抄録
河川水の水質形成過程, および水質に与える地質やアジア大陸からの越境汚染物質の影響を評価するため, 長崎県対馬の河川水について, Sr同位体を水質トレーサーに用いて検討した。河川水と基盤岩の化学分析および岩石の溶出実験の結果から, 花崗岩地域では斜長石が, 堆積岩地域では炭酸塩鉱物が, 水質を強く規制していることが示された。特に堆積岩地域の河川水では, アジア大陸に面した島の西側で硝酸イオン, 硫酸イオン, 非海塩起源のCaイオン, Mgイオン濃度が高かった。これは, 酸性の越境汚染物質の影響を受けて, 風化に弱い炭酸塩鉱物の選択的溶解が起こった結果と考えられる。河川水のSr同位体組成の地理的変化や炭酸塩鉱物の値との良い対応も, こうした考えを支持している。