2018 Volume 39 Issue 1 Pages 1-10
LED(Light-Emitting Diode,発光ダイオード)照射による糖尿病に対する効果を,自然発症の2型糖尿病モデルラットであるGK(非肥満),Zucker(肥満)ラットおよびstreptozotocin誘発糖尿病ラット(STZ,1型糖尿病モデル)の血液生化学値および炎症性サイトカインに対する影響を検討した.動物は1群7匹とし,GK,ZukerおよびSTZラットを非照射群とLED照射群に分け,LED群には,波長850 nm,総照射エネルギー密度10 J/cm2,照射時間8分20秒とし1週間に3回,12週間腹部消化管部位に照射した.血清中のグルコース,総コレステロール,トリグリセリド,インスリン,炎症性サイトカインはTNF-α,IL1-βおよびIL-6を測定した.ZukerのLED照射群は,非照射群と比較して体重の減少を認めた.GK,ZukerおよびSTZのLED照射群は,非照射群に比べ血中のグルコース,コレステロール濃度の上昇を軽度に抑制した.ZukerのLED照射群は,非照射群に比べ血中TNF-α,IL1-βおよびIL-6濃度の上昇を有意(5.1 ± 1.1 vs. 3.8 ± 0.6, P < 0.05; 43.6 ± 8.8 vs. 29.8 ± 5.4, P < 0.05; 98.3 ± 15.8 vs. 68.1 ± 13.7, P < 0.01)に低下させた.LED照射は,肥満を伴う2型糖尿病モデルラットのZukerによって,過剰に産生される血中炎症性サイトカイン濃度を抑制した.
糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病に分類され,1型糖尿病は膵臓のβ細胞破壊によるインスリン分泌不全を病因とし,2型糖尿病は膵臓からのインスリン分泌不足,あるいは肥満などによるインスリン抵抗性が原因である.我が国の糖尿病患者の内,90%が2型糖尿病であり,その約40%が肥満に起因するインスリン抵抗性により発症する1).2型糖尿病発症の肥満患者の脂肪組織内には,炎症性細胞の浸潤が多数認められ,マクロファージにより産生されたTNF-αおよびIL-6などの炎症性サイトカインは,脂肪細胞に作用してグルコース取り込み能力を低下させ,インスリン抵抗性を誘発して糖尿病発症リスクを増加させる2-7).
一方,レーザー照射による抗炎症作用に関しては,我々はこれまでにIn vitroの実験系で,関節リウマチ患者由来の膝滑膜細胞にTNF-α,IL1-βを作用させ,その増殖,血管新生,骨・軟骨破壊に関与するといわれているキモカインIL-8の産生を,レーザー照射によって抑制したことを報告した.さらに,膝滑膜細胞からmRNAを回収し,抗炎症作用に関与する遺伝子発現の情報伝達系を検索した結果,TNF-α,IL1-β刺激細胞は多数の遺伝子発現を変動させ,その中には,炎症性サイトカイン,キモカイン,炎症系転写因子が含まれ,レーザー照射によって,これらの炎症促進に関与するNF-κBシグナル系,apoptosisシグナル系,cytokineシグナル系の遺伝子群のmRNAレベルを低下させることを明らかにした8-10).また,低出力レーザー(LLL)およびLEDの光線照射が,ヒト関節リウマチ動物モデルであるcollagen誘発性関節炎モデルラットの大腿骨・踵骨海綿骨領域の炎症性サイトカインの遺伝子の発現を抑制して,骨吸収・破壊を抑制したことを報告した11-14).さらに,ヒト歯肉線維芽細胞を用いたin vitroの実験でも,LPS刺激で上昇した炎症性サイトカインであるPGE2,IL-1βおよびPA産生量をいずれもLED照射により抑制した15-17).
