抄録
目的:「どこが、どのように見えているのかについて直感的にわかりやすい表現は見当たらない。そこで患者さんにも直感的に理解しやすいように見え方のシ ミュレートを試みる。今回は、第一段階とし て視野検査で得られた結果(一点を固視した状態での見え方)をシミュレートした。 対象・方法:対象は正常視野、半盲、求心性視野狭窄2例の4例8眼である。「視野の中心部と周辺部の感度差(視野の島)」「色彩(錐体細胞の分布)」な ど、これまでに知られている見え方の特徴を Adobe  PhotoshopCSを用いて表現した。まず、視野の見え辛さを想定した0%?100%のマップを制作する。一般のデジタルカメラで撮影された画像 に、適合する大きさのマップをレイヤーとして重ね る。このマップに合わせて画像を劣化させ、物の見え辛さをシミュレートする。更にこれを左右両眼につい て行い、2枚の画像を重ねあわせ、両眼での見え方を客観化する。
結果:黄斑部に一致する中心部の解像度は高く色彩も鮮やかであるが、周辺部では解像度が低く、グレートーンの世界となる。半盲は正常視野の半分が消えて いる状態であった。視野狭窄の2例(身障手帳 2級)は、?/4の広さによって外界の情報量に大きな差があると推察される結果であった。
考察:視覚障害者の見え方だけでなく正常の見え方を想像することは容易ではない。しかし、シミュレーション画像があると障害者自身や家族が「見え方」を 想像、理解する際の手助けになる。今回、 表現した「見え方」は「一点を固視した状態での見え方」であり、我々が通常感じている「固視点を瞬時に広範囲に 自由に動かしたときに感じている見え方」とは相違がある。今後 はさらにシミュレーションの精度を高め、より説得力のあるシミュレーションを目指したい。