睡眠と環境
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最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • ― 全体的な寝心地の因果モデルの提案―
    高橋 幸司, 大友 香穂里, 田中 秀樹
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 18 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,マットレスの寝心地について,生地の感触,沈み込み,硬さ,弾力性(反発力),あたたかさ,寝返り,幅(サイズ)から検討し全体的な寝心地の因果モデルを提案することを目的とした。本研究のため,20歳から49歳までの240名(男性120名,女性120 名)を対象者としたWebアンケート調査を行った。調査内容は,基本情報として性別,年齢,地域,身長,体重,脊柱弯曲,身体状態,使用しているマットレスの素材,サイズ,厚みについて回答させた。重回帰分析の結果,全体的な寝心地に関しては,沈み込み,弾力性(反発力),幅(サイズ),あたたかさの4 つが有意に関連していることがわかった。寝心地に対しては,特に,沈み込みが最も関連が強く,沈み込みと弾力性(反発力)にも強い関連が見られた。また,寝心地について,BMI,脊柱弯曲など身体情報がどのように影響するかを検討した結果,マットレスの主観的満足度について,マットレスの物質的な要素だけではなく,使用者の身体的特徴が影響している可能性が示唆された。さらに,本研究結果より,複数の身体的特徴の組み合わせで寝心地に影響を及ぼす可能性が示唆された。
  • 吉崎 亜里香, 若尾 良徳, 加藤 篤, 鈴木 みゆき
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 18 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/22
    ジャーナル フリー
    幼児期における午睡の消失と単相性睡眠への移行は睡眠リズムの発達の1つである。2018年に改定された現行の「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」では,園での午睡について「在園時間が異なることや,睡眠時間は子どもの発達の状況や個人によって差があることから,一律にしないよう配慮すること」と明記されているが,どの程度遵守されているかの実態は不明である。本論文では,全国の幼保連携型認定こども園に対する悉皆調査から,園の運営主体の違いによる3~5歳児の午睡の実態状況と現状の課題について報告する。2,209園への調査の結果,5歳児に午睡を設定している1,236園のうち,公立では8割,学校法人では5割,社会福祉法人では7割の園が「眠りたくない園児も布団に入る」と回答しており,一律の午睡形態を取っている園が多いことがわかった。今後の要領等の改訂に向け午睡に関する議論を深めることと,研修機会の提供等が期待される。
  • 林 光緒
    原稿種別: 総説論文
    2024 年 18 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/22
    ジャーナル フリー
    昼下がりの眠気は昼食や睡眠不足の影響を除いても生じる。このことから昼下がりの眠気は生物リズムと関連していると考えられている。この眠気対策の一つが昼寝である。しかし,1時間以上の長い昼寝をとると種々の疾患リスクが高まるだけでなく,目が覚めた直後にだるくなる原因となる。これを睡眠慣性という。さらにその日の夜間睡眠が妨害されることも多い。このような悪影響は昼寝の最中に徐波睡眠(睡眠段階N3)が出現することに起因している。これに対して15~20分程度の短時間の昼寝では徐波睡眠はほとんど出現せず,このような悪影響が生じにくいばかりか,眠気が低減し,パフォーマンスが向上するなどの効果が高まる。短い昼寝には睡眠段階N1とN2が含まれているが,昼寝の回復効果には N2 が必要であり,N1だけではほとんど効果がない。ただし,このような短時間の昼寝でも睡眠慣性が生じることがあり,この対策として覚醒刺激法,カフェイン摂取,自己覚醒などの方法が有効である。
  • 小山 恵美
    原稿種別: 総説論文
    2024 年 18 巻 1 号 p. 25-38
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/22
    ジャーナル フリー
    DST (Daylight Saving Time, commonly known as Summer Time) is a time system in which the clocks are set forward by one or two hours from the standard time for each country or region in the summer. DST in Europe and the United States was established about 100 years ago in order to request for cooperation in the World War. As the health problems have become apparent in modern society, both Europe and the United States are moving toward abolishing DST, but as of 2024, it has been continued. Japan has not adopted DST except for a few years after the World War II, but unless DST is abolished in Europe and the United States, it is predicted that there will be a movement to introduce DST in Japan again in the future. However, considering Japan's latitude, hot and humid weather, electricity demand, modern short-sleep sleeping habits, and diversification of lifestyles, the introduction of DST in Japan is not possible to bring any “benefits” such as heat countermeasures, electricity and energy conservation, or creating leisure time, but rather is predicted to have adverse effects such as increased working hours, health problems including sleep, and confusion in database management. Therefore, in modern Japan, it can be concluded that DST is an unnecessary, harmful and useless “fraudulent” time system, and that its introduction should be firmly opposed.
