を反映するパラメーターすべてと正の相関を示し,疾患活動性に関連する独立した因子であった。AUCが0.671,感度57.9%,特異度80%であり,感度が低かったものの,AUCと特異度が最も高かった。DダイマーはRA疾患活動性を評価するバイオマーカーの1つとなりうる。

  • 久保田 純弥, 真下 翔太, 佐藤 宏幸, 天羽 健太郎, 北村 信人
    2025 年44 巻1 号 p. 24-30
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:足趾屈曲力は足部の安定化に重要であり,内側縦アーチ高を含む足部構造との関連が示唆されている。しかしこれまでの研究は体表計測によるものであり,その関連性も一定しておらず未だ議論がある。本研究では,立位トモシンセシス撮影を用いて足部アーチ構造を評価し,足趾屈曲力との関連性を検討した。

    方法:健常成人20名20足(27.8±3.9歳)を対象とした。立位トモシンセシス矢状面画像より内側楔状骨,舟状骨,立方骨の骨床面距離(MFD,NFD,CFD)と骨皮膚間距離(MSD,NSD,CSD),距骨第1中足骨角(T1M),MFD,NFD,CFDをそれぞれ足長で除した内側楔状骨高率(MHR),舟状骨高率(NHR),立方骨高率(CHR)を計測した。足趾屈曲力はPushタイプ足趾屈曲力計を用いて測定した。統計学的評価には測定値の男女比較にはMann-WhitneyのU検定,各測定値と足趾屈曲力との相関をSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準は0.05とした。

    結果:足趾屈曲力はCHR以外の全ての計測値と有意な相関を認めた(r;MFD:0.67,NFD:0.69,CFD:0.48,MSD:0.65,NSD:0.60,CSD:0.53,T1M:0.55,MHR:0.59,NHR:0.63(p<0.05))。性別ごとの相関は男性でMFD(r=0.69,p<0.05)と中等度の相関を認めたが,女性ではトモシンセシス画像より得られたどの計測値とも相関を認めなかった。

    考察:立位荷重位でのトモシンセシス撮影による健常成人の足部アーチ構造と足趾屈曲力との関連性を評価した。男女において異なる可能性があるものの,内側縦アーチ構造と足趾屈曲力との関連を示唆した。

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