日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第9回日本ロービジョン学会学術総会
選択された号の論文の47件中1~47を表示しています
  • 中村 孝文, 西岡 厚美, 末光 のどか, 岸 哲志, 田内 雅規
    セッションID: OI-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)は2001年にJIS規格化されその型が現在広く普及しているが、規格化時はあらゆる使用条件下での機能保証に重点がおかれ、利用者以外への配慮には至らなかった。そこで、本研究では屋内等の平滑な床面での使用を想定したユニバーサルデザイン志向の点字ブロックを開発することを目的とした。今回、線状ブロックに関して形状・サイズと検出力や方向判別力との関係の検討を課題とした。
    【方法】被験者は視覚障害者10名とした。長さ4mの歩行路の途中に、7種の線状突起(上・底面幅各17, 27mm、突起高1~5mm(JIS))と対照(突起なし)の8種の試料を60×60cmの領域に置き(線方向は進行方向と平行又は垂直)、その上を歩行した際の、1)突起検出率、2)検出の確信度(1点ほとんどない~4点かなりある)、3)突起の方向判別率、4)判別の確信度について調べた。
    【結果】突起の検出率および確信度は突起高の増加と共に上昇した。検出率が95%に達する高さは平行2.2mm、垂直1.4mmであり、検出時の確信度が3に達する高さも同じであった。一方、線方向の判別は、正答率が95%に達する高さは平行2.6mm、垂直2mmであり、確信度が3となる高さは平行2.4mm、垂直2mmであった。以上の結果から、歩行方向に対して平行より垂直の突起配置の方が検出しやすいこと、高い確信度で正確に検出でき方向判別もつく高さは平行および垂直方向からの進入を考慮して2.6mm以上であることが分った。
    【結論】路面・床面が平滑である場合、単独歩行経験を有する視覚障害者であれば、JIS規格(高さ5mm、傾斜角45°)より突起高が低く、傾斜が緩い線状ブロックでも比較的高い確信度で検出可能であることが認められ、利用者以外に対する影響を軽減した線状ブロックの開発が可能と考えられた。
  • 森山 涼, 井上 賢治, 堂山 かさね, 間瀬 樹省, 桑波田 謙, 田中 陽介, 伊賀 公一
    セッションID: OI-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    目的: お茶の水・井上眼科クリニックは2006年1月に開院した。開院にあたり、高齢者やロービジョン者に使いやすい施設作りを目指した。今回色弱模擬フィルタを使い、カラーユニバーサルデザインからの観点から検証を行った。 方法: 色弱模擬フィルタは「バリアントールTM」(伊藤光学工業) を用いた。検証には健常ボランティア15人(一般色覚者)の協力を得て、バリアントールを使用しクリニック内の案内表示、誘導サイン、診察室や待合室等の中で色弱者にとって見分けにくい配色の検出を試みた。また、バリアントールで検出した箇所をデジタルカメラで撮影し、色覚シュミレーションソフト「UDingTM」(東洋インキ)で色変換を行い、再度検証を行った。 結果: エレベータホールでのエレベータの色名のみを用いた誘導表示や受付案内表示、黒の階段の段鼻のみが濃い赤で強調されている箇所、緑と赤で色分けされた院内地図、予約カウンターの平日・休日が黒・濃い赤のみで色分けされたカレンダーなどの問題箇所が検出できた。問題のある箇所はどれも模擬フィルタ、シュミレーションソフトの両方で検出できた。反対に色と文字の両方を用いたトイレの施錠表示、色と特徴的なピクトが組み合わされたドア及び廊下の突きだしサイン、濃い赤ではなく朱赤を用いた電光表示などは模擬フィルタ、シュミレーションソフトの両方でその見分けやすさが確認できた。 結論: カラーユニバーサルデザインの検証には、色覚シュミレーションツールが有用であり、また医療施設等の公共の場にはカラーユニバーサルデザインの導入が必要不可欠と思われた。
  • 駅に設置された実機を用いたフィールド調査
    中野 泰志, 新井 哲也
    セッションID: OI-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    目的
     我々は、ロービジョン者にエスカレーターの方向を見やすくするための汎用的で低価格な方法として、ハンドレールに貼付するバリアフリー・マーク(以下、BFマーク)を考案した(中野ら,2007)。本研究の目的は、このBFマークの有効性と課題を実機を用いてフィールドで検証することである。

    方法
     単独歩行が可能で、これまでBFマークを見た経験のないロービジョン者10名に対して、実機の設置してある駅において(1)視覚活用状況とエスカレーターの利用状況に関するインタビュー調査、(2)マークなしエスカレーター利用時の手がかりに関する調査、(3)マーク付きエスカレーター(図1)利用時の手がかりに関する調査を実施した。検証に用いたエスカレーターは合計4機で、いずれもデマケーションラインが4方向にある日立製であった。エスカレーターは2機ずつ併設されており、駅の通路とホーム間の移動に利用するものであった(2機はマークなし、2機はマーク)。研究参加者の課題は、各エスカレーターを利用し、何が手がかりになっているかプロトコル分析の手法で報告することであった。実験者は、参加者が特徴的なプロトコルを報告した距離を測定した。

    結果
     マークなしの場合、進行方向の判断には、デマケーションラインの動きを手がかりにしているというケースが多かった。マークありの場合、マークの存在に気づいた参加者と指摘されるまで気づかなかった参加者があった。マークの存在に気づいた参加者も、最初は、マークをどのように利用してよいかわからなかったが、1度、マークつきを利用すると利用方法がわかり、有効性を主張するようになった。主な課題として、マークの面積を広く、間隔を狭くし、メッセージを少なくすることが指摘された。

    結論
     実機を用いたフィールド調査の結果、BFマークが有効であることがわかった。ただし、マークの大きさや間隔については、検討の余地があることが明らかになった。
  • 井上 賢治, 森 美紀, 志村 和可, 千葉 マリ, 桑波田 謙, 間瀬 樹省
    セッションID: OI-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ロービジョン者ならびに高齢者が、駅からお茶の水・井上眼科クリニックまでのアクセス環境において、不便に感じていることはないかを調査した。
    【方法】JRお茶の水駅あるいは東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅を通院のために利用しているロービジョン者あるいは高齢者20名(男性9名、女性11名)を対象とした。「駅から当クリニックに来るまでに困っていること」を駅構内、横断歩道、ビル入り口までの通路・階段、ビル入り口からのエレベーターに分けて、各地点の不便を調査した。
    【結果】JRお茶の水駅を利用している患者10名(男性5名、女性5名)は、平均年齢74.0±7.4歳、疾患は緑内障および白内障7名、糖尿病性網膜症 2名、黄斑上膜 1名であった。駅からクリニックまでに困っている場所は、駅構内80%、通路・階段50%、横断歩道30%、ビル入り口からのエレベーター 10%で、駅構内が一番多く、特にホーム・階段が狭い、案内が見づらいなどの声が多かった。東京メトロ新御茶ノ水駅を利用している患者10名(男性4名、女性6名)は、平均年齢70.8±5.4歳、疾患は緑内障8名、糖尿病性網膜症 1名、ぶどう膜炎1名であった。駅からクリニックまでに困っている場所は、駅構内70%、通路・階段 50%、ビル入り口からのエレベーター 30%で、駅構内が一番多く、特に千代田線のお茶の水口は駅ホームから改札までが長いエスカレーターのため不便と言う声が多かった。
    【結論】JR、東京メトロ利用者に共通していたのは、駅構内で困っていることが多かった。特に駅ホームから改札へのアクセスが階段や長いエスカレーターのみで利用しづらく、案内表示が見づらいと感じていた。患者さんのことを考えると、クリニック内にとどまらず、まち全体のユニバーサルデザイン化を検討すべきである。
  • 桑波田 謙, 間瀬 樹省, 原 利明, 千葉 マリ, 南雲 幹, 石井 祐子, 大石 奈々子, 井上 賢治
    セッションID: OI-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】白杖を利用する視覚障害者の誘導について、屋外では点字ブロックの整備が進んでいるが、公共施設や病院等の屋内では点字ブロックは限定的な整備に留まっている。白杖利用者がより自由に行動でき、同時に高齢者や車椅子利用者等にとっても負担の掛からない新たな仕組みを目指して、床の素材差による誘導の有効性を調査した。
    【方法】タイルカーペット敷きの空間に点字ブロックとホモジニアスビニル床タイル(以下床タイルとする)による2通りの経路(距離6m、幅50cmのL字型誘導ライン)を設置した。被験者(全て晴眼者)は全員アイマスクを装着し、オリエンテーションの後白杖を使ってそれぞれの経路をエンド部まで辿り、辿りつけるかの成否、掛かった時間、エラーの場所と回数を計測した。学習効果による優位性を考慮し、調査の先行は点字ブロックと床タイルを交互に変えて行った。調査後それぞれの印象についてSD法、リカート法による評価を行った。被験者は52名(男性26名、女性26名)、平均年齢は39.4歳±12.6歳であった。
    【結果】エンド部まで辿りつけなかった人数は点字ブロック2名、床タイル4名で、共に高い誘導効果が示された。先行した群での辿りつけなかった人数は、点字ブロック1名に対し床タイル4名で同等だった。到達時間は点字ブロック54秒(±29秒)、床タイル50秒(±24秒)で双方に有意差は無かった。印象についての評価では、SD法、リカート法共に点字ブロックの方が評価が高かった。
    【結論】健常者を対象にした今回の比較調査では、点字ブロックは誘導効果の高いものであるが、その代替案として屋内空間においてはカーペットにタイルを埋め込む等、床の素材差による誘導も可能であることが示唆された。 しかし、本調査は白杖を使用しての歩行に不慣れな健常者にアイマスクを装着してもらって、実験的に作った空間を歩くという調査の為、実証には、日常的に白杖を使用者している人を対象とした実際的な調査が必要だと思われる。
  • 柳原 崇男, 北川 博巳, 大森 清博, 北山 一郎, 松本 泰幸
