目的:RA疾患活動性を評価するバイオマーカーとしてCRPや赤沈が広く用いられているが,疾患非特異的である。またIL-6阻害薬使用下ではCRPや赤沈が正常化し疾患活動性評価が困難となる場合があるため,新しいバイオマーカーが求められている。近年,DダイマーがRAのバイオマーカーとして有用との報告があるが,一定した見解は得られていない。本研究の目的は,DダイマーがRA疾患活動性を評価するバイオマーカーとして有用かを明らかにすることである。
方法:当院でTKAを施行したRA患者63例を対象とした。対象をCDAI10以下群(寛解+低疾患活動性,n=25)とCDAI10超過群(中等度+高疾患活動性,n=38)の2群に分類した。検討項目は(1)DダイマーとCRP,赤沈,MMP-3,DAS28ESR,CDAI,SDAIとの相関,(2)Dダイマー,CRP,赤沈,MMP-3の疾患活動性に関するROC曲線下面積(AUC)と感度・特異度,(3)多変量解析による疾患活動性に関連する独立した因子の同定,とした。
結果:CDAI10超過群はCDAI10以下群に比べ,Dダイマー値が有意に高値であった(3.3±3.6 vs. 1.6±2.2μg/ml,P=0.022)。DダイマーはCRP,赤沈,MMP-3,DAS28ESR,CDAI,SADIのすべてと正の相関を示した(r=0.517,0.641,0.545,0.589,0.373,0.416)。AUCはDダイマーが0.671,CRPが0.542,赤沈が0.592,MMP-3が0.669であり,感度・特異度(%)は,Dダイマーが57.9と80,CRPが52.6と56,赤沈が76.3と48,MMP-3が76.3と52であった。多変量解析ではDダイマーが疾患活動性に関連する独立した因子として抽出された(オッズ比:4.19,95% CI:1.19-14.70)。
考察:DダイマーはRA疾患活動性を反映するパラメーターすべてと正の相関を示し,疾患活動性に関連する独立した因子であった。AUCが0.671,感度57.9%,特異度80%であり,感度が低かったものの,AUCと特異度が最も高かった。DダイマーはRA疾患活動性を評価するバイオマーカーの1つとなりうる。
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