日本レーザー医学会誌
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会告
第44回 日本レーザー医学会総会賞受賞論文
総説
  • 歌 大介, 石橋 直也
    原稿種別: 第44回 日本レーザー医学会総会賞受賞論文
    2024 年 45 巻 2 号 p. 67-74
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/03
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    低出力レーザー治療(low level laser therapy: LLLT)は,筋肉や関節の慢性非感染性炎症に起因する痛みを緩和するために用いられている.LLLTの課題のひとつに,作用機序の一貫した理解がまだ得られていないことが挙げられる.脊髄後角は,感覚信号(痛み,触覚など)が密に伝達される重要な部位であり,LLLTの鎮痛メカニズムを理解する上で重要な研究領域の一つである.しかし,LLLTの鎮痛作用を定量的・客観的に評価可能な実験系が十分に確立されているとは言い難い.本研究では,動物を用いた電気生理学的解析の確立を行った.その結果,坐骨神経へのレーザー照射15分後においてvon Frey filaments(vFF,特に26.0 g)誘発の脊髄後角表層ニューロンの発火頻度は選択的に抑制された.しかし,深部脊髄後角ニューロンのvFF誘発発火頻度は,いずれのvFFにおいてもレーザー照射後に変化しなかった.偽照射では発火頻度に変化は見られなかった.この結果は,レーザー照射が痛みによって誘発されるニューロンの発火を選択的に抑制することを示唆している.このことは,痛みを伝達するAδ線維とC線維のどちらか一方,あるいは両方における神経活動の抑制を示唆している.結論として,レーザー照射が坐骨神経に及ぼす影響と,その結果生じる脊髄後角ニューロンの機械的皮膚刺激により誘発される発火頻度について,in vivo細胞外記録を用いた電気生理学的解析を確立することができた.

光免疫療法
総説
原著
総説
  • 牧野 琢丸
    原稿種別: 総説
    2024 年 45 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/03
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    光免疫療法は既存の治療である手術,化学療法,放射線治療とは異なる治療であり,治療による有害事象もまた異なる.有害事象としては疼痛,光線過敏症,近接臓器への影響,出血,気道浮腫が挙げられる.有害事象によって患者が本治療を断念することは残念であり,効果が期待される本治療がさらに発展・普及していくためにも,より良い有害事象の管理を行うことは重要である.

  • 岡本 伊作
    原稿種別: 総説
    2024 年 45 巻 2 号 p. 96-104
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/06/14
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    頭頸部領域は咀嚼・嚥下・呼吸・発声など患者のQuality of Life(QOL)に関与する重要な器官を有している.これらの領域に生じた頭頸部癌の局所制御はQOLの維持だけでなく,生存期間の延長にもつながる.さらに整容面においても多大な影響を及ぼす.局所制御が困難な場合はQOLが低下する可能性がある.我々の施設では,頭頸部アルミノックス治療によるQOL評価について後方視的研究を行った.本稿では,この研究の解説と我々の経験した症例を提示しながら,頭頸部アルミノックス治療によるQOLの影響について解説する.頭頸部アルミノックス治療を施行した9名の患者では,全てのQOL評価項目において,治療前後で有意な変動はみられなかった.切除不能な頭頸部癌に対して,頭頸部アルミノックス治療はQOLが低下せず,良好な局所制御率が見込める治療であった.また,安全性に関しても許容できる結果であった.頭頸部アルミノックス治療という選択肢を積極的に使っていくことで,頭頸部癌の生存期間の延長につながる可能性がある.

解説
  • 鈴木 崇祥
    原稿種別: 解説
    2024 年 45 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/03
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    光免疫療法は赤色光によって活性化される特殊な分子標的薬を腫瘍細胞の細胞膜に選択的に結合させ,標的病変に赤色光を照射して腫瘍細胞の細胞膜の破壊と細胞死を誘導する治療法である.その治療特性上,病変に対して適切に赤色光照射が重要であり,赤色光および照射デバイスの特性を十分に理解した上で赤色光照射戦略を立案することが求められる.本稿では,赤色光照射デバイスの種類およびその特性,赤色光照射における課題について述べる.また,光免疫療法専用治療計画・シミュレーションソフトウェアの開発,手術支援ナビゲーションシステムの応用,高精度赤色光照射を可能にする穿刺ガイドプレートの制作等,適切な赤色光照射のための当院の取り組みについても併せて紹介する.