    セッションID: OI-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究はロービジョン者の夜間歩行を支援するために、夜間の低い照度下でもロービジョン者が歩きやすくなる方法として、電柱等に取り付けたLED照射装置から光を照射し、道路面に連続したマークを用いた誘導方法を提案する。そこで平成19年に県道明石宝塚線歩道にて、LED照明を用いた誘導システムの実証実験を実施した。本研究の目的はこのLED照明を用いた夜間歩行支援システムの効果や課題を明らかにすることである。 【方法】ロービジョン者21名に対し、上記で提案しているLEDを用いた誘導システム(以下:LED誘導マーク)に加え、市販の地面に埋め込むタイプのLEDも併設し、歩行実験を行った。実験方法はそれぞれの歩行速度、有効性等に関するアンケート調査を実施した。また、LED誘導マーク、埋め込み型LEDの有効性を把握するために、誘導システムが設置されていない区間(以下:LEDなし)も歩行してもらった。 【結果】LED誘導マーク、埋め込み型LED、LEDなし区間20mの歩行時間と偏軌距離を比較した。その結果、歩行時間に関しては、埋め込み型LEDが一番早くなっていたが、統計的な有意差はなかった。偏軌距離に関しては、LEDなし(42.60cm)に比べて、LED誘導マーク(10.75cm)、埋め込み型LED(12.5cm)を用いることによって、より直線的に歩いていることがわかった。また、アンケート調査より、LED誘導マーク等のシステムのない場合と比べて、「歩きやすさ」だけでなく、「心理的負担の軽減」にも効果があることがわかった。 【結論】歩行実験から歩行速度にはあまり大きな変化はないが、より直線的に歩行できていることがわかった。このことよりも、誘導性だけでなく、より安全な歩行を支援するという効果が見られた。意識調査より、LED誘導マークの設置間隔5mよりも埋め込み型LEDの設置間隔2mの方が高評価であるが、歩行速度、偏軌距離ではほぼ同程度の結果となっている。このことよりも、5m程度の間隔でも誘導性能は高いことがわかる。
  • 田淵 昭雄, 藤原 篤之
    セッションID: OII-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]全国の大学医学部眼科80施設を対象とし,アンケートによるロービジョン(LV)クリニックの開設の有無,LVケアの内容とその担当者,院内でのLVケア勉強会・講習会の開催の有無,院内スタッフへのLVケア教育・研修の必要性,医師を対象としたLV研修受講希望の有無について調査した。 [方法]アンケート調査期間は2007年7月1日から8月31日までの2 か月間で,無記名で回答を求めた。 [結果] _丸1_ 回収率は78.8 % (80施設のうち63施設) であった。_丸2_ LVクリニック開設の有無は,開設が37施設(58.7 %)で,未開設が26施設(41.3 %)であった。未開設施設のうち将来開設予定が2施設(7.7 %)であった。_丸3_ LVケア担当職種は,視能訓練士(32施設,86.5 %),眼科医(29施設,78.4 %)が主体で,その他,歩行訓練士,MSW や看護師があった。 _丸4_ LVケアの内容および担当者としては、「光学的補助具の選定と訓練」が全ての施設で行われていた(37施設,100 %)。担当者は,視能訓練士が31施設(83.8 %),眼科医が27施設(73.0 %)であった。「情報提供」が34施設(91.9 %)で,視能訓練士(82.4 %),眼科医(70.6 %)が主体に担当しており、MSW(2.9 %)が携わっている施設もあった。_丸5_ 院内でのLVケア勉強会・講習会は,開設施設の18施設(48.6 %)に実績があり,未開設施設での開催は5施設(19.2 %)であった。_丸6_ 院内スタッフへのLVケア教育・研修については,開設施設の30施設(81.1 %),未開設の施設でも22施設(84.6 %)が必要と回答した。_丸7_ 医師を対象としたLVケア研修受講希望については,開設施設のうち24施設(64.9 %),未開設の施設で14施設(53.8 %)に希望があった。 [考按および結論] 2001年の同様アンケート調査ではLVクリニック開設施設が49.0%であったが、本年は増加(57.7% )していた。しかし、まだ十分とはいえない。大学病院においては担当者の主体が眼科医や視能訓練士であるが、その他の職種も担当すべきである。院内スタッフへのLVケア教育・研修や医師を対象としたLVケア研修受講希望が高いことから、今後日本ロービジョン学会がこれらの要望に対して積極的な行動をすべきであると思われる。
  • 川端 秀仁, 程田 久美子, 金子 幸代, 山本 茜, 森 栄子, 杉山 利恵子, 平川 一夫
    セッションID: OII-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 千葉盲学校在籍者の視覚機能を適切に評価し盲学校、家庭での教育・支援プログラムをより有効なものとする目的で始めた千葉盲学校ロービジョンケアの概要について報告する。 【方法】 盲学校ロービジョンケア担当者が対象者・希望者を選定。当日はロービジョン担当者、担任、保護者(希望による)が同席、眼科より医師、看護師、視能訓練士の3名で、視力、視野、眼球運動などの評価を行った。前準備としてH17年1月より盲学校職員研修を実施、担当教師による児童、生徒の日常評価表およびロービジョンケア視機能評価表を作成した。 【結果】 実施回数はH17年度6回58名、H18年度5回30名、H19年度6回22名。初年度は全学部、学科を対象に幅広く実施。H18年、H19年は低視力、視野狭窄、羞明などに主訴を持つものに絞り実施した。幼稚部、重複障害者などでは、光覚、色覚の有無確認、眼球運動など基本視機能の確認の他、微細神経兆候の確認など発達に関係する部分の検査が多く、小学部浩学年が進むにつれ、視力、視野を評価し墨字教育、点字教育の方向性や読書、書字ポイントの確認を行う、羞明を遮光レンズ、照明の工夫で改善するなどいわゆるロービジョンに関するものが中心であった。担任、保護者からは、ともに疾患に起因する視機能障害の状態および日常の能力低下との関連についての疑問点や質問が多く出された。 【結論】 盲学校など教育機関では 能力低下(disability) および日常生活状のhandicapに対する支援が行われる。 しかし医療機関との連携が十分とれていない為に疾患に対する理解不足から適切な支援がとれていない場合も多い。 医療機関では 疾患(disorder)、機能障害(imparement)に対する診断、治療を行うだけでなく、予想される 能力低下(disability)について、教育、療育機関へアドバイスする必要がある。
  • 柳澤 美衣子, 加藤 聡, 国松 志保, 田村 めぐみ, 北澤 万里子, 落合 眞紀子, 庄司 信行
    セッションID: OII-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    目的:2種類のQOL評価表を用いてロービジョン(LV)患者の視力とQOL関連を検討した。 対象および方法:05年4月から08年3月に東大病院眼科LV外来を受診した129例中、VFQ-25(コンポ7)とSumiの問診票を同日中に施行した103例を対象とした(平均年齢63.3±14.6歳、男性56名、女性47名)。視力良好眼の平均小数視力は0.13±0.29(0.01~1.2)であった。原因疾患の内訳は緑内障45例、黄斑変性20例 網膜色素変性症10例、その他28例であった。対象患者に2種類の評価表を用い、全体のスコアもしくは不自由度(総合スコア、総合不自由度とする)を算出し、視力良好眼の視力との相関を総合および項目別に検討した。また視力良好眼の小数視力0.1を境に2群に分け、差異を不自由度、スコアそれぞれで検討した(0.1未満=41例、0.1以上=61例)。 結果:視力良好眼の視力は総合スコア、総合不自由度ともに相関があった(r=-0.50,P<.001、r=0.48,P<.001)。項目別にみるとコンポ7では、すべての項目で相関が得られた(r=-0.27~-0.46, すべてP<.05)。一方Sumiの問診票では、「歩行」と「食事」の項目で相関がなかった(P=.05)。また小数視力0.1で分けた検討では、総合スコア、不自由度ともに、0.1未満と0.1以上の群で有意差があった(P<.001、Mann-Whitney's U test)。項目別では、コンポ7では「近見視力による行動」のみで2群間のスコアで有意差がなく(P=0.1)、Sumiの問診票では、「歩行」「食事」において2群間の不自由度に有意差がなかった(P=.07,P=.06)。 結論:視力良好眼の視力はロービジョン患者のQOLを反映しており、小数視力0.1以上と未満では、多くの項目でQOLに有意差があることが示唆された。
  • 大石 恵理子, 藤江 和貴, 若倉 雅登
    セッションID: OII-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】眼瞼痙攣(眼瞼ジストニア)は、自由な開瞼が出来なくなる疾患で、比較的軽症例でも日常生活、精神活動に大きな支障を来たす疾患である。ボツリヌス毒素治療は70~80%の人で生活の質を改善させるが、それでも社会生活を問題なく送れる人は少ない。しかも、本症は視覚障害としても認められないし、高次機能障害としても認識されることもまずない。 そうした中、本症のため映像制作の職務が不能となり退職せざるを得なくなった48歳男性が障害年金を申請したところ、最終的に厚生年金3級に相当するとの決定がおりた。この件は今後の参考になるので報告する。 【症例】48歳男性。平成16年1月よりまぶしくなり、4月に某院神経内科で眼瞼痙攣と診断された。平成15年よりうつ病と診断され抗精神薬を内服していた。必要な時、開瞼できず、仕事ができないほどひどくなったとのことで、平成16年10月4日来院した。平成16年10月6日両側にBotox®治療をしても効果は見られず、2度目には若干効果はあった。平成19年6月7日厚生年金を希望し、視覚障害の書類を持参した。しかし病院としては視覚障害としてはあてはまらず、その旨話したが、事実上の失明状態なので書いてほしいとのことであった。 【経過】平成19年6月に至り視覚障害には当てはまらないが、事実上失明に近い状態であることを「備考」欄に「眼に出現している障害であるが、機能的失明の原因は中枢神経系の障害である」と記載し申請した。 【結果】3ヶ月後「障害年金に当てはまらないので却下する」の回答があった。不服があれば文書か口頭で審査請求できるとのことであり、申し立てをした。最終的には以前の申請棄却を取り消すとの通知があり、3級が認められた。 【結論】眼瞼痙攣においても重症者では障害者年金を受給できる可能性がある。
  • 宍田 克己, 田上 美和, 三浦 真二, 陶山 洋志, 藤原 りつ子
    セッションID: PI-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 当院では平成13年よりロービジョンケアを行っているが、眼科で行う一般的なロービジョンケアだけでは情報提供や心理的なサポートは不十分になりやすい。今回ロービジョン外来の補助的役割を果たすことを目的とした院内サロンを病院が主体となって開催し、参加者へのアンケートによる質問を行うことにより院内サロンの意義と視覚障害者のニーズについて検討した。 【方法】 2008年2月に開催、当日参加者は29名で平均年齢は63.7±13.9才であった。サロンではロービジョンケアに関する講演と医療関係者を交えた5~6人のグループに分かれてフリートークが行われた。またサロン前後にミニコンサートや機器展示も併せて催した。アンケートによりサロンについての印象を5段階評価と要望欄への記載で評価した。 【結果】 アンケート結果では「視覚障害者同士で健常者に理解出来ない日常生活の苦労が話せた」、「医療情報の不足を補えた」などの意見が多く、「良かった」「やや良かった」と答えた人は講演内容に対して78%、フリートークでは90%、サロン全体としては90%であった。また全員が次回開催時に参加を希望した。 【結論】 一般的なロービジョンケアは非常に重要であるが、視覚障害者にとってそれだけでは足りない情報が多いことがわかった。院内サロンに参加し医療スタッフや他の視覚障害者と話をすることで、視覚障害によるQOLの低下を軽減できる可能性がある。またフリートークに医療関係者が参加することにより視覚障害者に正しい情報を提供でき、ロービジョンケアをより効果的に行うことが期待できる。
