日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
セッションID: SI-2
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シンポジウム I
「今、視覚障害者の就労の課題は何か? 中途視覚障害者の雇用継続こそ課題」
*工藤 正一
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抄録
 障害者実態調査などで視覚障害者の就労状況をみると、視覚障害者にとって伝統的な「あん摩・鍼・灸」(三療)関連従事者が他を圧倒している。その三療にしても、晴眼者の増加などにより、年々厳しくなっている。一方、三療以外でも、種々の職域開発に取り組まれた歴史があるが、画期的な成果は少ない。しかし、近年、ITの進展により、視覚障害者の職域にも広がりがみられ、中でも、中途視覚障害者の就労継続、再就職では、事務的職域に広がりをみせている。これは、視覚障害者を対象とする職業リハビリテーション施設の献身的な努力があったからこそである。
 視覚障害となり、いったん退職すると、再就職は容易ではない。ましてや、それまで培った経験や知識を生かせば職域はゼロではないことを考えると、失業の果ては福祉でというのは、本人の意に反するだけでなく、二重三重の社会的損失である。それ故に、第一義的には、中途視覚障害者の失業を防止し、雇用継続のための支援を強化すべきである。
 近年、障害者雇用対策は、確実に進展をみせている。身体障害から知的障害、さらには精神障害へと施策の重点が拡大した。ハード、ソフト面でも様々な支援ツールが開発された。事業主の理解も広がり、就職状況も伸びている。しかし、それらの前進面があるにもかかわらず、視覚障害者はその恩恵に浴することもなく、制度・政策面でも、取り残されている感が否めない。
 中途視覚障害者の立場からは、視覚障害者の雇用対策として、今こそ中途視覚障害者の雇用継続を訴えたい。中途視覚障害者の雇用継続が広がることは、視覚障害者の雇用全体を引き上げることにも繋がる。そのためにクリアしなければならない課題も多く、例えば、在職中に支援が開始され、事業主の理解と協力が不可欠となる。また、ロービジョンケアの必要性、相談窓口としてのハローワークの役割の重要性、視覚障害者に特化した支援など、制度の充実が求められる。
 タートルの会は、現役で働く視覚障害者を対象に就労アンケートを実施し、『視覚障害者の就労手引書=レインボー』としてまとめるとともに、雇用継続のための提言を行い、今後の課題を明らかにした。そして、それらの提言に基づいて、関係行政、関係団体と懇談し、雇用継続への理解を深める活動に取り組んでいる。
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© 2006 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
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