LED技術が拓く光線医療
総説
  • 西舘 泉
    原稿種別: 総説
    2024 年 45 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/11
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    拡散光を利用したイメージングでは,丸ごとの生体や生きた臓器の吸光・散乱情報を抽出することで生体機能を評価することができる.中でも,白色LED光源とRGBカラービデオカメラを用いたイメージングは簡易・安価な計測システムで構築可能であり,硬性内視鏡イメージングシステムをはじめとした医療画像診断支援への展開も容易である.本稿では,標準的な硬性内視鏡イメージングシステムに搭載されているRGBカラービデオカメラと白色LED光源を用いて,腹腔内臓器の血行動態の時空間的変化を定量的にイメージングする方式について,著者らの研究結果の一端について述べる.

  • 西沢 望
    原稿種別: 総説
    2024 年 45 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/03
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    円偏光を生体組織に照射すると内部で散乱が生じ,偏光状態が徐々に緩和し,散乱光として外部に放出される.散乱光の偏光状態は散乱体の構造に関する情報,すなわち散乱体の大きさ,分布,異方性や密度などの情報をもたらす.散乱による偏光解消は波長と散乱粒子径に強く依存することから,波長を適切に選ぶことによって細胞核のサイズ変化,すなわち細胞核異型を検知することができ,これはがん検出やがん組織の分布評価などに応用が可能である.本論文では,この技術の物理的原理,実験とシミュレーションを通したがん検出の実証,さらに早期胃がんの深達度計測や早期スキルス胃がん検出などについて紹介する.また,本技術を実装するデバイス開発として円偏光LEDについても紹介する.

原著
総説
  • 阿賀野 俊孝, 粟津 邦男
    原稿種別: 総説
    2024 年 45 巻 2 号 p. 136-145
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/05
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    光音響イメージングは次世代の診断モダリティとして期待されている.しかし,光源として固体レーザー(solid-state-laser: SSL)を用いたシステムは高価でサイズが大きく,検出プローブの操作性も悪く保護メガネを必要とする.そこで我々は光源としてLEDを採用し,4つの技術により信号対雑音比(signal-to-noise-ratio: SNR)がSSLの230万分の1だったものを同等レベルまで改善した.これらの技術は,a)高出力・高密度LEDアレイ化技術,b)巨大かつ超短パルスLED駆動回路技術,c)超音波プローブの周波数応答特性に最適な光パルス発生技術,d)超増幅による微弱信号のノイズ低減技術であり,これらによりLEDを用いた光音響イメージングを実現した.イメージングシステムとしては80 dBを超える信号増幅が必要で,また生体ファントムを使用したリアルタイムイメージングには4以上のSNRが必要だということを明らかにした.さらに,820 nmと940 nmの二波長のLEDを使用して臨床的に使用できるリアルタイム機能イメージングが実現できることを明らかにした.

解説
  • 呉屋 剛
    原稿種別: 解説
    2024 年 45 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/10
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    水・酸素に強い逆積層構造有機ELは,その構成中の保護・バリア層を簡略化できるため,有機ELデバイスの総膜厚を紙より薄くすることが可能であり,またプロセスの簡略化のため,低コスト化が期待されている.日本触媒では,その薄さ及びそこから生まれるフレキシビリティを大きな強みと捉え,開発品名『iOLED®フィルム光源』として上市に向けた取り組みを進めている.『iOLED®フィルム光源』は,0.07 mmという業界最高クラスの薄さを実現し,フレキシビリティに優れ,様々な曲面に沿う特徴を有している.例えば,肌に直接貼る,棒状のものに巻きつける等,これまでの有機ELでは適用の難しかった場所・場面での活用が可能であり,医療分野におけるアプリケーションにも親和性が高いと考えている.本稿では,有機ELの背景や課題,『iOLED®フィルム光源』の技術的特徴,アプリケーション例に関して解説する.

総説
  • 下条 裕, 寺西 梨絵, 西村 隆宏, 桒田 健二, 呉屋 剛, 森井 克行, 鶴田 大輔, 小澤 俊幸
    原稿種別: 総説
    2024 年 45 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/04
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    光線力学治療(photodynamic therapy: PDT)は,多剤耐性菌を生じないモダリティとして,多剤耐性菌感染皮膚潰瘍の治療への応用が期待されている.我々は,在宅での感染皮膚潰瘍のPDTに,ポータブルでディスポーザブルな有機発光ダイオード(organic light-emitting diode: OLED)を光源として使用することを目的に研究を行っている.OLEDは,フレキシブルな面発光源であるため,皮膚に貼り付けて広範囲を均一に光照射できる利点がある.しかし,OLEDは従来の比較的大型なPDT光源より発光強度が低いため,照射条件の違いによる効果の差異を評価する必要があった.本稿では,低輝度・長時間照射によるPDTの殺菌効果と抗腫瘍効果を従来のPDTと比較して解説する.さらに,照射デバイスの開発動向について議論し,5-アミノレブリン酸を用いたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌と緑膿菌に対するOLEDを用いた低輝度・長時間照射のPDTを紹介する.

