抄録
琵琶湖岸周辺には,内湖と呼ばれる付属小湖沼が存在する。こうした内湖は,湖岸付近の水田とともに河川や水路によって本湖とつながれ,琵琶湖の生物多様性の維持に重要な役割を果たしてきたと考えられる。しかし農地の造成などにより,今日では,新たに人工的に作り出されたものを除くと,23内湖が残るに過ぎない。総面積も429haと1940年頃の1/7近くにまで減少してしまった。われわれは2001年から,植物・動物の分布調査を内湖で進めているが,特に水生植物では,絶滅危惧_I_A類を含む多くの稀少種の分布が確認され,内湖が現在も琵琶湖の生物多様性に重要な役割を果たしていることが明らかになった。これらの分布データを用いての内湖の類型化の試みと,多様性が維持されている要因を検討した結果について報告する。