抄録
トキをどのような生産の場に迎えるかという課題に関わって小佐渡地域の農業を展望する場合、いずれにせよ突きつけられる課題は、トキの生育環境と矛盾しない農業生産の展開であり、いわゆる環境保全型農業の展望をどのように描くかという点にある。本地域には、トキの野生復帰に配慮した様々な環境保全型農法の実践を試みる個人やグループが力強く育っており、それらの取り組みが大きく取り上げられている。しかしながらその反面、それらの動きは点や線であって、いまだ面的な取り組みあるいは地域全体のものになってはいない。本報告では、トキ野生復帰を控えた小佐渡地域における環境保全型農業の展開条件を地域農業の経営経済的側面から分析し、施策的課題および展望を考察する。