日本図書館情報学会誌
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論文
酸性化した漢籍の本文紙に対する曝書の劣化抑制効果
望月 有希子
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2018 年 64 巻 1 号 p. 1-18

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抄録

清代に刊行された漢籍の本文紙別の酸性状態は,宣紙はpH5.3 であったが,竹紙は4.0,パルプ紙は3.8 と酸性化が進行していた。この漢籍の酸性化を抑制するためには,書籍を開き,風を通す曝書は,酸性物質を揮散させるため効果があると考えた。これまでに,加熱劣化処理を施し酸性化した竹紙冊子体試料が,曝書によりpH が上昇したことを確認した。そのため本研究では,実際の漢籍に対する曝書の酸性化を抑制する効果を検証した。調査は,実際の漢籍における大気汚染物質による酸性化への影響を調べ,その結果を踏まえた上で,筑波大学附属図書館所蔵の漢籍に対して曝書試験を行った。その結果,pH4.0以下の部位は0.3 前後,pH5.0 以上の部位は0.5 前後上昇し,曝書は漢籍の酸性化の抑制に効果があった。曝書では 24 時間以上空気循環や風通しの良い場所に置くことが適切であり,書籍本体に対する直接の送風と定期的に頻繁に曝書を行うことは効果があることを確認した。

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