近年,Kawanoらは肥満による糖尿病の発症には,脂肪組織,特に腹部内臓脂肪での慢性炎症が大きく影響していることを明らかにした.すなわち,マウスに60%高脂肪食を摂取させると,マクロファージの集積を促すCcl2の産生が増加し,腹部脂肪細胞にマクロファージが集積することで,大腸に慢性炎症を誘発する.これに対して,Ccl2欠損モデルマウスを用い,大腸の慢性炎症を抑制するとインスリン抵抗性が改善し,血糖値上昇を30%抑制することを報告した18).したがって,肥満によってインスリン抵抗性発症の原因が,腹部の脂肪細胞から炎症性サイトカインが産生するという,新しい糖尿病の発症メカニズムを解明したもので,肥満になっても腹部での炎症反応を抑制すれば糖尿病になりにくい可能性が推察される.これまでに,肥満を伴う糖尿病に対するin vivoの動物実験は数少なく,その作用機序については十分に解明されておらず,詳細な基礎的研究が求められている.
本研究では,炎症部位へのLED照射により,炎症性サイトカイン発現の減少と抗炎症作用が報告されていることから,ヒトの糖尿病と臨床的および病理的にも類似した,自然発症の2型糖尿病モデルラットであるGK(非肥満)19,20),Zucker(肥満)ラット21,22)および1型糖尿病モデルラットであるstreptozotocin誘発糖尿病(STZ)ラット23)を用いて,腹部の皮下脂肪組織にLEDを照射して,体重変化,血液生化学値および血中の炎症性サイトカインを測定して,糖尿病に対する有効性を評価した.
実験動物は,7週齢のGK/Crlj系雄性ラット(非肥満型,自然発症2型糖尿病モデルラット),8週齢のZucker(fa/fa)系雄性ラット(肥満型,自然発症2型糖尿病モデルラット)および7週齢のSD系雄性ラット{(SPF特定病原体除去動物)}はいずれも静岡実験動物(静岡)より購入した.飼育は室温23 ± 1°C,湿度60 ± 10%,12時間ごとの明暗サイクルの環境下で,飼料は固形飼料(MF®,オリエンタル酵母工業株式会社),飲料水は濾過水道水をそれぞれ自由摂取させた.1週間予備飼育した後,一般状態の観察および体重測定を行い,順調に発育した動物を使用した.なお,本実験は日本大学松戸歯学部実験動物倫理委員会の承認(承認番号04-0034)を得,日本大学松戸歯学部実験動物指針に基づいて行った.
2.2 STZ誘発1型糖尿病発症ラット(STZラット)の作製SD系雄性ラットに,streptozotocinを0.1 Mクエン酸緩衝液に溶解して30 mg/kgの用量で頸静脈内投与した.STZ投与2日後から2週間持続して血清中グルコース濃度300 mg/dl以上および尿糖陽性で糖尿病発症を確認したSTZラットとして,LED非照射群とLED照射群に分け実験に供した.STZラットは,STZが膵β細胞を選択的に破壊し,インスリン分泌量の低下した実験的1型糖尿病モデルラット24,25)である.
2.3 LEDの照射条件発光ダイオード(LED, EPITEX INK製)は,光源L850-03UP(直径5 mm,高さ8.25 mm,波長850 nm)を直径90 mm円盤に対して放射状に100個セットし,直流安定化電源装置(Kenwood®, PA18-3A YF)へ繋ぎ,発光性能を確認した後,プラスチック製のディスポシャーレ(直径φ140 mm)の底に固定して使用した.LED照射ビームとラット腹部消化管の距離は5 mm,照射エリアはラット腹部を中心にして直径12 cmの均一な照射野,照射時間は500秒,総照射エネルギー密度は10 J/cm2の条件で行った.レーザー照射期間を12週間として,無麻酔下でラット腹部消化管を中心に1週間に3回,合計36回照射した(Fig. 1A, B).
(A): Light emitting diode (LED) irradition system. (A)-①: LED light source. (B): LED irradiation system image. Photograph of LED irradiation in GK rat.