  • 南川 丈夫
    原稿種別: 総説
    2024 年 45 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/10
    ジャーナル フリー HTML

    本総説では,病原微生物の有効な予防策の一つとして注目されている深紫外光を用いた病原微生物の不活化法について概説する.特に,細菌やウイルスを取り上げ,その不活化メカニズムや不活化を評価する上で心がけるポイントについて示す.さらに,深紫外光の中でも特に近年注目を集めている深紫外LEDを用いた実際の不活化効果についても紹介する.

  • 角井 泰之
    原稿種別: 総説
    2024 年 45 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/12
    ジャーナル フリー HTML

    皮膚が広範囲に不可逆的な損傷を受けると,移植による治療が必要である.血管網を含む培養皮膚は,移植後早期に血流再開が得られ,新たな移植用皮膚として有望である.しかし,厚い皮膚には培地が供給されにくく,培養中に活性が低下してしまう.この問題を解決するために,我々はphotobiomodulation(PBM)を応用することにした.本稿では,我々が開発を進めている培養皮膚モデルについて紹介し,そのうえで発光ダイオード(light-emitting diode: LED)アレイを用いたPBMによる培養皮膚の活性化の検討について解説する.

皮膚科・形成外科における色素性病変に対するレーザー治療の新しい取り組み
総説
原著
  • 余川 陽子, 髙倉 真由佳, 宮脇 剛司
    原稿種別: 原著
    2024 年 45 巻 2 号 p. 188-194
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/04
    ジャーナル フリー HTML

    先天性色素性母斑に対するレーザー治療としてロングパルスレーザーを用いて表皮剥離を施行した後にQスイッチルビーレーザーを照射する複合レーザー治療が報告されている.その考えに基づき,背部の大型で切除困難な症例に対して外科手技(切除と皮膚剥削術)とレーザー治療を一期的に行い,良好な経過を得た.皮膚剥削術の利点を生かすために早期に治療を開始しており,その結果,母斑面積の縮小と集団生活前の色調の改善が得られている.

  • 大城 貴史, 佐々木 克已, 大城 俊夫
    原稿種別: 原著
    2024 年 45 巻 2 号 p. 195-203
    発行日: 2024/07/15
    公開日: 2024/07/23
    [早期公開] 公開日: 2024/07/11
    ジャーナル フリー HTML

    1980年代のパルスレーザーによる選択的組織破壊(選択的光熱融解)の理論確立により,皮膚領域のレーザー治療は治療手技の一つとして認知されてきた.今や太田母斑,異所性蒙古斑といったいわゆる青あざ(真皮メラノサイトーシス)に対してはナノ秒Qスイッチレーザー治療が第一選択になってきている.2013年以降,ピコ秒レベルの照射を可能にした超短パルスレーザーが使用できるようになり,多色彫りや治療抵抗性の刺青に対しての安全性の高い有効な治療として報告され,その後皮膚良性色素性病変に対しての臨床使用も進んできた.ピコ秒レーザーによる生体作用は,これまでのパルスレーザーによる光熱的作用ではなく,光機械的作用と呼ばれている.当院では2013年12月より新型ピコ秒レーザーを導入し,当初刺青を中心に臨床使用を開始した.刺青治療の良好な臨床成績の経験から,その後は各種母斑,加齢性色素性疾患などの良性色素性病変などへ臨床使用を拡大してきた.今回,我々の10年間のピコ秒レーザーによる治療を振り返り,太田母斑,異所性蒙古斑,蒙古斑のいわゆる真皮メラノサイトーシスに対してのピコ秒レーザー治療について,各種ピコ秒レーザーの照射の実際,ナノ秒レーザー治療との比較および考察を行った.真皮メラノサイトーシスに対するピコ秒レーザーでは我々東洋人の皮膚に対するレーザー治療の新たな方向性が見い出されている.今後の臨床研究の展開に期待したい.

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