抄録
宇和海(豊後水道東部)の北灘湾は、湾奥に流入する河川水の影響下にあるエスチュアリーである一方、湾口から進入する外洋系海水の影響を強く受けている。この湾において、夏季の1ヶ月間にわたって詳細な現地調査をおこなった。湾口に設置したADCPデータを利用して湾口における物質フラックスを見積もり、湾内及び流入河川のデータと合わせて窒素・リン収支の変動を連続して見積もった。その結果、底入り潮と呼ばれる湾口底層からの間欠的な冷水進入にともなって湾内に栄養塩が供給され、それが湾内で植物プランクトンの大発生を引き起こし、発生した大量の植物プランクトンは湾口上層から湾外の宇和海に輸送されていることがわかった。湾外からの溶存無機態窒素フラックスは、河川フラックスの約5倍にも達した。