【目的】視覚障害者が在職する事業所を訪問し、視覚障害者本人とその方を雇用する事業所の担当者から、就労状況等を聴き取り、視覚障害者の就労の実態を把握する。
【対象と方法】10事例の在職者視覚障害者及び事業主に対して聴き取り調査を行った。
【結果】聴き取りをした視覚障害者が勤務する事業所の形態、規模、業種は多様であった。
就業中の視覚障害者の障害状況は一例を除き出生時からの障害であった。視覚障害の状況は、全盲から弱視と様々であり、そのほとんどが徐々に障害程度が重度化していた。
従事している職種は視力に頼る作業が3例で、他は視力に依らない作業であった。一例を除き他の全ての事例がほぼ終日パソコンを使用して業務を進めていた。就職経路は様々であるが、最終的にはハローワーク紹介による就職という形態がとられ、ほとんどが正社員であった。
弱視で視力に頼る移動ができる3例は、通勤の際に白杖は使用していなかった。他の事例は白杖を使用して単独歩行しているが、職場内では白杖無しで移動する者がほとんどであった。交通機関のラッシュ時間帯や日没時間をふまえてフレックスタイムを適用する配慮がなされていた。
【結論】視覚障害者の就業事例に関する聴き取り調査の実施は、聴き取りに応じてくれる協力者を得ることと聴き取り内容の公開について了解を得ることの2点で困難が多く、報告できるのはごく限られた事例となったが、大事な点として次のことが確認された。 ○通勤や業務中の事故への不安 ○就職までの道のりの厳しさ ○事業所の決断 ○周囲の支援と自助努力 ○パソコンの操作能力
聴き取りを実施したが報告書に掲載できない事例や、聴き取りを実施できなかった事例の中にも、上記の問題を解決して教師や福祉専門職、研究職、各種の事務職(総務、人事、研修担当など)としての業務に従事している例などがある。これらの就職事例が広く周知され、就職を希望する者の追い風になることを願う。
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