赤外線サーモグラフィー(Infrared Thermograph, ITh)は,TH9100MR(NEC三栄株式会社)を用いて,ラットとIThの距離は常に一定(30 cm)に保ち,IThの温度設定を上限閾値40.0°C,下限閾値28.0°Cにして腹部消化管の皮膚温度を擬似カラーで画像化した.測定は2週間に1回,腹部のa点およびb点で表示された領域を腹部消化管の平均皮膚温度とした.ただし,測定はLED照射30分後に行い,測定場所は25 ± 1°Cで無風状態の室内で行った(Fig. 2A, B).
(A): Photograph of LED irradiation in GK and Zuker rats. (B): Thermographic images of abdominal digestive tract in rats at 2 weeks using infrared thermography.
採血は,1週間に1回外頚静脈から1.0 ml採取し,採取直後血液を遠沈管に注入し,室温で30分放置した後,1,500 × g,15分間の遠心分離を行い,得られた血清について血清中グルコース,総コレステロールおよびトリグリセリド濃度はいずれも酵素法(テスト-ワコー,和光純薬工業株式会社)により測定した.血中インスリン値は,モリナガラットインスリン測定キット(森永生科学研究所)により,炎症性サイトカインのTNF-α,IL-1βおよびIL-6濃度は,LED照射12週目にELISA kit(R&D System)を用いて測定した.
2.6 実験方法GK,Zuckerラットは1群7匹としそれぞれ2群に分け,非照射(対照群),LED照射群とし,1週間に3回12週間LED照射した.STZラットは1群7匹とし3群に分け,第1群はSTZ非投与SD系ラット,第2,3群はSTZ誘発糖尿病群で,第2は非照射(対照群),第3はLED照射群とした.全ての動物はあらかじめ腹部消化管部位を完全に剃毛を施し,LED光線が腹部脂肪および膵臓周辺を中心に照射するようにした.実験期間中は,動物の一般状態を観察し,毎日飼料摂取量および飲水量,週1回体重,血清中グルコース,総コレステロールおよびトリグリセリドを測定した.
2.7 統計学的処理実験結果は,平均値 ± 標準偏差(Mean ± SD)で示した.各群間の比較はF-検定により等分散性を検定した後,対照群との有意差をStudentのt-検定あるいはWelchのt-検定により有意差検定を行った.危険率5%未満(P < 0.05)を統計学的に有意な変化として判定した.
実験期間中の体重変化は,Fig. 3に示した.GK群およびZuker群ともに実験開始から実験終了時まで,順調な体重増加曲線を示した.GK群では,非照射群とLED照射群との間には,有意の差は認められなかった.しかし,Zuker群の12週目(最終体重)では,非照射群とLED照射群は,それぞれ706 ± 83 g,610 ± 65 g(P < 0.05)を示し,LED照射群で有意な体重減少を示した.STZ群では,SD群と比較するとSTZ投与直後から体重の減少は認められ,12週目ではSD群,非照射群およびLED照射群は,それぞれ478 ± 58 g,352 ± 47 g(SD vs. P < 0.001),360 ± 43 g(SD vs. P < 0.001)を示し,有意な減少を示した.ただし,STZ群の非照射群とLED照射群の間には,有意の差は認められなかった.
Effects of LED irradiation on body weight in GK, Zucker and streptozotocin-induced diabetic (STZ) rats. Data were shown as the mean ± S.D. of 7 animals in each group. *: P < 0.05 vs. no irradiation group.
実験期間中の各群の平均飲水量および飼料摂取量,飼料効率(体重増加/飼料摂取量)をTable 1に示した.ZukerおよびSTZ群ともに非照射群とLED照射群の間には,有意の差は認められなかった.ただし,飼料効率に関しては,Zuker群において非照射群とLED照射群は,それぞれ14.8 ± 3.1 g,11.3 ± 2.4 g(P < 0.05)を示し,LED照射群で有意な減少を示した.SD群とSTZ群の間は,飼料摂取量では約2倍,飲水量は約7倍とSTZ群で有意(P < 0.001)な増加を示し,飼料効率は5分1に減少した.
