抄録
本研究では,既知の研究において鎮静作用が認められているラベンダーと覚醒作用が認められているジャスミンが,仮眠の質に与える影響を検証し,より良い仮眠環境条件をデザインするための基礎データを得ることを目的とした。
本研究では,睡眠障害のない男子学生12 名を対象に,対象者内実験計画を実施した。対象者には安静座位でラベンダー,ジャスミン,無臭空気(コントロール)のいずれかを5 分間呈示した後,20 分間の仮眠を取らせた。ラベンダーを呈示した条件では,他の条件と比べて,仮眠中に有意な心拍数の増加が認められた。この結果は,入眠前の香りの呈示が,その後の副交感神経活動の亢進を妨げるような影響をもたらしたことを示唆している。香りによりネガティブな影響がもたらされた一因として,香りの嗜好性が考えられる。香りは,嗜好性により生体反応に影響を与えることが分かっている。本研究の結果においても,ラベンダーの嗜好性により心拍数が有意に増加した。したがって,これらの結果は,香りの嗜好性による影響が大きく,ラベンダーの香りが嫌いで鎮静効果が表れなかった故の結果であると考えられる。