抄録
【目的】視覚障害者の道路横断時の困難の一つに横断方向への定位が挙げられる。今回、視覚障害者が縁石や点字ブロックを道路横断前の方向手がかりとしてどの様に利用しているかを明らかにする目的で調査を行った。
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方法】単独歩行している視覚障害者39名(全盲26名、弱視13名;白杖利用35名、盲導犬利用4名)を対象とした。調査では、横断歩道口アプローチ部の線状ブロック、横断歩道口の点状ブロック、横断歩道口の切り下げ縁石の3種について、方向手がかりとしての知識の有無、知識の取得方法、利用の有無と利用頻度、信頼度、利用方法等を質問した。
【結果】点字ブロックを方向手がかりとして利用できることを、線状、点状ブロックとも約9割の人が知っており、その内約3割が「体験して知った」と答えた。線、点状ブロックは共に約9割、また縁石は7割の人が利用経験を持っていた。利用頻度はどの手がかりも「よく利用する」、「時々利用する」が多数を占めた。縁石を利用する人は、それが横断方向を向いていない場合でも半数以上が使っており、その6割が「他に触覚的手がかりがない場合にやむを得ず利用する」と答えた。信頼度については、線状ブロックが点状ブロックよりも高く、縁石が最も低かった。また、各手がかりの利用経験がある人に利用方法を訊ねた結果、線状ブロックは6割が「足のみで使う」と答え、そのうち7割が突起上で足を滑らせて使う方法であった。点状ブロックは9割が「足も杖も使う」と答え、ブロックと路面との境界部で方向をとる方法が最もよく使われていた。縁石は「足のみ」または「足も杖も使う」と答えた人がともに半数弱で、段差に沿って足を滑らせる方法が最もよく使われていた。
【結論】今回の研究から、点字ブロックが触覚的手がかりとして頻繁に利用されている傾向にあることが分かった。しかし、それがない場合は縁石を利用せざるを得ないことが示された。