睡眠と環境
Online ISSN : 2758-8890
Print ISSN : 1340-8275
原著論文
短時間仮眠前の音楽聴取が生理・生化学指標に及ぼす影響
大平 雅子丸茂 亜美
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2022 年 16 巻 2 号 p. 1-9

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抄録

近年,睡眠環境を向上させる要因の一つとして音楽が注目されている。しかしながら,これまでの研究では,あくまでも音楽が夜間睡眠にもたらす影響を検討したものや,音楽療法としての効果を検討したものが中心であり,仮眠への影響については未だ十分な検討がなされていない。本研究では,リラックス効果が示されている楽曲を仮眠前に聴取することが,その後の仮眠にどのような影響を及ぼすのかを生理・生化学指標等の多様な指標から検討することを目的とした。本研究は対象者内実験計画により,対象者13 名(21.2 ± 0.6 歳)がコントロール(無音)条件,音楽聴取条件の2条件両方に参加した。音楽聴取条件では,楽曲をスピーカーにて50dB で流した後,14:00 から20 分間の仮眠をとらせた。先行研究において,呼吸数や心拍数が有意に減少することがみとめられた楽曲を使用したものの,本研究では,主観的気分,自律神経活動,睡眠変数,唾液中コルチゾール濃度や仮眠後の認知課題の成績に関して,音楽聴取による影響はみとめられなかった。さらに,本研究では予想に反して,音楽聴取条件では,仮眠前よりも仮眠後の主観的な眠気が有意に強くなっていた。しかしながら,これは楽曲そのものによる効果ではなく,仮眠時間の設定による影響であることが示唆された。本研究では,一楽曲が仮眠に及ぼす影響について検討したに過ぎず,今後提示する音楽の種類や対象者の嗜好や仮眠の長さやタイミングを考慮した上で,更なる検証を重ねる必要がある。

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© 2022 一般社団法人日本睡眠環境学会
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