  • 「なぜ眼科でロービジョンケアができないか?」の問いに対するKVSの回答
    堀 康次郎, 岡田 弥, 岡本 昇, 嶋田 律子, 下神 里奈, 田中 桂子, 寺田 真也, 原田 敦史, 柳原 崇男, 山口 成志
    セッションID: PI-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 昨年、視覚障害者の自立に関し、眼科でのロービジョンケアの重要性を明記した国の通知が発布された。しかし、遅々として普及していないのが現状であり、その主因は具体的な方法がわからないとの調査結果がある。眼科従事者は、知識を得る場は多く有するが、見えない・見えにくい人とその家族(以下、当事者たち)を肌で感じる(感性)の場が少ないのではないか? 本報告では、その具体的な方法として、サロンのような感性に訴えかける場が重要であると考え、その実践結果を報告する。 <方法> 場所や参加者構成に多様性をもたせたサロン形式の交流の場を多数、しかも定期的に提供する。具体的には、市民センター、病院、図書館等で、「サロン」(月1回)、「病院内サロン」(市立池田病院/2ヶ月に1回)、「講演会&交流会」(年1回)などを実施する。構成は、当事者たち、眼科・リハビリ従事者および支援団体など、いろいろな分野の人が一堂に会するよう配する。 <結果> サロンにより、参加者がお互いの情報を交換し、喜びや悩みを共有することができた。「患者さんに声をかけることができるようになりました。」「多くの方が見えない、見えにくい方々のためのサポートをしていることがわかりました。」等の眼科従事者の感想に代表されるように、いかに早く受容期を迎えてもらい、リハビリにバトンタッチするかという診療最前線でのロービジョンケアのあり方を、眼科・リハビリ従事者、当事者たちがお互いに了解し、共有したとする結果を得た。 <結論> 学術的に体系づけられたケアを理解することと、当事者たちとの「生の声」で感じ取ることとは、ロービジョンケア推進の両輪である。サロンで、お互いに勉強し、肌で感じることにより、個々人にとって異なるQOLを知り、より具体的なケアの方法がイメージしやすくなる。今後、医療をはじめ、いろいろな分野と連携を進め、さまざまな場所で参加しやすいサロンを展開することが必要である。
  • 伊藤 由香, 大房 朱美, 島宗 智恵, 長谷川 明菜, 小島 なぎさ, 若林 美宏, 東 真司
    セッションID: PI-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>  東京医科大学八王子医療センターにおけるロービジョンケアへの初期の取り組みについてまとめたので報告する。 <方法・対象>  対象は2005年11月~2008年5月までにロービジョンケアを施行した69例(男性38例、女性31例、平均年齢69.7歳)に対し、視力・視野検査・VFQ-25によるアンケートを行い、患者の要望に対し補助具を選定・トライした。 <結果>  患者の要望は、「文字の読み書きがしたい」が58例(84%)と多く、次いで「羞明をなくしたい」が19例(27%)だった。(複数回答あり)  補助具を購入したものは46例(66%)であり、その内訳は拡大読書器16例(23%)、遮光眼鏡16例(23%)、弱視眼鏡11例(15%)であった。(複数購入あり) <結論>  ロービジョンケアを行うことにより、患者の現状を把握し、要望に合わせた補助具の選定を行うことができた。
  • 小林 薫, 荻嶋 優, 宮田 真由美, 大音 清香, 宮永 嘉隆
    セッションID: PI-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】  当院は網膜、硝子体疾患の患者が多く、それに伴いロービジョン患者も多く来院する。平成16年よりロービジョンケアとして補装具選定を行っており、徐々にその件数は増加してきている。これまでは患者からの要望で検査を行っていたが、今回ロービジョン患者を対象にアンケート調査を行うことにより、さらに積極的に多くの患者にケアを提供できる環境を整えることを目的とした。  また、今回の調査に伴い、視能訓練士の意識の変化にも着目することを目的とした。 【方法】  平成20年1月から6月までに来院した当院外来患者のうち、良い方の矯正視力が0.5未満である患者に、アンケートを実施。外出、羞明、読み書きなどの日常生活について聞き取り、補装具が有効と思われる患者を抽出し、情報提供及び検査を行なった。  さらに調査前後で視能訓練士にもアンケート調査を実施した。 【結果】  対象患者430名にアンケートを実施。アンケート実施前は相談件数33件、処方枚数41枚であったのに対し、実施後は相談件数76件、処方枚数85枚となり、相談件数、処方数共に増加した。  視能訓練士へのアンケート調査では、ロービジョンに対する意識が個々で高まり、積極的な関わりが持てるようになった、身体障害者手帳や補装具交付についての理解が深まったとの声が多かった。 【結論】  このことから定期的な診察を受けている患者の中にも補装具を必要としている者がいたことがわかった。 具体的に患者の日常生活について聞き取りを行ったことで、患者からの希望や提案などを踏まえ、その環境に応じた補装具選定が行えるようになった。そして患者の現状の受け止め方や医師の考えなどを考慮しつつ、より日常に沿った補装具選定が必要と考えられた。
  • 拡大教材文字サイズの選択と視距離の調節
    水谷 みどり, 伊藤 雅貴, 小田 浩一
    セッションID: PI-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ロービジョンの児童の視覚を活用する意欲を高め、学習効率を上げるためには、見えにくさに応じた拡大教材を提供することが前提となる。また、適した文字サイズ選択のためには、客観的で正確な評価が望ましい。ここでは、MNREAD-JKを用いた読書行動の評価をもとに文字サイズを選択し、さらに、視距離の調節について検討した事例を報告する。 【対象と方法】地域の小学校1年生に在籍し、盲学校教育相談を利用する男児。第一次硝子体過形成違残、視力は両眼で0.1。日常、教材の文字サイズにかかわらず接近視(7cm以下)をする。異なる文字サイズを提示し比較すると、常により大きなサイズを好む。近見で視力を測定した後、MNREAD-JKで読書について評価し、臨界文字サイズを推定した。(結果を本人と保護者へフィードバックした)。臨界文字サイズ付近の大きさで学習に用いる読み教材を作り、文字サイズが適しているかどうかを比較検討した。併せて、視距離の調節行動について、文字サイズと関係が見られるかを検討した。 【結果】視力測定や読書評価の検査から、これまでの教材の文字サイズでは、接近視をしても拡大の効果は充分に得られていないことが分かった。MNREAD-JKの結果、臨界文字サイズは1.3logMAR。30cm視力0.1の値から想定される範囲内であった。臨界文字サイズ付近になるように視距離15cmでの読み教材を提示したところ、視距離をとって読ませることができた。本人の抵抗感はなく、「目を近づけた方が好きだけど、目を離すとちょうどいいところ(距離)がある。目(視野)にたくさん(文字が)入る。」との内観を得た。 【考察】MNREAD-JKによる読書評価は文字サイズを選択するために有効であり、その後の実際の教材作りを容易にした。読みやすい教材の文字サイズについてフィードバックすることは、小1という低年齢での効果的であり、自らのロービジョンに向き合うきっかけとなった。
  • 50歳代男性(中心暗点)がどのように仕事をしているか
    山田 千佳子, 堀 康次郎, 高橋 政代
    セッションID: PI-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 視覚障害者の就労や復職を支援するためには、「目が見えにくくても仕事ができる」理解を促すための情報提供が必要であり、具体的な仕事の仕方と職場環境の事例紹介は有用である。本報告では復職し安定就労を継続している男性が「何を使ってどのように仕事をしているか」という具体例を報告する。 <方法> 症例は50歳代男性。ブドウ膜炎で中心暗点(約30度)があり矯正視力は右(0.06)左(0.08)。視力低下後休職したが、日本ライトハウスで7ヶ月の訓練・教育を受け復職。1.パソコンの音声・拡大ソフト、2.拡大読書器・ルーペ、3.携帯電話らくらくホン、4.ICレコーダー、5.プレクストーク、6.職場の理解・協力・改善、7.助成金制度の活用により職務が行えるかを検討した。 <結果> 1.自他の予定を確認、当日・週単位の仕事を把握。社内LANやイントラネットで連絡や事務処理。会議は資料の事前確認、発表時はパワーポイントで資料作成。2.パソコンでは読めない雑誌・新聞、写真、グラフ、絵などを見る。直筆で手紙を書く。3.電話・メール、読書器、スケジューラーとして活用。4.メモ代わり。パソコンの読書ソフトで変換したデータを転送、通勤時などに読書。5.音訳図書CDを聞く。6.会議での「こそあど」言葉禁止。配布資料などポイントに付箋付け、音声対応の電話機設置、食堂の調味料のラベルの色変えなどの協力を得た。7.設備・備品を購入。以上により休職前と比べ職務内容は変化したが安定就労を継続中。 <考察> 視覚障害者の就労には、「できること」と「できないこと」を判断し、自分自身の能力を最大限に活かすことが重要であり、周囲に理解と必要な手助けを求め、工夫や制度の活用など環境を変える対応能力が必要である。また、ロービジョンケアにより「目が見えにくくても、見えなくても仕事ができる」という情報が適宜提供され、早い時期の訓練・教育の開始が復職・就労継続に有効であることが実証された。
  • 労働災害にて両眼失明した事例のその後
    高橋 広, 久保 恵子, 志鶴 紀子, 斎藤 良子, 山田 信也, 工藤 正一
    セッションID: PI-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】視覚障害者の就労は非常に厳しく,雇用継続に力を注ぐべきである.そこで第6回学術集会にて,労働災害で両眼眼球破裂した事例の障害受容過程と職場復帰の取り組みを紹介し, 眼科医療の支援,ロービジョンケアが重要で,職場復帰のためには早期に支援団体や労働関係機関と連携することが鍵と結論した.今回は,この事例のその後の経過と視覚障害者の職業リハビリテーションの課題について報告する.【事例】30歳,男性に2004年5月,鉄パイプが落下し,頭蓋骨骨折,脳挫傷を負い,両眼も失明した.7月視覚を含めたリハビリテーションのため転院してきたが, 全てが全面介助であった.理学・作業・言語聴覚療法を行い,視覚障害者の日常生活動作も訓練した.そして,NPO法人タートルや障害者職業センターなど労働関係機関とも連携し,視覚障害者も生活や仕事ができることを実感し,障害受容を図り,会社にも支援を要請した. 2005年3月退院し,歩行やコンピュータの基礎訓練を更生施設で行い,翌年4月から日本ライトハウスにて本格的な職業リハビリテーションを開始した.そこでは,視覚障害者用音声ソフト(JAWS)の訓練を徹底的に受け,また彼のひたむきな姿に会社経営陣も直に接した.そして,会社のINTRANETをも彼が使えるようにし,2007年4月職場に復帰した.【結果および結論】障害者の職場復帰には,本人の復帰に対する強い意思と事業主を含む周囲の理解やチームによる連携と協力は欠かせない.しかし彼らが仕事をする上での技術,特にコンピュータ技術を教えることができる者は全国でも数名で,その指導員の増加と職場定着のためのジョブコーチの育成が急務である.
