公共財供給の採否を判断するための道具立てである費用便益分析は, これまで, 体における公共図書館設置についての意思決定の問題には用いられてこなかった。これは, その必要性が低かったというよりもむしろ, 行するに足るだけの充分な方法論が確立されてこなかったことに起因するものと考えられる。にも関わらず, そのための理論的な研究は殆ど行われていない。そこで, 本稿は, 費用便益分析を公共図書館に対して適用する際に提起される様々な論点について考察を加えるとともに, 消費余剰の概念に基づいた便益評価を提案し, その妥当性と適用可能性について論じた。