睡眠と環境
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最新号
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  • ― 全体的な寝心地の因果モデルの提案(第2報)―
    高橋 幸司, 大友 香穂里, 田中 秀樹
    原稿種別: 原著論文
    2025 年19 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2025/06/30
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,マットレスの寝心地について,全体的な寝心地の因果モデルを提案することを目的とした。50歳から89歳までの360名( 男性180名,女性180名) を対象者にWeb調査を行い,使用しているマットレスに関して素材の肌触り,沈み込み,硬さ,弾力性(反発力),あたたかさ,幅(サイズ),寝返り,全体的な寝心地について4 件法で回答させた。寝心地の因果モデルを検討するために,寝心地を目的変数,素材の肌触り,沈み込み,硬さ,弾力性(反発力),あたたかさ,寝返り,幅(サイズ)を説明変数として重回帰分析を行った。続いて,多母集団の同時分析を行い,全体的な寝心地の因果モデルを検討した。  全体的な寝心地に関しての4 因子モデルでは,沈み込み,寝返り,幅(サイズ),あたたかさの4 つが有意に関連していた。4因子モデルについて,20~49歳と50~89歳の分析結果と比較をすると,沈み込み,あたたかさ,幅(サイズ)は共通であった。差異は,50~89歳では,弾力性の影響が小さくなり,寝返りの影響が大きくなった点であった。寝返りに関しては高齢者男性による影響が大きく,身体的な変化(痛みなど)が影響している可能性が示唆された。また,壮年(50~ 64 歳),前期・後期高齢者(65~89歳),および男女で区分することで,要因の影響度の変化がみられた。一方,6因子モデルでは,沈み込み,硬さ,弾力性(反発力),あたたかさ,寝返り,幅(サイズ)の6 つが有意に関連していた。本研究結果より,身長・体重・体型などの身体情報と併せて,年齢や痛みなどの身体状態も含めた検討が必要であることが示唆された。
  • 山本 隆一郎, 石井 生海
    原稿種別: 原著論文
    2025 年19 巻1 号 p. 9-16
    発行日: 2025/06/30
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,日本の家庭における養育者による就寝時の子守歌の歌いかけと子どもの睡眠問題との関連を検討することであった。web 調査により得られた満1ヶ月から満35ヶ月の乳幼児を養育している男女300 名(回答者:男性164名,女性134名,平均年齢36.18歳,SD = 6.34歳)の回答を対象に分析が行われた。その結果,全体の27.67% の家庭で就寝時に養育者が子どもに対して子守歌の歌いかけを行っていた。多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ,就寝時に子守歌を使用していること(AOR = 1.84,95%CI:1.03-3.38),保育園もしくは認定こども園に通園していること(AOR = 1.94,95%CI:1.17-3.26),養育者と別室で就寝していないこと(AOR = 0.34,95%CI:0.12-0.85)が,養育者が評価する子どもの睡眠問題があることと5% 水準で有意に関連していた。本研究の結果は,これまでのレビュー論文の見解や多くの養育者の素朴な信念に反するものであったと考えられる。ただし本研究は横断研究であり,因果関係は不明である。今後は縦断的な検討や子守歌の内容や提示方法の詳細を含めた交絡変数の更なる検討が必要である。
  • 澤井 浩子, 松本 真希, 小山 恵美, 堺 浩之
    原稿種別: 原著論文
    2025 年19 巻1 号 p. 17-28
    発行日: 2025/06/30