Group | Drinking water intake (g/day/rat) | Food consumption (g/day/rat) | Food efficiency ratio (g/day/rat) | |
---|---|---|---|---|
GK | control | 15.2 ± 3.2 | 12.2 ± 3.4 | 12.6 ± 2.3 |
LED | 18.7 ± 4.5 | 13.0 ± 4.8 | 11.0 ± 1.9 | |
Zuker | control | 33.8 ± 6.8 | 26.8 ± 5.6 | 14.8 ± 3.1 |
LED | 31.1 ± 7.1 | 25.9 ± 6.8 | 11.3 ± 2.4* | |
SD | Control | 17.8 ± 3.9 | 14.3 ± 3.8 | 15.4 ± 3.3 |
STZ | 96.7 ± 23.8 | 26.8 ± 4.7 | 3.0 ± 2.1 | |
STZ + LED | 92.2 ± 28.7 | 25.3 ± 5.1 | 3.6 ± 1.8 |
Data were shown as the mean ± S.D. of 7 animals in each group.
*: P < 0.05, vs. no irradiation group (control).
Fig. 2Bに,2週目のGKおよびZuker群のLED照射によるラット腹部のIThによる熱画像を示した.温度分布の表示画像より,GK,ZukerおよびSTZ群ともに非照射群とLED照射群を比較すると(31.3 ± 3.2 vs. 36.6 ± 4.5, P < 0.05; 31.0 ± 3.3 vs. 35.9 ± 4.0, P < 0.05; 30.7 ± 3.8 vs. 36.2 ± 3.3°C, P < 0.05),いずれもLED照射群は,非照射群と比較すると,腹部皮膚温度の有意な上昇を示した(Table 2).
Group | Abdominal digestive tract Temperature (°C) | |
---|---|---|
GK | control | 31.3 ± 3.2 |
LED | 36.6 ± 4.5* | |
Zuker | control | 31.0 ± 3.3 |
LED | 35.9 ± 4.0* | |
STZ | SD | 32.4 ± 3.1 |
control | 30.7 ± 3.8 | |
LED | 36.2 ± 3.3* |
Data were shown as the mean ± S.D. of 7 animals in each group.
*: P < 0.05, vs. no irradiation group (control).
実験期間中の血中グルコース濃度の推移をFig. 4に示した.12週目のGK群では,非照射群およびLED照射群でそれぞれ282.4 ± 38.1,233.7 ± 34.1 mg/dl(P < 0.05)を示し,LED照射群は有意な減少を示した.Zuker群では,非照射群およびLED照射群でそれぞれ168.3 ± 28.3,135.2 ± 19.6(P < 0.05)を示し,LED照射群において有意な減少が認められた.実験開始時のSD群,STZ群の非照射群とLED照射群の血中グルコース濃度は,78.3 ± 11.2を示した.STZ投与の2日後は415.6 ± 88.2で,12週後の非照射群およびLED照射群でそれぞれ520.8 ± 138.3,480.4 ± 128.6を示した.血中総コレステロール濃度の推移は,12週目のGK群では,非照射群およびLED照射群でそれぞれ373.8 ± 40.5,312.7 ± 38.8 mg/dl(P < 0.05)を示し,LED照射群は有意な減少を示した(Fig. 5).また,Zuker群では,非照射群およびLED照射群でそれぞれ622.7 ± 73.3,603.8 ± 78.8で有意の差は認められなかった.血中トリグリセリド濃度の推移に関しては,実験期間中において全ての群で非照射群と比較してLED照射群は低下傾向を示したが,有意の差は認められなかった(Fig. 6).
