抄録
当養成部では、厚生労働省の委託により、「視覚障害生活訓練等指導者養成課程」という名称で指導者の養成を行っている。
視覚障害者の参加の制約を引き起こしている要因を、WHOのICF(国際生活機能分類)に基づき、環境因子、個人因子、健康状態、心身機能、活動の状況などの様々な側面から検討し、総合的な支援をおこない参加につなげることが、視覚障害生活訓練等指導者の役割であると我々は考える。支援には様々な形があるが、その支援のひとつが生活訓練であり、歩行訓練は生活訓練の一分野であると捉えている。
歩行訓練の定義は、「5つの基礎的能力(知識、感覚・知覚、運動、社会性、心理的課題)、5つの歩行能力(技術、地図的操作、環境認知、身体行動、情報の利用)、4つの条件(安全性、能率性、見た目に自然な動きや容姿の獲得、やりやすさ)のもとに歩行できるように培う訓練である」とされている。白杖操作技術は、歩行能力の技術の一部にすぎない。
白杖の持ち方、構え方、使い方といった技術については、指導書を読むだけで視覚障害者に伝えることは可能であろう。しかし、対象者にとっての適切な目標を模索し、特定の環境において、いつ、どのように、何を伝えるのかということを学ぶことは容易なことではない。実技指導や実習を通して、前述した内容を学びとってもらうことが、養成課程の根幹をなす重要な点であり、目的に応じた指導内容、対象者、歩行環境という3つの要素を瞬時に判断した上で、タイミングを逃さずに指導していくことが、視覚障害生活訓練等指導者(特に歩行訓練)の専門性である。
本発表では、当養成部が考える歩行訓練の指導における専門性について検討していきたい。また、当養成部が実施している調査に基づき、生活訓練を実施している機関等についての紹介を行う。連携の一助となれば幸いである。