抄録
琵琶湖沿岸域の湿地帯において冠水・干出は,脱窒過程に影響する堆積物中の酸化‐還元領域を大きく変動させる要因であると考えられる。本研究では,湿地帯の冠水・干出環境により,堆積物の脱窒活性がどのような影響を受けるかを明らかにすることを目的とした。冠水状況にある定点では,硝酸イオンの添加により脱窒活性は大きく増大した。一方,干出状況にある定点では,硝酸イオンの添加に関わりなく脱窒活性は高く維持された。これは,干出による酸化領域の増大が,硝酸イオンの蓄積を招くことによると考えられる。したがって琵琶湖沿岸域の湿地帯の脱窒は,冠水環境では硝酸イオンによる制限を受けるが,干出環境では硝酸イオンは制限とならないと考えられた。