2005 年 51 巻 3 号 p. 125-140
e-print archiveとはいかなるメディアであるのかについて, 日本の物理学研究者に対する電子メディア利用実態調査結果を通じて考察した。本稿の特徴は, (1) 1999年に行った利用実態調査との比較を通したe-print archiveの利用と意識における変化に焦点を当てること, (2) 電子ジャーナルとの比較からe-print archiveの位置づけを考えることの2点にある。利用実態調査の結果から, e-print archiveの利用や意識はこの4年間でほとんど変化しておらず, 理論研究者であるか若手研究者であるという限定的な集団が利用していることが明らかになった。また, e-print archive利用者は非利用者に比べて学術雑誌への投稿率や電子ジャーナルの利用度が高かった。e-print archiveは学術雑誌論文の内容を少しでも早く入手したい研究者が利用するインフォーマルな情報メディアであり, これ以外に入手手段を持たない若手研究者が利用する傾向にあると推察される。