抄録
障害のある人のスキーには、チェアスキーやブラインドスキーなどがあり、ルールや用具などを工夫して行いスポーツまたはレクリエーションとして親しまれている。
今回、先天的に盲ろうのある子どもA(男、14歳、スキー歴約3年、主な会話方法は触手話・指文字)のスキーの事例を通し、視覚障害者のスキーと比較し、両者の類似点と相違点について言及し、盲ろうのある人のスキーについて考察する。
Aは、3年程前から1シーズンに2〜3回スキーを行っており、平均して約4名の介助者が同行している。介助者は、スキーのレベルは習熟している者から初心者までおり、Aがスキーをする時に、Aと触手話および指文字で会話が可能な者であった。滑走時には、視覚障害者の場合、前方に音源を置いたり、後方から介助者が音声により指示を出し滑走方向を誘導するが、Aの場合、腰にハーネスを装着し、後ろの介助者がこれを左・右に引っ張ることで誘導する方法をとった。
盲ろうのある人のスキーは、視覚障害者のスキーと同様に介助者のスキー技術に依存すること、また介助者は、盲ろうの人と会話するための触手話や指文字などの方法を習得している必要があることがわかった。しかし、介助者全員が両方の技術に習熟していなくても、スキー技能に習熟している介助者と会話技能に習熟している介助者が盲ろうのある人と組むことで、このスキーの可能性は広がるかもしれない。介助者と共に楽しめるスキーは、盲ろうのある人のレクリエーションの一つとして期待でき、さらには、盲ろうのある人、および介助者がスキーのレベルを高めることで競技スキーとしても期待できるのではないか。