抄録
本研究では,マットレスの寝心地について,全体的な寝心地の因果モデルを提案することを目的とした。50歳から89歳までの360名( 男性180名,女性180名) を対象者にWeb調査を行い,使用しているマットレスに関して素材の肌触り,沈み込み,硬さ,弾力性(反発力),あたたかさ,幅(サイズ),寝返り,全体的な寝心地について4 件法で回答させた。寝心地の因果モデルを検討するために,寝心地を目的変数,素材の肌触り,沈み込み,硬さ,弾力性(反発力),あたたかさ,寝返り,幅(サイズ)を説明変数として重回帰分析を行った。続いて,多母集団の同時分析を行い,全体的な寝心地の因果モデルを検討した。
全体的な寝心地に関しての4 因子モデルでは,沈み込み,寝返り,幅(サイズ),あたたかさの4 つが有意に関連していた。4因子モデルについて,20~49歳と50~89歳の分析結果と比較をすると,沈み込み,あたたかさ,幅(サイズ)は共通であった。差異は,50~89歳では,弾力性の影響が小さくなり,寝返りの影響が大きくなった点であった。寝返りに関しては高齢者男性による影響が大きく,身体的な変化(痛みなど)が影響している可能性が示唆された。また,壮年(50~ 64 歳),前期・後期高齢者(65~89歳),および男女で区分することで,要因の影響度の変化がみられた。一方,6因子モデルでは,沈み込み,硬さ,弾力性(反発力),あたたかさ,寝返り,幅(サイズ)の6 つが有意に関連していた。本研究結果より,身長・体重・体型などの身体情報と併せて,年齢や痛みなどの身体状態も含めた検討が必要であることが示唆された。