抄録
ロービジョン者の歩行訓練には視機能の状態を知ることがとても重要である。しかしながらその重要な視機能情報を入手することにはしばしば困難を伴う。
視機能の代表的な測度として、視力、視野、コントラスト感度が挙げられる。先行研究から「それぞれの測度が歩行パフォーマンスに与える影響は単独では視力との相関は低く、視野、コントラスト感度との相関が高い」ことが報告されている。実際、このことはシミュレーション体験や訓練の場面でも容易に体感することができる。すなわち、ロービジョン者の歩行においては特に視野とコントラスト感度の情報が重要であると言える。
この重要な測度のうち、視野の情報は医療機関に問い合わせてもらうなどして入手の可能性があるが、コントラスト感度ついては医療機関においてもあまり測定されることは無いのではないだろうか?
歩行における大きな課題として、障害物の発見、段差の発見などが挙げられるが、そのうち段差、特に一段の下り段差の発見にはコントラスト感度が大きく効いてくる。同じ段差でも階段は近づくと階段部分の大きさが変わってくるという視覚情報の総合判断や、足音や反響音などの聴覚情報が発見のてがかりとなってくるが、一段の下り段差にはそれがないので純粋に視機能に依存してしまい、近づいてもそれとわからないことが多い。もしこの段差を発見できる視機能であれば白杖を持つ場合でもその使い方は大きく変わってくる。
そこで、大きな歩行課題である段差発見、特に一段の下り段差に注目して、この段差が発見できるコントラスト感度に関連する視機能を大まかにでも判断できるチャートの作成を試みた。