日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第10回日本ロービジョン学会学術総会
セッションID: P105
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ポスター第1会場
MNREAD-Jkによる学習環境の整備
-漢字を学習する段階の児童の文字サイズの選択-
*伊藤 雅貴水谷 みどり小田 浩一
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抄録


【目的】ロービジョンの学齢児にとって考慮すべき文字サイズには、漢字仮名交じり文が効率よく読むことができるサイズに加え、日常学習する新出漢字等を一画一画まで判別することができるサイズがある。ここでは、MNREAD-Jkを用いた読書行動の評価をもとに、漢字仮名交じり文を読むことができる文字サイズを選択し、さらに、字形を確実にとらえることができる文字サイズを検討し、実際の学習場面に活用する教材作成を試みた事例を報告する。

【対象と方法】地域の小学校3年と5年にそれぞれ在籍し、盲学校教育相談を利用する女児2名、対象児AとB。両名とも未熟児網膜症、視力は両眼で0.15。近見で視力を測定した後、MNREAD-Jkで読書について評価し、臨界文字サイズを推定した。視距離の調節行動について、文字サイズと関係が見られるかを確認した後、臨界文字サイズをもとに読み教材を作成し、漢字仮名交じり文を効率よく読むための文字サイズを読速度や誤読数により比較した。また、視距離の調節によって漢字一画一画までを判別できる視角を、本人の感想を基に検討した。

【結果】MNREAD-Jkの結果、Aの臨界文字サイズは0.8logMAR。漢字仮名交じり文を読むためには臨界文字サイズの約2倍の視角が、漢字の字形を捉えるためには約2.4倍の視角が必要であった。Bの臨界文字サイズは0.9logMAR。漢字仮名交じり文を読むためには臨界文字サイズの約1.8倍の視角が、漢字の字形を捉えるためには約2.7倍の視角が必要であった。

【考察】MNREAD-Jkによる読書評価は文字サイズを選択する基準を作るために有効であると思われた。2事例の検討結果から、文字の字形を学習している時期の児童には、漢字仮名交じり文を読むためには臨界文字サイズの約2倍、漢字の字形を正しく捉えるためには、臨界文字サイズの約2.5倍程度の視角が必要なことが示唆された。

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