  • 小田 浩一, 小林 幸一郎, 伊原 久美子
    セッションID: PI-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】フリークライミングに参加した人には、体を使って運動ができたということ以上に積極的な効果がある可能性がある。自分に対する自信がつき、リハビリや学習に対して前向きになるという可能性である。自己効力感尺度を使って測定を試みたので報告する。
    【対象と方法】被験者はモンキーマジックのフリークライミングスクールに2008年1月から5月に参加したのべ41ケース。視覚障害の程度も、年齢も、性別もさまざまであった。被験者は、フリークライミングに参加する前と参加した後に、16項目からなる自己効力感尺度(飯田・関根,1992)に回答した。逆転項目を反転させたのち、フリークライミングの前後で効力感が変化するかを、41ケース全体で、次に個人ごとに対応のあるt検定を用い、5%の有意水準で検討した。
    【結果】41ケース全体では、フリークライミングの前後で自己効力感に統計的に有意な違いはみられなかった。個人ごとの比較では、違いがが見られたのは5名であった。うち1名は自己効力感が下がっていたが、他の4名は上昇した。自己効力感尺度の3つの下位尺度--失敗を怖れないこと、行動の積極性、能力の社会的位置づけ--の中では、行動の積極性が変化している傾向が見られた。
    【考察】16項目の簡単な質問紙をフリークライミングの前後で実施して比較するだけで、自己効力感の変化を捉えられた。ただ、有意な差が得られたのは全体の10%程度であり、主に行動の積極性に影響することが分かった。自己効力感は、さまざまなことに積極的に参加する態度と関係があり、参加者がフリークライミング以外の活動に前向きになっていく過程を促進する原動力となりうる。測定された自己効力感の変化が実際に他の活動にも影響するかどうかや、複数回のフリークラミング体験がこれを増強するか、影響は持続するかなどの長期的効果の検討が、今後必要である。
  • 香川 スミ子
    セッションID: PI-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    目的:視覚障害乳幼児の発達に関する養育者のニーズには、「這わない」「歩かない」等の下肢運動の発達に対する原因や、対応方法、獲得時期の予測などがある。 視覚障害は探索行動を遅らせ、下肢運動の発達の機会を減少させること、また脳性麻痺などの神経性運動障害や知的障害を重複する場合、下肢運動発達が遅れることが指摘されている。本研究では、下肢運動の発達は姿勢反射との相関が高いという従来の研究成果を前提とし、養育者の下肢運動発達に関する個別のニーズに対応するために、視覚障害乳幼児の移動に関する下肢運動発達の要件を明らかにすることを目的とする。 方法:対象児は独歩後1か月以内までの移動行動を獲得した視覚障害乳幼児74名であり、縦断的データ数は200である(表1)。対象児の移動運動を規定する姿勢反射(表2)、知的発達段階(表3)との関連を整理した。 結果:「寝返り」は、空間での頸の立ち直り反応と知的発達段階3が必要条件であり、「腹這い」は、前方パラシュート反応、知的発達段階4が、「四つ這い」は、加えて下方パラシュート反応の獲得が必要であった。さらに「支え歩き」は側方の立位平衡反応及び知的発達段階が5であることが要件となり、「独歩」は、加えて後方立位平衡反応が必要条件となっていた。以上のように、各運動の獲得要件として姿勢反射の成熟や知的発達段階が関与しており、そのレベルが高くなるにしたがって高レベルの移動行動が獲得していくことが明らかになった。したがって、当該児の移動行動が発達に見合った状態にあるのか、あるいはどのような条件が整備されれば移動行動が獲得できるか等について、個々の子どものニーズに対応した情報の提供が可能になると考える。
  • 三輪  まり枝, 山田  明子, 関口  愛, 中西  勉, 石田  みさ子, 仲泊  聡
    セッションID: PI-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】  今回、当院で過去8年間に羞明の予防を目的として処方した光吸収フィルタのうち、その処方数から、好まれた光吸収フィルタの分光透過率にどのような特徴があるか検討した。 【方法】  2000年から2007年までに当院のロービジョンクリニックにおいて、光吸収フィルタが処方された264症例を対象に、その疾患と最終的に処方された光吸収フィルタの種類および分光透過率の特徴について調査した。 【結果】 光吸収フィルタが処方された症例の疾患は、網膜色素変性症(182名)、緑内障(22名)、糖尿病網膜症(12名)、視神経萎縮(9名)、網脈絡膜萎縮(8名)等であった。 処方された光吸収フィルタの総数は、300個であった。 当院外来でトライアル可能な35種類の光吸収フィルタのうち、処方数上位5位のものは、HOYA社レチネックスソフトDG(緑色)40個、次いでHOYA社レチネックスYB(茶色)27個、サンダイアル社スリップイン茶21個、東海光学社CCP-400FL(薄茶)20個、HOYA社レチネックスソフトYG(薄緑)と東海光学社CCP-400NA(薄茶)が各々17個の順であった。 また、光吸収フィルタの処方数上位、下位共に8位までの分光透過率を調査した結果、480nm~550nmの光線を優位に透過する遮光眼鏡が処方されることが比較的多く、反対に420nm~480nmや、580nm以降の光線を優位に透過する光吸収フィルタの処方数は比較的少ないことがわかった。 【結論】 当院で処方された光吸収フィルタの分光特性を調べた結果、480nm~550nmを優位に透過する分光特性を持つフィルタが好まれ、逆に420nm~480nmや、580nm以降の光線を優位に透過する光吸収フィルタは敬遠される傾向があり、これらの特性には羞明を軽減させることと関連するものがあるのではないかと思われた。
  • 川崎 知子, 牧野 伸二, 保沢 こずえ, 近藤 玲子, 伊藤 華江, 平林 里恵, 関口 美佳, 国松 志保
    セッションID: PII-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ロービジョン患者の読書能力と読み書きの不自由さとの関連を検討した。
    【対象と方法】当科ロービジョン外来受診患者40例(17歳~84歳、平均60歳)を対象に読書チャートMNREAD-Jの白背景に黒文字のJ1、黒背景に白文字のJ2を用いて、読書視力、臨界文字サイズ、最大読書速度を測定した。読み書きの不自由さはSumiら(Ophthalmology 110:332,2003)の問診票を用い、単語の読み書き5項目、文章の読み書き3項目、合計8項目(0,1,2点の3段階で点数が大きいほど不自由さが強い)と読書能力の関連を検討した。疾患の内訳は糖尿病網膜症12例、視神経萎縮、網膜色素変性、加齢黄斑変性、緑内障が各6例、近視性網脈絡膜萎縮4例で、優位眼視力は0.79±0.4(logMAR)であった。
    【結果】読書視力(logMAR)はJ1:0.75±0.3、J2:0.71±0.3、臨界文字サイズ(logMAR)はJ1:1.0±0.2、J2:1.0±0.2、最大読書速度(文字数/分)はJ1:86.6±72.7、J2:105.6±77.4であった。読み書きの不自由さは、単語の読み書き5項目では平均1.4±0.5点、文章の読み書き3項目では平均1.6±0.5点、8項目の平均は1.5±0.4点であった。疾患別の優位眼視力に差はなかった(Kruskal-Wallis検定、p=0.33)が、読み書きの不自由さは、加齢黄斑変性:1.9±0.1点、糖尿病網膜症:1.6±0.3点、緑内障:1.6±0.3点、近視性網脈絡膜萎縮:1.4±0.4点、視神経萎縮:1.4±0.5点、網膜色素変性:0.9±0.5点であった。8項目の平均点数を従属変数、年齢、優位眼視力、読書能力の各パラメータを独立変数として変数減少法による重回帰分析を行なうと、最大読書速度(J2)が変数として採用され(標準回帰係数-0.748)、平均点数=1.931-0.004×最大読書速度(J2)で回帰された(自由度調整決定係数0.546、p<0.001)。
    【結論】今回の検討ではロービジョン患者の読み書きの不自由さは最大読書速度と関連が強かった。
  • 先天白内障についての検討
    石井 雅子, 張替 涼子, 三木 淳司, 樺沢 優, 阿部 春樹
    セッションID: PII-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>
    学童の学習の基礎である読書能力を測定し、先天白内障の視機能を評価する。
    <対象・方法>
    新潟大学眼科を受診し、MNREAD-Jkにて読書速度を測定した先天白内障の学童15名を対象とした。MNREAD-JKの2種類のチャート(黒文字/白地、白文字/黒地)を用い読書のパラメータである最大読書速度、臨界文字サイズ、読書視力を視力値、眼振の有無、手術時期から検討し、同学年の視覚正常児のパラメータと比較した。
    <結果>
    眼振をもつ者7例(pendular type3例、jerky type4例)、眼振をもたない者8例であった。同学年の正常視覚児の最大読書速度を100%とした場合、pendular typeの眼振をもつ学童は黒文字/白地で27.25%、白文字/黒地で40.01%、jerky typeでは黒文字/白地で42.50%、白文字/黒地で54.13%、眼振をもたない者は、黒文字/白地で64.64%、白文字/黒地で78.33%の読書効率であった。白文字/黒地チャートにて最大読書速度が向上したが、白内障の程度の軽いもの、または片眼性であっても正常視覚児と比べ読書効率が劣っていた。視力が良好な症例は臨界文字サイズおよび読書視力が小さく、正の相関がみられた(r=0.85,p<0.01) 。pendular typeの眼振は、交代性上斜位、潜伏眼振または他の眼疾患を伴っており、臨界文字サイズが大きく、当該学年の教科書の文字を読むのに補助具が必要と判断された。補助具の使用は臨界文字サイズを小さくし、最大読書速度を向上させた。静止位をもつjerky typeの眼振や生後1年未満で白内障手術を施行した場合には、比較的良好な最大読書速度と正常視覚児と同程度の臨界文字サイズおよび読書視力を得ている症例もあった。
    <結論>
    MNREAD-Jkによる読書速度の測定は、視力値のみでは評価できない先天白内障の視機能の一面をとらえることができ、視機能障害が学習へ与える影響を客観的に判断する一助となった。
  • 渡邊 あゆみ, 川嶋 英嗣, 川瀬 芳克
    セッションID: PII-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】グレアの評価は主観評価に基づく方法と視機能評価に基づく方法に分けられる.本実験ではマグニチュード推定法を用いての不快グレア,低コントラスト視力の計測による減能グレアの定量・評価をおこない,主観評価と視機能評価の関連性について検討した.
    【対象】矯正視力1.0以上で屈折異常以外に眼疾患を有しない8名(年齢21~23歳).
    【方法】白色LEDに分光透過特性の異なる12種類のカラーフィルターを挿入し,眼前55cm,利き目の耳側20度方向から眼にむけて照射した直接グレア光について,視力0.25に相当するサイズで輝度コントラスト3%のランドルト環を見ているときのグレア光源の明るさと視標の見やすさに関するマグニチュード推定値と,輝度コントラスト3%のランドルト環を用いた低コントラスト視力値の測定を行った.
