抄録
日中の身体活動と夜間の睡眠は相互に影響する関係にあり,日中の身体活動パターンは睡眠 の質を決定する重要な役割を果たす可能性がある。本研究では,日中の身体活動パターンの規則性や 変動性と,睡眠の質を反映する指標としてレム-ノンレム睡眠サイクル(睡眠サイクル)の日間安定 性(SCs)との関連を解明することを目的とした。若年成人男性16 名を対象に,身体活動パターンの 評価として手首活動量を,睡眠サイクルの評価として睡眠ポリグラフを6-8 日間計測した。手首活 動量データから身体活動パターンの日間規則性(PAr)と5 分ごとの変動性(PAf)を,ヒプノグラム からSCs と睡眠変数の日々の値および日間変動を算出した。ピアソンの相関分析の結果,PAr はSCs と正の相関を,PAf は負の相関を示した。さらに,SCs は睡眠効率の日々の値と正の相関を,睡眠潜 時やレム睡眠潜時の日々の値と負の相関を,さらにこれら変数の日間変動と負の相関を示した。以上 の結果から,身体活動パターンが日々規則的で変動性が小さいほど,睡眠サイクルの日間安定性が高 い関係が示唆された。さらに,睡眠サイクルの日間安定性が高いほど,睡眠潜時やレム睡眠潜時が短 く睡眠効率が高くなるとともに,それらが日々安定している関係が示唆された。身体活動パターンへ の介入は,睡眠の質を向上させる新たなアプローチとなる可能性がある。