抄録
琵琶湖深底部に生息するアナンデールヨコエビの生息密度を1969年から1999年にかけて調査した。本種の生息密度は1980年半ばに突如増加し、それ以前の7倍の密度になった。環境要因のうち、本種の餌供給の増加を示唆する変化は見られなかった。1990年代と1960年代の個体を比較したところ、体長・抱卵数ともに1960年代に大きく、1990年代には一個体あたりの餌条件が悪化したことが示唆された。このように、本種の密度増加は繁殖率の増加ではなく、生残率の増加によるものであった。本種の増加とほぼ同じ時期に、本種の捕食者であるイサザが減少していることから、本種の個体群密度の長期変化が、餌環境ではなく魚類による捕食圧によって変化したことが示唆された。