Effects of LED irradiation on serum glucose levels in GK, Zuker and streptozotocin-induced diabetic (STZ) rats. Data were shown as the mean ± S.D. of 7 animals in each group. *: P < 0.05 vs. no irradiation group.
Effects of LED irradiation on serum cholesterol levels in GK, Zuker and streptozotocin-induced diabetic (STZ) rats. Data were shown as the mean ± S.D. of 7 animals in each group. *: P < 0.05 vs. no irradiation group.
Effects of LED irradiation on serum tryglyceride levels in GK, Zuker and streptozotocin-induced diabetic (STZ) rats. Data were shown as the mean ± S.D. of 7 animals in each group.
実験終了時12週目の血中インスリン濃度をTable 3に示した.GK群では,非照射群に対してLED照射群でそれぞれ6.2 ± 1.7,5.4 ± 1.3 ng/mlを示し,LED照射群は軽度な減少を示した.Zuker群では,非照射群およびLED照射群でそれぞれ11.8 ± 2.5,8.8 ± 1.6(P < 0.05)を示し,LED照射群において有意な減少が認められた.SD群,STZ群の非照射群とLED照射群に関しては,それぞれ3.0 ± 0.5 vs. 1.1 ± 0.2,P < 0.001;3.0 ± 0.5 vs. 1.4 ± 0.4,P < 0.001を示し,SD群に比較してSTZ群の非照射群とLED照射群共に有意な減少が認められた.STZ群の非照射群と比較してLED照射群は血中インスリン濃度の増加が認められた.
Group | Serum insulin (ng/ml) | |
---|---|---|
GK | control | 6.2 ± 1.7 |
LED | 5.4 ± 1.3 | |
Zuker | control | 11.8 ± 2.5 |
LED | 8.8 ± 1.6* | |
STZ | SD | 3.0 ± 0.5 |
control | 1.1 ± 0.2 | |
LED | 1.4 ± 0.4 |
Data were shown as the mean ± S.D. of 7 animals in each group.
*: P < 0.05 vs. no irradiation group.
血中TNF-α濃度は,Zuker群では非照射群およびLED照射群でそれぞれ5.1 ± 1.1,3.8 ± 0.6 pg/ml(P < 0.05)を示し,LED照射群は有意な減少を示した.また,SD群,STZ群の非照射群とLED照射群に関しては,それぞれ1.9 ± 0.3 vs. 5.8 ± 1.1,P < 0.001;1.9 ± 0.3 vs. 5.5 ± 1.4,P < 0.001を示し,SD群に比較してSTZ群の非照射群とLED照射群共に有意な上昇が認められた.ただし,STZ群の非照射群とLED照射群の間には有意の差は認められなかった.
血中IL-1β濃度は,Zuker群では非照射群およびLED照射群でそれぞれ43.6 ± 8.8,29.8 ± 5.4 pg/ml(P < 0.05)を示し,LED照射群は有意な減少を示した.血中IL-6濃度は,12週目のGK群では,非照射群およびLED照射群でそれぞれ106.5 ± 23.8,80.3 ± 12.8 pg/ml(P < 0.05)を示し,LED照射群は有意な減少を示した.Zuker群では,非照射群およびLED照射群でそれぞれ98.3 ± 15.8,68.1 ± 13.7(P < 0.01)を示し,LED照射群において有意な減少が認められた.ZukerのLED照射群は,全ての血中炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-1β, IL-6)濃度の上昇を有意に抑制した(Fig. 7).
Anti-inflammatory effects of LED irradiation on serum TNF-α, IL-1β and IL-6 levels in GK, Zuker and streptozotocin-induced diabetic (STZ) rats at 12 weeks using infrared thermography. (A): TNF-α, (B): IL-1β, (C): IL-6. Data were shown as the mean ± S.D. of 7 animals in each group. *: P < 0.05, **: P < 0.01 vs. no irradiation group (control).
