抄録
盲導犬ユーザーである方に対して、在宅で白杖歩行訓練を行った事例を紹介する。
盲導犬使用歴10年のAさんが、白杖歩行訓練を受けるきっかけとなったのは、使用している盲導犬が歩行を拒否したことであった。
Aさんが短期リハビリテーション(当協会リハ事業)に参加した際、盲導犬が歩行を拒否し、Aさんと盲導犬との歩行に危険性が見られたため、両者の再訓練の必要性を本人に伝えた。盲導犬が歩行を拒否した理由は、盲導犬だけの問題ではないと判断したためである。Aさんの再訓練は在宅で、盲導犬は訓練センターで行うこととなり、短期リハビリテーション終了後に開始した。60代という高齢で単身生活をしているAさんにとって、盲導犬と離れて生活することは大変不便なものである。しかし、これまでと同じように、両者が共同生活を行いながら再訓練することはよい結果をもたらさないとの判断から、別々に再訓練を行うこととした。
Aさんは手引き歩行と白杖歩行を通して、ボディコントロールなど基礎的能力を高める訓練を行い、盲導犬には歩行に対するマイナスイメージをプラスイメージに変える訓練を行うこととなった。
ここでは再訓練期間中のAさんへのアプローチ方法について報告し、問題点などを考察したい。