  • 堀江 祐圭, 橋本 敏明, 柏葉 日菜, 平泉 浩一, 水野 一枝
    原稿種別: 解説
    2024 年 18 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/22
    ジャーナル フリー
    Climate change, such as global warming, can affect the sleeping environment especially during summer. Although the effects of summer heat are often explained by maximum outdoor temperatures, minimum outdoor temperatures are also increasing, and tropical nights have been recorded at many observation points in Japan. Therefore, this paper provides an overview of climate change, especially during the summer nighttime, are based on the effects of global warming and urban heat island (UHI) in several cities and relationship between these factors and sleep. Furthermore, it introduces the Sleep-Index, which allow us to adjust the thermal environment of our bedrooms based on the outdoor weather conditions. Finally, we analyzed the time-series of changes in page views of the Sleep-Index website, finding that the page views of the Sleep-Index website increased rapidly, when there was a sudden rise in the maximum or minimum outdoor temperature followed by the maintenance of high temperature. We also found that the page views of the Sleep-Index website under the COVID-19 pandemic were significantly higher during the period of dusk until dawn, than for the other contents of tenki.jp.
  • マインドフルネスによる調整効果の検討
    松木 太郎, 細谷 拓海, 田中 秀樹
    原稿種別: 資料論文
    2024 年 18 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,ビッグ・ファイブ・パーソナリティ特性とクロノタイプから不眠症状に至るプロセスにおけるマインドフルネスの調整効果について大学生を対象に検討することを目的とした。解析対象者は大学生127 名(平均年齢19.81±1.23 歳)であった。マインドフルネスの得点に基づいて調査対象者をマインドフルネス低群(68 名)とマインドフルネス高群(59 名)に分けて多母集団同時分析を行った。解析の結果,両群ともに勤勉性とクロノタイプが有意な正の関連を示した。一方で,マインドフルネス低群ではクロノタイプと不眠症状との間に有意な負の関連を示されたが,マインドフルネス高群では有意な関連はみられなかった。この結果から,マインドフルネスは本研究のプロセス・モデルにおいて調整効果を持っていることが示され,マインドフルネスが高ければ,たとえ勤勉性の低さが夜型と関連したとしても,不眠症状には至りにくいということが示唆された。
  • 山本 隆一郎, 野添 健太, 西村 律子, 浅岡 章一
    原稿種別: 資料論文
    2024 年 18 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/22
    ジャーナル フリー
    慢性不眠障害の維持・増悪に関して,睡眠関連刺激に情報処理資源が奪われるという注意バイアスが関連していることが報告されている。注意バイアスの個人差の評価に関して,睡眠関連刺激と中性刺激に対する反応時間差を頼りとした認知課題が海外で開発されているが,これまで日本版の課題は開発されていない。そこで,本研究では,日本版認知課題を開発するための睡眠関連語―中性語の語句刺激リストを作成することを目的とした。研究1 では,『連想語頻度表』を用いて睡眠関連語候補の抽出を行い,『現代日本語書き均衡コーパス』の『短単位語彙表データベース』を用いて,睡眠関連語候補の抽出ならびに出現頻度の記述,各睡眠関連語候補と出現頻度が同等な中性語候補の抽出が行われた。その結果,24の睡眠関連語候補ならびにそれらと出現頻度が同等な中性語候補が各5対,計120 語抽出された。研究2 では,成人300 名を対象に研究1 で得られた各語の睡眠関連度に関する印象評定調査を行った。そして,全てのリストにおいて睡眠関連語―中性語間に有意な印象評定差が確認された。本研究で得られた睡眠関連語―中性語リストは今後の認知課題開発の基礎資料として活用されることが期待される。
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