抄録
目的:「マルチメディアを活用した教育訓練支援システムの開発研究」は、国立視力障害センター5施設の比較研究を開発プロセスの一つとしている。その一環として、理療教育のゴールとも言える臨床実習において、どのようにカルテを提出するかについて明らかにした。その結果、函館視力障害センターにて全員がWordなどの電子媒体で提出できるということと、カルテを書くためにパソコンを習得するという、問題解決に向けた段階的な教育支援環境が構築されていることが確認できた(以下、「函館モデル」という)。今回、函館モデルに関して5センター比較研究と併せて報告する。
方法: 国立函館視力障害センターにて「カルテをWordで書ける」という成果に到達するまでのプロセスを調査。5センター比較研究の基礎情報である調査結果の分析。
結果:(1)函館センター以外に塩原センターにおいて、全員が電子媒体でカルテを提出できるとの回答が得られた。(2)全員がタッチタイピングを修得していると答えたセンターは、全員がWordなどの電子媒体でカルテを書けると答えた。(3)各視力障害センターにて、視力区分の状況、学習ツールの使用などに特徴がみられた。(4)目の疲労度に関わる質問項目についてセンター間の差は小さかった。
考察と結語:パソコンを学習技術再獲得の手段として定着させるためには、「タッチタイピング」の早期習得が重要課題として顕著となった。また、教育支援環境としてパソコン使用に明確なゴール目標を設定することは利用者の学習技術再獲得の意識へと導く条件であると考えられた。本研究では、5センター比較研究から重要な開発課題を発見することができた。今後、次期開発プロセスとして構想されているモデル訓練にて実証したい。