抄録
ダム湖は表面積が狭く水深が深いため水の鉛直混合がおこりにくい水塊構造をもつ。そのため、中深層においては溶存酸素が枯渇しメタンの発生しやすい状況にあることから、メタンの大気中への供給能は高いと考えられる。本研究では過度に富栄養化したダム湖においてメタンの消長と湖外へ放出を明らかにした。その結果、5月から11月の底層において106nM以上の高濃度のメタンが存在した。また、ダム湖放出メタン量は8から10月において平均32mmol/m2/dayで推移した。これより、富栄養化したダム湖は高いメタン放出能を持つことがわかった。地表でのダム湖の割合は少なく、大気への影響は小さいかもしれないが、その放出能はゴミ処理場に匹敵するため、ダム湖生態系の健全さを考える時の重要な因子となるであろう。