    【結果】カラーフィルターの視感透過率が低いほど低コントラスト視力は良く,相関係数は0.9154となり視感透過率と低コントラスト視力の間には高い相関が得られた.また,視感透過率が低くなると主観的にグレア光は暗く,視標は見やすく感じるという傾向が認められた.一方,見やすさのマグニチュード推定値と低コントラスト視力値の相関係数は0.2214,明るさのマグニチュード推定値と低コントラスト視力値の相関係数は0.2530となり,ともに相関関係は認められなかった.さらに見やすさと明るさの2つのマグニチュード推定値間では相関係数は0.5612となり,統計的に相関は認められなかった.
    【結論】グレア光に対するカラーフィルターの装用効果について,主観評価と視機能評価は必ずしも一致しないことが示唆された.
  • 山口 えり, 小田 浩一
    セッションID: PII-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】限られたスペースに文字を配置するために文字を縦長(長体)にしたり、横長(平体)にしたりする工夫がなされる。この工夫は通常、デザイナの感覚にたよって主観的に行われている。ここでは、縦横比が1/5から5倍という広い範囲の長体化、平体化について、それが視認性にどのように影響をするかを定量的に検討したので報告する。

    【対象と方法】刺激にはカタカナ清音46文字、モリサワ新ゴシックLを使用し、縦横比0.2~4.96の範囲を対数間隔で9段階に変化させた。刺激の平均輝度は105cd/m2、コントラスト98%の黒い文字を提示した。手続はまず、調整法で正答率が100_%_の大きさと0_%_の大きさを決めた。次に、その間で対数間隔の7段階に大きさを変化させた文字を提示し、ランダムに変化する文字を認識する課題を20回繰り返した。正答率が50_%_になる閾値文字サイズを推定し、視認性の指標として比較した。被験者は裸眼または矯正で小数視力1.0以上の視覚正常の日本人20人であった。

    【結果】縦横比を要因とした一元配置の分散分析の結果、縦横比の主効果は、文字の高さで計った閾値文字サイズに対して(F(8,171)=129.2,p<0.001)、文字の幅に対しても(F(8,171)=221.7,p<0.001)有意であった。また、長体と平体の閾値文字サイズにおいて、各比率の段階ごとに視認性に差があるのか対応のあるt検定を行ったところ、1:0.67と1:1.49の縦横比以外全てが1_%_水準で有意であった。

    【考察】縦横比が1:1の正体のとき視認性が一番高い事が分かり、変形を行っていくにつれて徐々に視認性が低下する事が分かった。しかし、t検定の結果から67%程度の長体化は正体とほぼ同じ視認性を維持する事ができると考えられる事から、拡大教材において多くの文字数を入れ込みたいときや、狭い視野で多くの文字を一度に見たい場合に、縦か横の一方向だけを縮小した変形を行うという方法が有効である可能性があると考えられる。

  • 山中 今日子, 小田 浩一
    セッションID: PII-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     ウェイトとは文字の線幅の太さのことである。構造の複雑さに個体差のある漢字の場合、画数の多少によってウェイトと視認性の関係は異なる(山中・小田,2007)。視力の低下に伴い、日本語書体における画数とウェイトが視認性にもたらす影響に変化があるかどうかを検証する。

    【方法】
     刺激には1~20画の漢字90文字を用い、画数の多少で4段階に区分した。フォントはモリサワ新丸ゴシックからL、R、M、B、Uの5段階のウェイトを用いた。被験者は正常視力1.0以上を有する日本人女子大生10名で、視力低下条件ではシミュレーション眼鏡を用いて視力を約0.4まで低下させた。
     これらの画数、ウェイト、視力条件をかけ合わせた40条件において実験を行った。呈示文字サイズの範囲を正答率100%の最小から正答率0%の最大の大きさとなるように調整し、対数間隔で呈示された7段階の文字サイズについて音読課題を20回繰り返す恒常法で認識閾値を測定した。

    【結果】
     対数に直した認識閾値サイズについて、画数、ウェイト、視力条件を要因とした3元配置の分散分析及び多重比較を行った結果、全ての主効果(ウェイト:F(1.94,17.50)=15.69,p<.01、画数:F(3,27)=1.19,p<.01、視力条件:F(1,9)=328.01,p<.01)及び画数とウェイトの交互作用(F(12,108)=8.28,p<.01)が有意にみられた。

    【結論】
     視力条件の変化に比例した文字サイズの拡大が必要となるが、視力条件がフォントと視認性の関係を変化させることはない。視力低下の有無に関わらず、日本語書体における視認性が最も高くなるフォントは線幅/文字高さが10%程度のものであると考えられる。
  • 川嶋 英嗣, 伊藤 夢美
    セッションID: PII-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    目的  視野制限下の読書における文字フォントの効果について検討する。
    方法  文字フォントはMSゴシック,字間の狭いMSPゴシック,低解像度下での視認性が高いとされるイワタUDゴシックRの3種類を使用した。読材料はMNREAD-Jkチャートと同様の2~4文字平仮名単語で構成し,-0.3~1.6 logMARの範囲において0.1 log unitのステップで文字サイズを変化させた。視野条件は,制限なし,10度,5度,2.5度の4条件を,視野狭窄ゴーグルを用いて自作した。被験者は矯正視力1.0以上の15名であり,ゴーグルを装用してフォント条件別に文字サイズ別の読書速度を測定し,読書視力,最大読書速度,臨界文字サイズ,最大文字サイズを算出した。
    結果  フォント条件と視野条件を要因とする2元配置の反復測定分散分析の結果,読書視力においてフォント条件の主効果が認められた。最大読書速度と最大文字サイズについては視野条件の主効果のみが統計的に有意であった。一方,臨界文字サイズについてはフォント条件と視野条件の各主効果,及び交互作用は有意に達しなかった。
    結論  MSPゴシックは他のフォントに比べ字間が狭いため視野内文字数が多くなるが,視野制限下の読書における効果については本研究で証明することはできなかった。低解像度下での視認性の高いフォントは文字サイズ閾値に効果のあることが示唆されたが,視野制限による読書パフォーマンスの低下を改善する効果は認められなかった。
  • 永井 伸幸
    セッションID: PII-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    目的:ロービジョンケアにおいては、正確な視機能評価とともに本人の意向を踏まえた対応が必要である。しかし、本人が「よい」と判断した条件が、客観的には適切ではないと思われる場合もあるだろう。そこで、弱視者に文字サイズを自分が好ましいと思う条件に設定してもらった場合、どのような特徴が見られるのか、そして、その文字サイズは、文章の難易度等によって違いがあるのかという点について実験的に検討した。
    方法:被験者:被験者は5名の弱視者であった。事前にMNREAD-Jを用いて臨界文字サイズと読速度の測定を行った。CRTディスプレイ上に1行10文字3行の読み刺激を呈示した。読み刺激は、ひらがな無意味文字列、小学校で習得する漢字を含む文章、大学の専門教育で用いるテキストの3条件を設定した。視距離は各被験者の見え方に応じて調節した。「この状態で読み続ける時に好ましいと思う文字サイズに調節して下さい」と教示した。呈示された文字を縮小して好みの文字サイズに調節する下降系列と、拡大して調節する上昇系列を交互に15試行ずつ行った。読み刺激の提示順序はランダムであった。
    結果:文章の質と選択された文字サイズの関係を被験者毎に分散分析によって検討したところ、臨界文字サイズの最も大きかった2名の被験者において、文章の難易度が高く、用いられる漢字の複雑な大学テキスト条件で有意に大きな文字サイズが選ばれた。
    結論:文章の質によって主観的に読みやすいと判断する文字サイズに違いの見られた弱視者は、非常に大きな文字サイズが必要な弱視者であった。そうした弱視者は視野に入る文字数を増やすために、視認の容易なかな文字列の場合には相対的に小さな文字サイズを、画数が多く視認が困難な漢字を含む文章の場合には相対的に大きな文字サイズを選ぶ傾向にある事が推察された。
  • 色識別
    三谷 誠二, 吉田 敏昭, 小林 聖, 藤澤 正一郎, 末田 統, 田内 雅規
    セッションID: PII-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    背景 我が国の視覚障害者の約9割がロービジョン者と言われる。その色覚特性は不明であるが、ロービジョン者に配慮した色を生活環境に用いることでQOL向上が可能と考えられる。そのため本研究では、ロービジョン者の色覚特性の一端を明らかにする目的で色識別計測を試みた。
    方法 被験者:一般的眼科臨床検査を行い障害の原因が特定できたロービジョン者84名の協力を得た。色識別計測:色票はJIS Z 8102の基本色から、赤(5R4/14)、黄赤(10R5/14)、黄(5Y8/14)、緑(5G5.5/10)、青(10B4.5/11)、紫(7.5P4.5/11)の6色を選んだ。全色を並べたパネルを見せて、色名と配置場所を測定した。計測時照度は1~500ルクス(9種)とした。
    結果 色識別計測の結果、6色中黄(5Y8/14)の識別率が最も良く、1ルクスで約60%、50ルクスで90%以上の被験者が識別できた。2番目は赤(5R4/14)で、1ルクスで約38%、50ルクスで76%以上の識別率であった。
    結論 黄(5Y8/14)は多くのロービジョン者が1ルクスで色識別可能であり、1ルクスから500ルクスまで、全ての照度で識別率が優れていた。次いで赤(5R4/14)の識別率が高かった。
  • 色の目立ち度
    三谷 誠二, 吉田 敏昭, 小林 聖, 藤澤 正一郎, 末田 統, 田内 雅規
    セッションID: PII-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    背景 視覚障害者の約9割がロービジョン者と言われている。その色覚特性は不明であるが、ロービジョン者に配慮した色を用いることによってQOL向上を図ることが可能と考えられる。そこで本研究では、ロービジョン者の色覚特性の一端を明らかにする目的で色の目立ち度計測を試みた。
    方法 被験者:一般的眼科臨床検査を行い障害の原因が特定できたロービジョン者84名の協力を得た。色の目立ち度計測:色票はJIS Z 8102の基本色から、赤(5R4/14)、黄赤(10R5/14、5YR7/14)、黄(5Y8/10、5Y8/14、5Y9/6)、黄緑(5GY7/11)、青緑(7.5BG5/9)、青紫(10PB4.5/10.5)、赤紫(5RP5/12)の10色を選んだ。ランダムに選んだ2枚を3種のグレースケールの背景(N3.0、N5.5、N8.0)上の何れかに置き、どちらが目立つかを5段階評価した。照度は500ルクス及び色識別計測で各協力者が色識別できた最低照度の2種とした。
    結果 色の目立ち度計測の結果、背景N3では黄(5Y8/14)の目立ち度が非常に高く、次いで黄赤(10R5/14)、赤(5R4/14)の順となった。背景N5.5では全体的に目立ち度は落ちるが、N3の時と順番は同じであった。背景N8では、黄(5Y8/14)の目立ち度が赤(5R4/14)、黄赤(10R5/14)と比べて悪くなり、順番が逆転した。
