抄録
視神経疾患は小児から高齢者まで、いつ何時襲ってくるかわからず、視神経は中枢神経系である性質上、いったん罹患すれば、不可逆的障害を残す可能性が高い。しかも、視神経疾患の多くは、徐々にではなく、比較的急激に発現する。従って、必ずしも障害の理解と受け入れ時間が十分に準備されてはいない。
視神経疾患におけるロービジョンケアは、他疾患と同様、症例ごとに障害の程度や質、生活・社会環境などの条件が異なるので、あくまで個別的に対応すべきである。しかし、各症例が社会生活に戻る過程においては、共通といえる高い障壁もある。この障壁は、疾患の理解、医学的対応の限界の認識、障害の受け入れ、社会復帰という過程に、大きな影響を与えながら、どの過程においても出現してくると考えられる。
レーベル遺伝性視神経症の中学生男子と50歳台男性、両眼視神経症の20歳台女性と70歳台男性の4例の症例の臨床経過と、退院および社会復帰へのプロセスを呈示する。この中で、彼らがどのように疾患に向き合い、あるいは向き合えなかったのかを辿り、患者を取り巻く社会環境や生活環境の中で、受け入れの障壁となる、また障壁を乗り越えられる要因は何かを考える。そこには個別的部分と共通項とがあるが、共通部分としては、1)医師の誠実な診療姿勢、2)家族など周囲の理解と支援体制、3)勤務先(あるいは学校)の深い理解と対応が、非常に重要であることを述べる。