2型糖尿病モデルラットはGK(非肥満)およびZucker(肥満)ラット,1型糖尿病モデルラットはSTZ誘発糖尿病ラットを用いて,腹部の皮下脂肪組織を中心にLEDを照射して,糖尿病に対する有効性を体重変化,血液生化学値および炎症性サイトカインなどで評価した.
体重に関して,Zuker群の最終体重は,非照射群とLED照射群で,それぞれ706 ± 83 g,610 ± 65 gで,LED照射群で有意な体重減少を示した.この体重の数値データを基にして,ヒトの体重に外挿すると,体重80 kgのヒトが体重69 kgに体重減少したことになる.GK群およびZucker 群共にLED照射群は飼料効率は低値を示しているが,非照射群とLED照射群の飼料摂取量には全く差は観察されなかった.また,LED照射により食欲不振や食行動の異常も示さなかったことから,LED照射群には飼料摂取量に相当する体重増加が得られなかった.1型糖尿病モデルラットのSTZラットに関しては,β細胞からのインスリン分泌量はSTZ群の非照射群1.1 ± 0.2 ng/mlに対してLED照射群1.4 ± 0.4 ng/mlと増加傾向が認められ,LED照射により膵島β細胞の機能が改善したことが考えられる.その結果,体重の減少が抑制され,血糖値も低下したことが推察される.
IThによる腹部皮膚温度に関して,GK,ZuckerおよびSTZ群の非照射群とLED照射群を比較すると,有意(P < 0.05)の差でLED照射群に腹部皮膚温度の上昇が認められた.IThは,生体から放射される熱エネルギーを皮膚表面温度として表示し,各種表在性急性炎症,血行障害,慢性疼痛,炎症,腫瘍など生体表面温度に影響を及ぼす疾患の検査に汎用されている26).本実験において,LED照射は深部組織および腹部脂肪組織の血流量を改善した結果,腹部皮膚温度の上昇が観察された.また,LED光は直線偏光近赤外線,低出力レーザーおよび紫外線と比較すると,生体に対する傷害作用は弱いものと思われる27).
血中グルコース濃度に関しては,全ての群で非照射群と比較してLED照射群の血中グルコース濃度は低下傾向を示した.GK群およびZuker群では,LED照射8週目ごろから非照射群と比較してLED照射群の方が血中グルコース濃度の上昇を抑制する傾向を示し,両群ともに有意(P < 0.05)な減少が認められた.GKラットは,Wistarラットから選択交配によって確立された自然発症の非肥満糖尿病モデル動物で,生後8–10週で糖尿病を発症し,膵インスリン分泌異常とインスリン抵抗性を持つ2型糖尿病モデルである19).
本実験でも,同週齢のWistarラットとGK群の血糖値は,それぞれ73.5 ± 15.9,282.4 ± 38.1 mg/mlを示し,GK群は高血糖の糖尿病を発症していた.また,血中インスリン値はWistarラットとGK群では,それぞれ2.5 ± 0.5,6.2 ± 1.7 pg/mlを示し,GK群は十分な量のインスリンが分泌されているにもかかわらず,標的細胞のインスリンに対する感受性が低下したインスリン抵抗性を示した.Zuckerラットは肥満を伴う2型糖尿病で,糖尿病患者の90%以上を占める2型糖尿病のモデル動物で,4週齢頃より体重の増加および外観によって肥満が認められ,10週齢頃までに急速に肥満が進行し,多食による肥満を伴い,高脂血症,高インスリン血症,高レプチン血症を呈し,空腹時血糖値は高値を示す.インスリン抵抗性は,2型糖尿病の特徴であり,糖尿病による高血糖および高インスリン血症状態の原因である28,29).
