日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
セッションID: SI-3
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シンポジウム I
今、視覚障害者の就労の課題は何か? 現状認識と今後
*津田 諭
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抄録
【現状】
 一般就労の分野では長年にわたり取り組みが続けられてきたが、問題解決の手がかりは見えてきていない。一方で自立支援法に変わり、福祉施設の運営は極めて厳しい事態を迎えているが、同法ではまた、利用者を就労へ移行させることも唱えられている。視覚障害を専門とする福祉施設では、今後、就労に向けたサービスが重要な柱になると思われるが、貧弱なサービスしか提供できていない現状では、視覚障害者がサービスを選択する余地は少ない。
 視覚障害者の復職や新規就労に向けて現状で提供できるサービスは、歩行など生活基礎力をつける訓練、パソコンの基本的スキルを高める訓練、そして求職活動の支援などである。企業の人員削減、雇用情勢の悪化は障害者雇用の枠組みを変化させ、これまでの電話交換手やプログラマーのケースのように、この技術を身に付けたら企業が雇用するというような技術訓練を提供することが困難になってきているように思われる。パソコンの基本的スキルを提供するといっても、実際に仕事でExcelを活用するスキルや、就労の現場でグループウェアを使いこなすサービスが充分に提供されているかというとそうではないし、そもそも仕事をする上での基礎力であるパソコンのスキルの獲得に、電話交換技術がそうだったような就労に直接結びつくといった問題解決の枠組みを求めるのは筋違いかもしれない。
【結論】
 障害特性を超えてあらゆる障害者を対象とするサービス提供を法は求めているが、視覚障害に対する基礎知識に欠けるサービスは、視覚障害者にとって魅力をもたないと思われる。視覚障害リハビリテーションのスキルの上に、今後は個人のもつ能力を引き出すような就労サービスが求められると思われるが、そのためには福祉や労働サイドからだけのアプローチだけでは限界がある。実務に役立つ高等教育を視覚障害者が受けられるような枠組みを作り、それを核に必要な生活訓練や職業スキルが獲得できるような態勢を構築することが望まれる。それが、高度産業社会の進展の中で、新たな視覚障害者の就労促進の方策を探る鍵になると思われる。
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© 2006 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
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