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    日中の身体活動と夜間の睡眠は相互に影響する関係にあり,日中の身体活動パターンは睡眠 の質を決定する重要な役割を果たす可能性がある。本研究では,日中の身体活動パターンの規則性や 変動性と,睡眠の質を反映する指標としてレム-ノンレム睡眠サイクル(睡眠サイクル)の日間安定 性(SCs)との関連を解明することを目的とした。若年成人男性16 名を対象に,身体活動パターンの 評価として手首活動量を,睡眠サイクルの評価として睡眠ポリグラフを6-8 日間計測した。手首活 動量データから身体活動パターンの日間規則性(PAr)と5 分ごとの変動性(PAf)を,ヒプノグラム からSCs と睡眠変数の日々の値および日間変動を算出した。ピアソンの相関分析の結果,PAr はSCs と正の相関を,PAf は負の相関を示した。さらに,SCs は睡眠効率の日々の値と正の相関を,睡眠潜 時やレム睡眠潜時の日々の値と負の相関を,さらにこれら変数の日間変動と負の相関を示した。以上 の結果から,身体活動パターンが日々規則的で変動性が小さいほど,睡眠サイクルの日間安定性が高 い関係が示唆された。さらに,睡眠サイクルの日間安定性が高いほど,睡眠潜時やレム睡眠潜時が短 く睡眠効率が高くなるとともに,それらが日々安定している関係が示唆された。身体活動パターンへ の介入は,睡眠の質を向上させる新たなアプローチとなる可能性がある。
  • 白川 修一郎
    原稿種別: 総説論文
    2025 年19 巻1 号 p. 29-40
    発行日: 2025/06/30
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    活動時の眠気は,脳の機能を低下させ,意欲,気分,パフォーマンスを悪化させる原因である。また,ヒューマンエラーを引き起こす大きな要因です。眠気には主観的な感じる眠気と眠り込んでしまう生理的眠気が存在する。活動時の眠気を引き起こす要因は,睡眠の不足や質的低下,睡眠障害などによる睡眠負債の蓄積である。睡眠環境は,睡眠の不足や質的低下の原因の一つである。本総説では,睡眠遮断による脳機能への影響,眠気の主観的および生理的評価法,交通事故を含む眠気によるヒューマンエラーについて概観する。
  • 豊田 由貴夫
    原稿種別: 総説論文
    2025 年19 巻1 号 p. 41-49
    発行日: 2025/06/30
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    日本人の睡眠時間が短いことはよく知られており,それには文化的・社会的要因があると考えられる。そしてその要因の一つとして,日本人の労働時間の長さが影響しているのではないかといわれることがある。しかし,労働時間の長さと睡眠時間の長さとの関係は,これまで実証的に考察されてきたわけではない。そもそも労働時間という社会的要因が睡眠時間に与える影響については,直接的な因果関係を実証的に考察することは難しい。睡眠時間については様々な要因が関わることが考えられ,そのような状況で労働時間の影響だけを実証的に扱うのは不可能と言ってよい。できることは,この問題に関連すると考えられるデータによって推論を試みることになるだろう。そこで本論では,この問題を考えるために,関連する実証的なデータを示すことを目的とする。睡眠時間や労働時間に関しては,近年,国際的な比較や時間的な変化が調査されていることから,これらのデータをもとにして,労働時間と睡眠時間の関係について考察する。
  • ~多職種・産学連携による睡眠啓発と睡眠薬適正使用の推進~
    岡 靖哲, 村﨑 佑哉, 森 さやか
    原稿種別: 総説論文
    2025 年19 巻1 号 p. 50-59
    発行日: 2025/06/30
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    睡眠は健康サポートする重要な機能の一つであり,その改善・維持を図ることは重要なテーマである。睡眠習慣の改善をはかる「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が公表され,睡眠改善への機運も高まっているが,睡眠の改善にはヘルスケア従事者だけではなく,企業・産業を広く巻き込んだ取り組みが有効といえる。一方で,不眠症などの睡眠の疾患を有する患者も多いが,かならずしも適切な受診・治療に結びついておらず,こちらも解決すべき健康課題である。これらの患者においては,睡眠改善を図る睡眠衛生指導はもとより重要であるが,睡眠薬による治療も必要であり,新たな睡眠薬の登場により治療アプローチも大きく変化しつつある,このような現状に対応する上で,医療者間の連携に加えて,産学の連携がますます重要視されている。睡眠習慣改善と不眠治療の新たなトレンドと,それに対応するための多職種・産学連携による睡眠啓発と睡眠薬適正使用の推進について解説する。
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