本実験で使用したZuckerラットでは,実験終了時の体重は706 ± 83 gで同週齢の正常ラットの約2倍,血中インスリン値は11.8 ± 2.5 pg/mlと正常ラットの約4倍の高値を示し,明らかに肥満を伴う,高インスリン血症を呈した.これに対して,LED照射によりGK群およびZuker群ラット共に,血中グルコース値および血中インスリン値が有意に低下することから,LED照射がインスリン抵抗性を改善させる作用を有することが示唆される.
生活習慣病および糖尿病の最大の原因は肥満であり,肥満の状態では,肥大化した内臓脂肪細胞の間にマクロファージが浸潤して慢性炎症が生じる.Hotamisligilらは,TNF-αは脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの一種で,肥満者あるいは肥満モデル動物の脂肪細胞から過剰に分泌しており,IRS-1のセリン残基をリン酸化することにより,インスリン受容体のチロシンリン酸化を低下させ,インスリン作用を阻害した結果,インスリン抵抗性を惹起することを報告した30-32).臨床データーにおいても,2型糖尿病患者の高血糖下ではマクロファージが活性化され,TNF-αやIL-6といった炎症性サイトカインを過剰に産生することが報告されている33,34).肥満者では脂肪組織由来のTNF-αやIL-6などの血中濃度が上昇しており,体重が減少に伴いその血中濃度が低下する35,36).また,肥満内臓脂肪細胞では,IL-1β37),IL-638)など複数の炎症性サイトカインの発現も上昇しており,相乗的にインスリンシグナルを抑制して,インスリン抵抗性を亢進する.本研究において,ZuckerラットのTNF-α値は,正常ラットに比較して約3倍と高値を示し,LED照射群は,非照射群と比較するとTNF-αで25 %,IL1-βで30%,IL-6で30%と有意な低下を示した.
LED39,40)およびLLL41,42)照射による抗炎症作用に関して,各種炎症モデル動物を用いて検討した結果,炎症部位で主に活性化されたマクロファージから,過剰に産生された炎症性サイトカインを,レーザー照射により抑制することが報告されている.口腔領域では,STZ糖尿病ラットの唾液腺にLLL(波長660 nm)照射すると,炎症反応の転写因子であるNF-κB経路のHMGB1/AGE/RAGE遺伝子発現の上昇を抑制し,さらに,Bax,Caspase-3活性も抑制して糖尿病誘発性のアポトーシスを減少させ,STZ糖尿病ラットの唾液分泌の減少を改善した43).
今回,ヒトの糖尿病と臨床的および病理的にも類似した,2型糖尿病モデルラットであるGK,Zuckerラットおよび1型糖尿病モデルラットであるSTZ誘発糖尿病ラットを用いて,腹部の皮下脂肪組織を中心にLEDを照射して,Zuckerラットの血中炎症性サイトカイン濃度の上昇を有意に抑制し,肥満を伴う糖尿病の改善に有効であることを明らかにした.LED照射によりZuckerラットの体重減少に関しては,腹部脂肪細胞からの炎症性サイトカイン産生の抑制作用が関与していることが推測されるが,その詳細な作用機序の解明には,今後さらなる検討を要する.
2型糖尿病モデルであるGK(非肥満)およびZucker(肥満)ラット,1型糖尿病モデルであるSTZ誘発糖尿病ラットを用いて,腹部の皮下脂肪組織を中心にLEDを照射して,糖尿病に対する有効性を体重変化,血液生化学値および炎症性サイトカインに及ぼす影響を検討して,以下の結論を得た.LED照射は肥満型自然発症2型糖尿病モデルであるZuker ラットの体重増加を抑制し,血液成分および炎症性サイトカインのTNF-,IL-1βおよびIL-6値の上昇を抑制したことから,肥満型糖尿病の改善に有効であることが示唆された.しかし,1型糖尿病モデルのSTZ誘発糖尿病ラットに対しては,体重および血液成分および炎症性サイトカインの顕著な抑制作用は認められなかった.
本研究は,JSPS科研費(基盤C)課題番号25462970の助成を得て行った.
利益相反なし.