2020 年 66 巻 1 号 p. 1-18
本研究の目的は,昼休み時間を過ごす中学生にとって,学校図書館がどのような機能を果たしているのかについて,その全体構造を明らかにすることにある。第一に,質問紙調査により,生徒が館内で過ごす場所を同定し,その場所でどのように感じているのか,居場所の機能を測定する項目尺度を用いて平均評定を算出した。第二に,参与観察のデータに基づき,KJ 法により生徒が過ごしている状態を同定し全体構造の様相を捉えた上で,マイクロ・エスノグラフィーの手法を用いて生徒の行動と周辺書架との関係が,観察者である筆者にどのような居方として認識されているのかという中学生の居方の観点から解釈的に事例分析を行った。その結果,学校図書館は,書架との関係により1 つの館内に同時多発的に,中学生が過ごす場所と居方の選択が複数提供されることから,校内における1 つのセーフティーネットとして多様な機能を併せもつことが明らかとなった。