    結論 色の目立ち度は、背景が明るい場合は赤(5R4/14)や黄赤(10R5/14)が、また暗い場合では黄(5Y8/14)の目立ち度が高かった。
  • 御旅屋 肇
    セッションID: PII-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    1.目的 遮光眼鏡のレンズ選択は、利用者の主観的評価によるのが現状である。このため、障害者自立支援法では遮光眼鏡の対象が特定四疾患に限られている。しかし、他の疾患でもまぶしさを訴える事例は少なくない。遮光眼鏡を必要とする人に公的な支援を拡大することは急務である。このため、遮光眼鏡の効果を測定する方法を検討した。 2.仮説と方法 生理的モデルから、まぶしさを感じる状況下では視力低下が同時に生じ、遮光眼鏡の装用により低下した視力が改善されることが予想される。これを確認するため、まぶしさを訴える14例について、通常の視力検査後、屋外で一定以上の照度条件下に、遮光眼鏡を装用した場合と、しない場合の視力計測を実施した。 3.結果 (1)屋外で視力低下の生じた事例が9例(64.3%)、生じない事例は5例(35.7%)だった。 (2)遮光眼鏡の装用効果については、装用前より視力が向上した事例が12例(87.5%)、変化のない事例は2例(いずれも錐体杆体ジストロフィー)だった。また、装用時の視力を通常の最大視力と比較したところ、装用により視力が低下した事例が4例(28.6%)、変化のない事例が4例(28.6%)、向上した事例は6例(42.8%)だった。 4.考察 二つの装用効果で事例をプロットすると、効果のあまり認められない第一群、視力が最大視力の水準に回復する第二群、最大視力以上に向上する第三群に分類された(図1)。第三群については、全ての事例で屋外での視力低下が認められなかった。このうち2例について、遮光眼鏡を装用し通常の視力検査を行なったところ、屋外と同様の効果が認められた。これは、屋外での視力低下が生じない原因として、通常の視力検査時にも既にまぶしさによる視力低下が生じていた可能性を示唆する。 5.結論 なお検討すべき点はあるものの、当初の仮説は大筋で支持された。また、遮光眼鏡の効果を推定する今回の方法は、多くの臨床の場においても現時点で実施可能な方法と考える。
  • 田邉 正明
    セッションID: PIII-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    目的
     SHINBIはレンズ径が大きく、レンズと物体間距離を自由に変化させることができ、両眼視可能な卓上式拡大鏡である。屈折力は+1.25Dなので、名目倍率は1.25/4=0.315(倍)、商用倍率は1.25/4+1=1.315(倍)となる。4D以下の屈折力の拡大鏡は名目倍率で表示すると1以下になり、大きく見えるという感覚からずれてしまうことから、メーカーの慣習では商用倍率で表されることが多い。しかし、SHINBIの表示倍率は1.8倍であることと、レンズと物体間距離により見かけの拡大の状態は変化するので、使用状態の一例を挙げて適切な倍率を考察する。
    方法
     SHNBIを机の上に置くと仮定し、書物を机の上に置いたときの一般的な使用状態を考え、横倍率、角倍率を求め、実際の使用感を表現できる倍率を求めた。
    結果
     眼と机間距離を楽な姿勢で見える40cmとしたとき、レンズと眼間距離:24cm、レンズと物体間距離:16cm、レンズと虚像間距離:20cm、眼と虚像間距離:44cm、眼の調節力は+2.27Dとなった。横倍率は虚像と物体の比であり、レンズと虚像間距離/レンズと物体間距離となるので、20cm/16cm=1.25(倍)であった。角倍率は近用眼鏡の倍率を求める公式、m=(1-dD)/(1-d(S+D))(m:倍率、d:レンズと眼間距離、S:物体のバージェンス、D:レンズの屈折力)を用いた結果、1.14倍となった。
    考察
     写真で虚像の見え方を観察すると1cmが1.1cmに見えているので、見た目の倍率は1.1倍となった。これは横倍率よりも角倍率に近くなっている。その原因は虚像と物体間距離が4cmあるので、その距離だけ虚像が小さく見え、見た目の倍率として求められた角倍率の1.14倍に近くなったと考えられた。次に、角倍率を使用してSHINBIが1.8倍となる条件を考えてみると、現実的に使用できる一番適当な状態は、レンズと物体間距離が67cm、レンズと眼間距離が76cmのときであった。
     しかし、SHINBIは韓国製の拡大鏡であり、製造メーカーによると、表示倍率はレンズと物体間距離を35cmとしたときの横倍率を採用しており、韓国独自の基準を設けていることが分かった。
  • 山中 幸宏, 山本 百合子, 佐々 圭祐, 佐々 博昭
    セッションID: PIII-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    目的:昨年のロービジョン学会でも、「拡大読書器を使用すると眼が疲れる」という報告がなされている。また株式会社アサクラメガネスタッフが各地の福祉事務所を訪問した際の反応としても、充分に拡大読書器を使いこなせないでいる方が見受けられるという報告を聞いている。 拡大読書器を「眼が疲れないように快適に使用するためにはどうすればいいのか?」を考えたとき、適切な使用方法を確認できるようにするために「視覚障害を持つ方が読むマニュアルであることを配慮した使用説明書」が必要であるというコンセプトに基づき、作製を試みた。 方法:タイムズコーポレーション社製AV100ネオの使用説明書を、以下のことに留意して作成した。 1・スイッチ操作編・基本操作偏・応用操作編・逆引き操作編(文字がどこにあるかどうかわからなくなる等の状態に応じた操作方法)の4操作ごとに、説明書を分けること。2・一つの動作ごとにイラストを使用すること。3・文章は極力少なしイラストによる視覚効果で行う動作を判断できるようにすること。4・視覚効果を高めるために、強調したい部分のイラストのパーツを太くすること。 考察:拡大読書器を適切に使用していくためには、イメージとしてわかりやすくかつ、購入時に説明を受けた望ましい使用方法を確認できる説明書が必要と思われる。
  • 新井 千賀子, 山中 幸宏, 気賀沢 一輝, 尾形 真樹, 吉野 啓, 小田 浩一, 平形 明人
    セッションID: PIII-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    目的:緑内障手術を予定し虹彩付きコンタクトレンズ(虹彩付きCL)の使用が出来なくなる症例について手術後の視機能を想定した補助具の検討を行った。症例:36歳:男性。20歳時に交通外傷により右眼:眼球内容除去(義眼)左眼:無虹彩、外傷性緑内障、無水晶体眼、虹彩付きCL使用。視力:VD=Sl(-)、VS=30cm/HM(1.2×KCL)。方法:1)ニーズの把握:手術後に困難と予測される日常生活、視覚作業等の聞き取りを実施した。2)虹彩付きCL非装用時の視機能評価:屈折矯正、視力検査、読書評価(MNread-J)を行った。3)1)と2)をもとに補助具を検討し、読書評価によって改善度を評価した。結果1)患者は羞明と読み書きの困難を想定し術後の就労継続は困難と考え手術への不安を抱えていた。2)虹彩付きCL非装用時の視力はVS=(0.04×+13.0Dcyl-2.0Dax20°) (0.1×+13.0Dcyl-2.0Dax20°&PH)、読書評価(FIg.1)は屈折矯正のみと屈折矯正にピンホールを加えた場合の結果はそれぞれ、臨界文字サイ1.4logMAR、0.6logMAR 、最大読書速度173cpm、235cpmであった。羞明に対しては虹彩付きCLと同等な効果が 遮光レンズだけでは得られなかった。3)これらの結果から、矯正眼鏡に着脱可能なピンホールを取り付ける補助具を作成した。眼鏡の厚みと着脱の容易さを考慮して内掛けタイプにし、近用には3Dのフィルムレンズを取り付けた。近用での読書成績は臨界文字サイズ0.7 logMAR, 最大読書速度266cpmであった。考察:本症例の視機能の課題を包括的に解決する既存の補助具はなく、患者の不安は大きかった。想定した条件下における視機能評価結果をもとに補助具を検討し新たに作成したことで、患者の手術やその後の就労継続への見通しを提供することができた。
  • 北村 弥生, 河村 宏
    セッションID: PIII-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究の目的は、理療教育課程利用者が学習において使用するVisual Display Terminal(以下、VDT)による疲労の現状を明らかにし、快適な学習環境の開発に資することである。
    【方法】国内5カ所の国立更生援護施設のうち4施設(北から函館、塩原、神戸、福岡)の理療教育課(以下、理教)利用者に質問紙による調査を行った。
    【結果】171名から回答を得て(回収率88.6%)以下のことが明らかになった。1)学習による目の疲労感を92%の利用者が訴えた。2)利用者によるDAISY使用の理由は目の疲労軽減のため43%,学習効率の上昇35%であった。3)「目の疲労」、「目の疲労と学習の関係」、「視力低下感」、「視力低下の不安」の4項目間の相関は非常に高かった。4)拡大読書器使用者における目の疲労は、性別・学年・使用頻度には関係なかったが、視力0.01-0.04・50歳代以上・聴力障害がある場合に有意に多かった。
    【結論】以下の3項目が支援者に必要とされることが示唆された。1)理教利用者が抱える目の疲労と視力低下の不安を認識すること。2)目の疲労と視機能についての正確な知識・試験勉強における目の疲労を最小にする適切なVDTの使用方法・心理的ケア方法を明らかにし提供すること。3)墨字がようやく読める視力の者、中・高年者、聴覚障害をあわせもつ者には、特に、学習補助機器の適合と使用方法の教授に配慮すべきこと。
  • 1:ロービジョンの色の類似性領域~全体的傾向と分類について~
    伊藤  納奈, 佐川  賢, 岡本  明, 三谷  誠二, 吉田  敏昭
    セッションID: PIII-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究は、ロービジョンを対象として視認性に大きく関わる基本特性である1.コントラスト感度、2.色の類似性領域を計測し、実験的な検討から見やすい視覚表事物の設計に関する規格作成および視覚機能のデータベースの確立を目的としている。今回は色の類似性領域について2006年度の続報として報告する。 【方法】実験はJIS準拠の管理色票13×9cmのもの16色を基本色として用いた。それぞれの基本色に対し「似ている(類似)」または「同じ」であるかを同じ大きさ・仕様の103色のテスト色票を用いて記録した。また「類似」の判断の手がかりを掴むために各テスト色票のカラーネーミングも行った。照明は昼白色の調光可能な蛍光灯を使用し、明所視条件:500 lx、薄明視条件:3 lxとした。両眼で計測を行った。 【結果】ロービジョン被験者71名のデータを得た。晴眼者(若年者)のデータと比較すると、全体としてロービジョンは基本色に対する類似性領域はより広く、特に薄明視条件で領域の拡大が顕著であった。また医学的属性検査における視野測定の結果より、視票が見える範囲の割合を求め、視力との相関をプロットしたグラフから3つのカテゴリー(1視野狭窄(10°以上)2.視野狭窄(10°以下)3.中心暗点)に被験者を分類した。各分類ごとに色の類似性領域を求め、比較すると、明所視・薄明視の差や領域については分類ごとの特徴がある一方、共通した類似性領域が存在することも明らかとなった。 【結論】色の類似性領域についてロービジョンの全体的な傾向と、視野の状況から分類した違い及び共通する点が明らかとなった。今秋より標準化の一環として、まずはJIS TR(Technical Report) 作成を予定している。
