日本レーザー医学会誌
Online ISSN : 1881-1639
Print ISSN : 0288-6200
ISSN-L : 0288-6200
原著
インドシアニングリーン(ICG)の光照射による一重項酸素発生と組織障害性
平野 達河野 栄治郷渡 有子尾花 明
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 28 巻 2 号 p. 122-128

詳細
抄録

インドシアニングリーン(ICG)は波長600nmから800nmを越す広い波長範囲で光を吸収し,最大吸収波長の800nm付近の光の照射により,眼科での蛍光眼底造影検査,発熱を利用した色素増強光凝固が行われている.ICGの光照射により得られる効果については不明な点が多く,これを明らかにするためにICG照射時に発生する一重項酸素を高感度な近赤外光検出装置を用いて測定した.更にマウスに作成したHeLa腫瘍にICG(40mg/kg)を局注して,波長635nm, 670nm, 823 nmのレーザー光をパワー密度100 mW/cm2,エネルギー密度100 J/cm2で照射し,組織の障害性を検討した.
光照射によりICGの溶液からは1270nmのスペクトルが検出され,アジ化ナトリウムを添加すると濃度依存的にその強度が減少した.これによりICGの光照射により一重項酸素が発生することが確認された.マウスのHeLa腫瘍の照射では635nm,670nmではPDT同様の腫瘍壊死や血管障害が認められたが,823nmの照射ではこれよりもはるかに大きな障害が認められ,これはPDTの効果に熱効果が加わってもたらされたものと理解された.眼科でのICGを用いる蛍光眼底造影検査では,血管閉塞をおこさないように,過剰な光照射は避けることが望まれる.

著者関連情報
© 2007 特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top