抄録
【目的】
超音波歩行補助器(以下補助器)は超音波の性質を利用し、視覚障害者が歩行する際の障害物探知や進行方向の発見、環境認知を援助する機器のことである。本研究では補助器の現状を明らかにし、その課題について検討する。
【方法】
現在日本で入手可能な「パームソナー」「みるぶる」「モールスソニック」「K sonar」の開発者にインタビューを行い、開発の目的を調査した。ユーザへもインタビューし日常生活においてどのように使用しているか調査した。またインタビューの結果を公開されている仕様と対照させて分析した。
【結果】
「パームソナー」「みるぶる」「モールスソニック」は障害物探知の補助器であり、白杖では探知できない上半身の障害物を発見し歩行時の安全性を向上させることを目的としている。しかしユーザは歩行時に白杖と併用するだけでなくそれ以外の場面でも使用していることが分かった。「K sonar」は環境認知を援助する機器であり、超音波で探知したも のが可聴音刺激として提示される。環境を音で楽しむことを目的とした機器であり、ユーザもそれを楽しんでいた。
【考察】
開発者が意図しない方法で補助器が使用されていた理由には、白杖との併用では両手が塞がり、心理的ストレスが増えるということも考えられるが、歩行補助器は移動時の安全性や効率性を上げるという観点以外に価値基準を持つという視点が今後重要かもしれない。