抄録
目的
視野制限下の読書における文字フォントの効果について検討する。
方法
文字フォントはMSゴシック,字間の狭いMSPゴシック,低解像度下での視認性が高いとされるイワタUDゴシックRの3種類を使用した。読材料はMNREAD-Jkチャートと同様の2~4文字平仮名単語で構成し,-0.3~1.6 logMARの範囲において0.1 log unitのステップで文字サイズを変化させた。視野条件は,制限なし,10度,5度,2.5度の4条件を,視野狭窄ゴーグルを用いて自作した。被験者は矯正視力1.0以上の15名であり,ゴーグルを装用してフォント条件別に文字サイズ別の読書速度を測定し,読書視力,最大読書速度,臨界文字サイズ,最大文字サイズを算出した。
結果
フォント条件と視野条件を要因とする2元配置の反復測定分散分析の結果,読書視力においてフォント条件の主効果が認められた。最大読書速度と最大文字サイズについては視野条件の主効果のみが統計的に有意であった。一方,臨界文字サイズについてはフォント条件と視野条件の各主効果,及び交互作用は有意に達しなかった。
結論
MSPゴシックは他のフォントに比べ字間が狭いため視野内文字数が多くなるが,視野制限下の読書における効果については本研究で証明することはできなかった。低解像度下での視認性の高いフォントは文字サイズ閾値に効果のあることが示唆されたが,視野制限による読書パフォーマンスの低下を改善する効果は認められなかった。