  • 2:ロービジョンのコントラスト感度特性~全体的傾向と分類について~
    伊藤  納奈, 佐川  賢, 岡本  明, 三谷  誠二, 吉田  敏昭
    セッションID: PIII-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究は、ロービジョンを対象として視認性に大きく関わる基本特性である1.コントラスト感度、2.色の類似性領域を計測し、実験的な検討から見やすい視覚表事物の設計に関する規格作成および視覚機能のデータベースの確立を目的としている。今回はコントラスト特性について2006年度の続報として報告する。 【方法】実験ではPCにより周波数と輝度コントラストを調整した円状の縞模様を提示した。画像提示用に21インチCRTフラットパネルモニター、被験者の反応 (縞模様の方向判断) 用にキーボードを用いた。視距離は50cmとした。空間周波数は、0.01, 0.02, 0.06, 0.1, 0.2, 1, 2, 6, 10 (cycle/degree: CPD)の9種類とした。縞の方向は0, 45°,90 °, 135 °の4方向をランダムに提示した。提示時間は、1000msec 及び60msecとし、明所視条件として輝度40cd/m2、薄明視条件として輝度4cd/m2の2条件で行った。右眼、左眼、両眼で計測をした。 【結果】ロービジョン被験者72名のデータを得た。ロービジョンは個人のばらつきが大く、全体的に晴眼者(若年者)よりも高周波領域におけるコントラスト感度の低下が見られた。また晴眼者の明所視では3~5°cpd付近で感度の最大値となるが、ロービジョンは0.2~0.6cpd付近が最大値となる場合が多く、最大感度の低周波方向への移動が見られた。また関連研究(色の類似性領域)と同様の手法で分類を行い、データを比較したところ、分類1はロービジョン全体の傾向に近く、ロービジョンの分布の中では比較的高周波・低周波ともに高くなった。分類2.の視野狭窄(10°以下)では低周波での感度及び再大値の感度低下が著しく、また分類3の中心暗点では高周波における感度低下が明らかとなった。従って、ロービジョン全体のコントラスト感度特性とは、分類ごとの特徴を反映したものと考えられる。 【結論】コントラスト感度についてロービジョンの全体的な傾向と、視野の状況から分類した違い及び共通する点が明らかとなった。来年度JIS TR(Technical Report) 作成を予定している。
  • 中西  勉
    セッションID: PIV-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】これまで、一般の人々や大学生などを対象とした視覚障害者についての講義などによる視覚障害者観の変化を調べた研究がいくつかあるが、将来、患者への直接的なケアを担当する看護学生を対象にした研究はみられない。そこで、看護学生を対象に、視覚障害についての授業による視覚障害者観の変化の有無を調べた。 【方法】対象は、高等看護学院の看護学生2年生34人(全員女性)であった。研究への同意が得られた学生に対して「視覚障害者に対する多次元的態度尺度」(河内,徳田,1988)による調査を実施した。まず、プリテストとして同尺度についての質問を障害者福祉の授業の冒頭に行った。そのテストでは視覚障害者に接した経験の有無とその内容についても質問した。視覚障害についての授業後に合計3回テストを実施した。ポストテストは、この後の3週間の他の看護実習以降に行い、この実習中に視覚障害をもつ患者への接触の有無についても質問した。すべて質問に回答した32人のデータを対象として、視覚障害者観に対する授業効果の有無等について、Kruskal Wallis 検定、Mann-Whitney のU検定および符号検定を用いて分析した。 【結果】下位尺度の「共生への拒否的態度」と「交流の場での当惑」に関して、授業後テスト時点ではプリテスト時点よりも改善される傾向があった。 【結論】看護学生を対象とした障害者福祉の授業は、視覚障害者についての知識の伝達が行われるだけでなく、学生の視覚障害者観に変化をきたし、視覚障害者に対してより好ましい対応ができるようになることが期待できるものと考えられた。
  • 今田  有香, 佃 順子
    セッションID: PIV-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに】眼科手術の進歩に伴い多く患者の手術が可能となる一方で、視力障害を抱えたまま退院するケースも少なくない。当科では、入院期間の短縮が進み、退院指導のあり方が常に問題とされる中、院内にある福祉ネットワーク部と連携し社会資源の活用等を行ってきたが、ロービジョン外来等との連携や視覚障害者用の器具や日常生活用品に関する情報提供の方法が統一されていなかった。昨年度、入院時からの積極的なロービジョン患者への介入の効果について研究したが介入の効果に有意差を認めなかった。そこで今回介入効果を認めた群の疾患や生活背景を分析したのでここに報告する。 【対象と方法】手術終了後の優位眼視力が0.03~0.3の患者で、通常通りの退院指導を行ったA群と情報提供等の介入を行ったB群に分類し、患者背景(性別・年齢・在院日数)、疾患背景(疾患名・視力・視野)、生活背景(仕事・家族の有無)の3項目について分析した。 【結果と考察】疾患背景における、視野障害を有する患者に有意差はなく、有職者で視野障害を有する患者にも有意差を認めなかったが、介入効果のあった群に視野障害を有する患者が多いという結果を得た。緑内障や糖尿病網膜症などの疾患群で視野障害を有する患者は、入院時から介入の必要性をアセスメントしていく必要があると考えられた。 仕事の有無に関しては、有職者がA群では9名(45.0%)、無職が11名(55.0%)、B群では有職者が3名(15.0%)、無職が17名(85.0%)で有意差を認める結果で、唯一生活背景において介入効果のあった群に有職者が有意に多いという結果を得た。この結果は、仕事を持ち社会生活を継続するためには、日常生活の自立に付加した専門的な介入や情報の提供が必要であることを示唆していると考えられ、これまで病棟での介入要因となりがちであった、高齢者、重度視力障害者、独居等とは異なる要因が明らかとなった。
  • 高橋 知美
    セッションID: PIV-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    目的:ロービジョンケアを行っているが全身症状のある疾患のため困難である症例を経験したので報告する。 症例:38歳、女性。平成17年1月に発症した原因不明の全身症状のある疾患のため発症から3ヶ月で視力が右眼(1.2)から光覚なし、左眼1.2から0.03 まで低下した。縫製関係の仕事をしていたが入院、通院などもあり退職。歩行は明るいところであれば自力で歩行可能。しかしなれない場所は家族の付き添いがないと困難となった。本人は行動範囲が狭まったため拡大鏡処方と日常生活訓練を希望されロービジョン外来を受診した。拡大鏡は7倍のものを使用することで雑誌などは読む事が可能となった。しかし日常生活訓練は診断がついていない全身性疾患のため眼症状も含め安定していないため順調にはすすんでいない。比較的近距離にある県内の盲学校で歩行訓練を受けれることとなったが当日に体調を崩し通学できない事が多い。 考察:2004年8月から山形大学ロービジョン外来が開始してから2008年現在まで69人(男37人、女32人)受診したが受診時診断名がついている患者がほとんどであり症状も比較的安定していた。そのため十分ではないかもしれないがそれぞれのニーズに近い事は行えていたと考えられる。今回のケースのよう生活訓練を受ける施設までの通所のための移動手段を訓練する事も通院のため予定通りに行えないため希望に添えているとはいえない。患者さんの年齢が比較的若いため他施設と連携をとりロービジョンケアをすすめて行かなければならないと考えられる。
  • 大石 奈々子, 久保 若奈, 石井 祐子, 南雲 幹, 武田 美知子, 若倉 雅登, 井上 治郎
    セッションID: PIV-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】井上眼科病院で行っている新入職員対象のロービジョン講習会に対する評価を検討し報告する。【対象と方法】対象は、当院の医師、検査職員、事務職員等のうち、平成14年4月1日以降に入職し、新入職員研修時に講義、ロービジョン体験、誘導体験からなるロービジョン講習会を受講した職員109名(平均年齢24.0±3.2歳、平均勤続年数2.0±1.9年、男性7名、女性102名)。方法は、平成20年4月に_丸1_ロービジョン体験について、_丸2_ロービジョン者誘導体験について、_丸3_ロービジョン講習会全般について、選択式と記述式を組み合わせたアンケート調査を記名式で行った。【結果】回答は、_丸1_体験によって、ロービジョン者の心理、見え方を体感できた98%、_丸2_誘導体験をして役に立つと思う動作は歩行90%、椅子に座る79%、階段歩行68%、_丸3_新入職員研修時のロービジョン講習は仕事に役立つと思う100%、その中で仕事に役立つ内容はロービジョン体験92%、誘導体験86%であった。同講習を継続すべきとの回答も98%に及んだ。【結論】新入職員研修時のロービジョン講習会は、職域を超え受講した全職員によって、ロービジョン者の心理を理解し、誘導を学ぶ場として大きな役割を果たしていると評価されており、今後も継続すべきだと考えた。
  • 安藤 伸朗, 白木 邦彦, 川瀬 和秀, 西田 朋美, 鶴岡 三恵子
    セッションID: PIV-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】眼科医のロービジョンケアに対する認識を調査した。
    【対象と方法】眼科医を対象にメールにてアンケートを行い、平成19年12月18日から平成20年1月30日までの間に、34都道府県から205通の回答を得た。回答者の内訳は、性別~男性131;女性74、年齢~20歳代から60歳代で40歳代が最多、勤務形態~開業:64・総合病院:55・眼科病院:8・大学:77。専門分野~網膜硝子体:90、専門なし:36、白内障33、小児眼科:33、緑内障:31、他。質問項目は、年間手術件数、専門分野、「ロービジョン外来」の開設、ロービジョンケアの内容、ロービジョンに関心の有無、ロービジョンケアの必要性、ロービジョンケアを学ぶ機会に参加したいか等18項目。
    【結果】ロービジョン外来開設:44.4%、拡大鏡の処方:51.7%、遮光眼鏡処方:62.0%、ロービジョンに関心ある:89.8%、ロービジョンケアは必要:98.0%、ロービジョンケアを学びたい:91.7%。
    【結論】今回のメールによるアンケートでは、かなりロービジョンケアに関心のある眼科医が多いことが示された。ただし今回の調査は、回答者が205名あり、日本における現状を知るためには、より多数例での調査が求められる。
  • ーあるロービジョンダイバーの事例検討からー
    吉野 由美子, 小田 浩一
    セッションID: PV-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
