抄録
目的)白内障を始めとする中間透光体疾患の混濁などによる羞明は、短波長領域の光線が混濁により乱反射を起こすためであることが知られている。また、臨床上では中間透光体の混濁以外の疾患である網膜疾患や視神経疾患においても、羞明を訴える患者に多く出会う。網膜・視神経疾患では羞明が何故生じるのかを考えた時、太田・高橋らの「網膜・視神経疾患では、青色錐体が緑錐体や赤錐体に比べ先にダメージを受ける」という学説を踏まえ、「青錐体の機能低下により短波長領域の光量に対する飽和量の限界点が下降したことにより、羞明を感じるのではないかという仮説を考えた。飽和量の限界点が下降したために羞明が生じるとすれば、中間透光体の混濁による羞明とは感じ方が異なってくるのではないかと考え、羞明の表現を調査した。
方法)2007年1月より、東海大八王子病院眼科を受診された方及び株式会社朝倉メガネロービジョンルームを紹介された方で、視力が1.0未満となった症例で羞明を感じている方に聞き取り調査を行った。
結果)中間透光体の混濁があるグループでは「ぎらぎらする」「光線が強く感じる」と答えた方が多いのに対して、網膜疾患・視神経疾患では「白っぽく見える」と答えた方が大半を占めた。網膜・視神経疾患の方で、白内障を併発している症例においても、「白っぽく見える」ことをあげた方が大半を占めた。
考按)中間透光体疾患の羞明と、網膜・視神経疾患の羞明は分けて考える必要があると考える。