抄録
成人の中途視覚障害者の就労移行支援の中核となる、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の養成(理療教育)は、いわゆる座学、実技、臨床実習の各科目から構成されており、各々における授業時、自習時、試験時での学習方略の獲得は職業的自立のための過程を円滑にする上で重要なテーマとなる。
2001年度以降継続している調査から、成人の中途視覚障害者が理療教育課程での学習を行う際、授業時、自習時、試験時といった場面に応じて、様々な学習手段(筆記具や学習補助具)の組合せによる学習方法を模索している実態が明らかとなっている。しかし、授業時、自習時に適切な筆記具を持ち得ず、録音物、音訳教材を多用した「書かずに聞く学習」を余儀なくされる方々に対して、効果的な支援は行われていないのが現状である。
また、実技科目、臨床実習は技術の習得が優先されるため、授業内容や患者に対する医療面接の記録、そして記憶の手段について、これまで積極的な検討はなされていない。
本研究では、個別対応可能な学習支援システムの提案を目標としており、障害の程度やニーズに応じた、更には様々な科目の履修に対応し得る複数の文字入力システムを開発中である。
具体的には、点字タイプライター方式、携帯電話方式、オンライン手書き入力方式の入力システムの開発を行う。これらを中核に、視覚障害の程度やニーズの把握、機器操作法の習得プログラムを組合せることにより、学習支援システムとしての体系化を目指している。