     目的  本発表では事例Aがダイビングというレクリエーション活動の中で、見ることに目覚め、見る能力をもっと高めたいという欲求を持ち、実際に見えなかった海中の小生物が見えるようになっていく過程を追い、ダイビングという活動が視覚リハに役立ちその可能性を広げる存在であることを明らかにする。 方法  事例Aは年齢60歳、先天性白内障手術による両無水晶体眼、矯正視力0.2、片方に杖を持つことで歩行可能な下肢障害がある。下肢障害の原因は不明である。本稿ではAの日記、26年間700回のダイビングログ、撮影した写真などの記録を分析検討する事例研究法を使用する。 結果  事例Aは、下肢障害があり転ぶことに恐怖心を持っていた。偶然に出会ったスクーバーダイビングの無重力で転ぶ心配のない世界に魅せられていった。水中での安全確保のためのゲージのチェックや、言葉でのコミュニケーションが取れない水中でのサインの確認などのため見ることへの動機付けが強まり、見え方を改善するため情報を集め活用することによって見る能力を高めようとした。また、「見えないから興味がない」と思っていた小生物が、アフターダイビングのおり、プロジェクターで拡大され美しい姿を見ることにより「みたい」という欲求が高まった。このように見ることへの有用な刺激を受け、見ることへの欲求がさらに強まり、その結果Aは光学機器や電子エードを積極的に活用し、視覚リハに励むようになり、現在Aは、小生物の世界を見ることができるようになって来ている。  結論  ロービジョン者が見ることの楽しさを知り、見ることに意欲を持って取り組むことが視覚リハを積極的に利用し、その結果視覚活用能力を向上させることにつながって行くのである。見ることへの動機付けと見ることの楽しさを味わう舞台として、スクーバーダイビングは多くの有用な条件を持っている。また「見える」世界が広がることは、ロービジョン者のQOLの向上に多大の貢献をする。  
  • 障害に対する気持ちの変容を中心に
    上野 英子, 小池 将文, 田淵 昭雄
    セッションID: PV-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 著者らはこれまで、視覚障害者が受障後、自分の障害を受け入れていくためには、その障害や疾病、享受できる福祉制度の知識を十分に獲得することが重要であることを報告してきた。障害や本人の疾病に対し、初期に適切な説明と今後のあり方が情報提供されると、障害や疾病そのものに対する不安が軽減すると考えられる。一方、中年期以降の中途視覚障害者全般の障害受容に関する研究は内外ともに少なく、その援助方法は確立されていない。そのため、視覚障害者が受障後、障害を受け入れていくためにどのような心理的な変化が起こるのか、どのように障害を捉えていくのかなど、その障害受容過程を明らかにすることに重点を置いてきた。
    本研究は、中途視覚障害者の障害に対する価値の転換過程を質的研究方法論の修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて理論化することを目的としている。
    [方法]データの収集は、A眼科クリニックを受診した14名(男性7名、女性7名)に対し、半構造化面接調査法で実施した。方法は、半構造化面接調査法で実施した。いずれも視覚障害を原因とした身体障害者手帳を所持する者および、手帳取得に該当する者であった。なお対象者には、眼科クリニックに来院した際に、本調査の説明を十分に行い、実施について同意を得た。
    [結果と考察] 分析ワークシートを用いて、今のところ、障害を恥と思うというコアカテゴリーを中心に以下の6つのカテゴリーが抽出できた。_丸1_告知された瞬間の落ち込み、_丸2_障害を恥と思う、_丸3_きっかけ、_丸4_周囲の手助け、_丸5_価値の転換、_丸6_生活を再構築していこうとする、が中途視覚障害者の障害受容に深くかかわっており、生活を再構築していく上での影響力のある力となっていた。
  • 画像処理ソフトウェアを使用した見え方の客観化
    山本 百合子
    セッションID: PV-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    目的: これまでの研究で、どの視力であれば、どの大きさの文字が、どの距離から見えるか、視力と距離、読める臨界文字サイズの関係が分かっている。しかし、これは文字だけに関してであり、イラストレーションや写真、その他デザインで使用される複雑な要素には対 応できない。画像処理ソフトウェア,Adobe PhotoshopCSには ぼかしツールが搭載されており、ガウス値を調整して、画像を劣化 させることによって、見えにくい状態の画像を作ることができる。 これを利用して、見えにくさの客観化を試みた。 方法:MNReadで様々な大きさの文字サンプルを作り、AdobePhotoshopCSでぼかし加工を行う画像処理をした。サンプルを段階的な強さでぼかし、その文字サンプルがPCディスプレイ上で概ね見えなくなる臨界のガウス値を調べた。 結果:臨界のガウス値は文字の大きさに正比例していることが分かった。 結論と考察:このガウス値をこれまで分かっている距離と視力と臨界文字サイズの表と組み合わせた。この表からは、ある視力である距離で見た時の見えにくさを再現するガウス値が分かる。 この数値を利用すると、文字だけでなく写真やイラストレーション なども含む一般的な印刷原稿を、画像処理ソフトウェアに読み込 み、ぼかし処理をすることによって、該当している視力、距離での 見えにくさを概ね、再現できることになる。この方法は非常に簡便 であり、ロービジョン者にも見易いデザイン制作の鍵になる。
  • 高戸 仁郎, 武田 真澄, 中村 孝文, 田内 雅規
    セッションID: PV-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】視覚障害者の安全な道路横断のためには,横断前に正確な方向を知ることが求められる.しかし,我が国においてはそのための有効な手掛かりが十分ではない.現在諸外国では,音響信号機の押しボタン箱に触知表示を設置して,視覚障害者に横断方向を示す方法が用いられている.しかし、現在のところこれらの触知標示も十分な手掛かりとなる保障はなく,我が国で普及を図る前に最適な形状に統一されることが望ましい.そこで,本研究では触知標示の長さが方向定位の精度に及ぼす影響を検討した.
    【方法】被験者は視覚障害者10名(全盲者2名,弱視者8名)とした.実験に際して内容を十分に説明した上で同意を得た.室内に幅3m×長さ9mの歩行路を設置し,歩行路の手前に高さ85cmの台を置き,その上に触知標示を進行方向に向けて水平に設置した.触知標示は断面が正方形(5mm×5mm)のアクリル棒で,長さは4種類(15, 60, 100, 200mm)とした.被験者はスタート地点で,進行方向に対して0, 45, 90度のいずれかの角度で立ち,実験者の合図で標示を右手で触り,方向定位後に歩行した.全試行で歩行軌跡を記録し,各試行後に方向定位した際の確信の度合いを聞きとった.試行は各条件で5回ずつ行った.方向定位に要した時間,歩行路から逸脱することなく歩行した割合(到達率),歩行開始時の偏軌量,及び方向定位時の確信度などを算出し評価した.
    【結果と考察】方向定位に要した時間は,長さ15mmが9.9±5.6秒と最も長く,その他の3種類はほぼ同じであった.歩行路終点(9m地点)の到達率は,15mmで45%,60mmで43%,100mmで54%,200mmで71%であった.また,歩行路前半部における歩行路中心からの偏軌量と到達率には相関がみられ,歩行路後半の到達率は前半の偏軌を反映していると考えられた.
    【結論】道路横断前の方向定位の手がかりとして触知標示を利用する場合,方向定位時の確信の度合及び定位精度の観点から,少なくとも100mm以上の長さが必要と考えられた.
  • ~デイサービス「サポーター・ミズキ」の取組みを通して~
    内田 教子
    セッションID: PV-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    【背景及び目的】
    介護保険のデイサービスは、介護を要する高齢者の日常生活のケアと自立に向けた機能訓練を行う役割がある。高齢視覚障害者は、視覚障害特性のため、一人で飲食するには不便な事が多い。今回デイサービス「サポーター・ミズキ」における、高齢視覚障害者が食事をしやすくするための取組みと効果が見られた事例を通して、高齢視覚障害者への飲食に関するケアと機能訓練について考察したので報告する。
    【サポーター・ミズキでの取組み内容】
    (1)設備上の配慮:席や食器などの配置を覚えやすくするために、定位置に設置。こぼれにくい形と色彩のコントラストがはっきりした食器を選択。
    (2)職員の接し方の配慮:飲食物の配置や熱さなどをわかりやすく伝達し、手に取りやすく誘導。食べ終わった食器の除去など、配置の変化をその都度、事前に伝達。
    (3)食事訓練内容の配慮:味わう楽しさを増やすために、複数の食器を使用。
    【事例】
    (1)食器に残るご飯などが少なくなった。
    (2)食前のケアだけで、最後まで一人で食べる事ができるようになった。
    (3)丼にご飯と全ての副菜をまとめて入れて食べていた方が、別々な食器に分けた副菜を一つ一つ味わいながら食べるようになった。
    【考察】
    今回の取組みにより、高齢視覚障害者に自分で飲食する行為が増え、飲食を楽しむなど生活が広がる事例が見られた。高齢視覚障害者に対するデイサービスの役割を充実させるためには、視覚障害特性に配慮することが必要であると考えられた。
    今後、高齢視覚障害者への飲食以外のケアや機能訓練を、どのように充実させていくのかが課題である。
  • 宮地 泰造, 渡辺 慎也, 高野 純
    セッションID: PV-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/17
    会議録・要旨集 フリー
    1. 目的
    日本の弱視者は約19万人(H17年度)で、加齢による低視力者は約100万人とも言われている。弱視者は携帯電話の小画面では情報入手が困難で、20インチの画面でも読み速度が低下する。本稿では、机上及び移動中に情報を得る為の横3画面のHMDを試作し、読み速度の改善度と日常生活での要求収集を行った。

    2. 3画面HMDシステムの特徴
    50cm前に10インチの表示画面を横に3個分繋ぐHMDによる画面表示装置は、次の特徴がある。
    (1)単眼HMD3台分の画面により、情報量を増やす
    (2)繋がりのある文章を表示する
    (3)単眼HMDから目を外せば、街から疎外されない

    3. 実験
    実験装置:HMD(Scopo三菱電機製)3台を横に配置した装置
    実験方法:被験者が、表示装置内の説明文を読み、読み速度を測定し、装置への要求を出す。
    被験者:15人
    (1)表示方法
    ・文字の大きさを135ptとし、1行に5文字表示する
    ・一画面に、1行、2行、3行の3種類を表示する
    (2)HMDの台数1~3台

    4. 評価とアンケート調査の結果
    (1)時間測定:8人の清眼者の読む時間は、3画面は1画面に比較して13.3%の高速化が図れた。一度に得られる情報が多い為、1人を除いた被験者で有効が確認できた。
    (2)弱視者被験者:1人[視力約0.04]
    求心性視野狭窄の為、HMD1台1行表示
    読み取り時間:446[s](7’44’32[min])
    (3)6名の弱視者:HMD3画面3行表示。2名は清眼者と同程度の速度で、3名は約1/10程度の読み速度だった。1名は視野狭窄の為、1画面1行表示、3文字/画面が最適であった。

    5.結論
    50cm前10インチ×3画面により1名を除く被験者全員が、1~3画面を効率的に使い、読書できた。中途弱視者2名は、清眼者と同程度に速く読めた。デジカメの拡大画像も視認でき、外出時や遠景の拡大鏡の役割も確認できた。
feedback
Top