日本レーザー医学会誌
Online ISSN : 1881-1639
Print ISSN : 0288-6200
ISSN-L : 0288-6200
総説
令和6年診療報酬改定におけるレーザー治療
土田 敬明
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2024 年 45 巻 2 号 p. 204-232

詳細
Abstract

令和6年診療報酬改定に対する日本レーザー医学会社会保険委員会の取り組みとその結果について述べる.また,現在薬機法で承認されているレーザー機器及び保険収載されているレーザー治療を表としてまとめ,その詳細について述べる.

Translated Abstract

The activities of Social Insurance Committee of the Japan Society for Laser Surgery and Medicine for medical fee revision in 2024 and the results were described. In addition, the summary of the laser equipment that have been approved by government and the present insurance coverage for laser treatment were described in detail.

はじめに

日本では,2年ごとに診療技術料の大改定が行われる.日本レーザー医学会は,レーザー技術の適正な評価と普及のために,レーザー技術に対する技術料の改定提案やレーザーを用いた技術の公的保険への新規収載の提案を行ってきた.2024年は大改定の年に該当し,日本レーザー医学会では2022年7月よりホームページ上及び保険委員会委員にご意見を募集した.この募集の経過とレーザー技術に対する診療報酬改定の結果について述べる.外科的技術に対する診療報酬改定の提案は,通常,外科系学会保険委員会連合(外保連)を通して行われる.外保連は外科系技術における診療技術料の改定提案を行っている.外保連では外保連試案として外科系技術の算定方法を提唱しており1),これを基に診療技術料の改定の提案を行っている.

また,現在薬機法で承認されているレーザー機器及び保険収載されているレーザー治療を表としてまとめ,最近承認された機器についてその詳細を述べる.

1.  日本レーザー医学会社会保険委員会の本年度診療報酬改定への取り組みおよびレーザー技術に対する2024年4月診療報酬改定

日本レーザー医学会社会保険委員会では,2024年4月の診療報酬改定に向けて,2022年7月よりホームページ上及び保険委員会委員にご意見を募集したが,2024年4月の診療報酬改定に対する提案はなかった.日本レーザー医学会以外から提案されたレーザー関連の技術では,新規技術として,日本泌尿器科学会から提案された,膀胱結石,異物摘出術,レーザーによるもの(K798 3)が採用された.また,既収載技術としては,日本泌尿器科学会から提案された,経尿道的レーザー前立腺切除・蒸散術,ツリウムレーザーを用いるもの(K841-2 2)の増点が採用された.

以下に,「K798 3 膀胱結石,異物摘出術,レーザーによるもの」および「K841-2 2 経尿道的レーザー前立腺切除・蒸散術,ツリウムレーザーを用いるもの」について,その提案の要点及び再評価の結果を記載する.

1.1  膀胱結石,異物摘出術,レーザーによるもの(新設の提案)3)

1.1.1  技術の概要

膀胱結石,膀胱異物の患者に対し,腰椎麻酔または全身麻酔下に経尿道的に内視鏡を膀胱に挿入し,レーザーを用いて砕石した後に摘出する.EAUガイドライン(2023)において,推奨度がstrongである.医科点数表の解釈(令和4年4月版)において尿管結石症等に対するレーザー等による破砕が経尿道的尿路結石除去術として記載されており,膀胱結石に対しても同等の評価を希望する.

1.1.2  再評価の結果

再評価すべき医学的な有用性が示されおり,今回の診療報酬改定で採択され,保険収載された(K798 3).

1.2  K841-2 2 経尿道的レーザー前立腺切除・蒸散術,ツリウムレーザーを用いるもの(既収載技術の増点提案)3)

1.2.1  技術の概要

前立腺肥大に対するツリウムレーザーを用いた経尿道的前立腺蒸散術は,内視鏡に前立腺蒸散用のツリウムレーザープローブを装着し,生理食塩水の電解質溶液を灌流液として用い,前立腺腺腫を経尿道的に蒸散することにで,前立腺肥大症による尿道の圧迫を改善させる治療である.

1.2.2  再評価の結果

再評価すべき医学的な有用性が示されおり,今回の診療報酬改定で採択された結果,増点(点→点)となった.

2024年改定の結果,日本泌尿器科学会から提案された技術が2件評価された.2024年改定では,2022年改定に引き続き費用対効果およびガイドラインに収載されていることが評価されたと考えられる項目が目立ったが,レジストリーが整備されているかについても求められたと考えられる評価結果が目立った.

2.  最近の承認レーザー機器について

令和4年4月以降に承認されたレーザー機器を以下に示す.括弧内は製版業者名である.

2.1  ビズラスCombi(カールツァイスメディテック株式会社)

令和5年1月23日承認.DPSS/Nd:YAGレーザーである.レーザーの熱作用を利用して,網膜・毛様体・隅角光凝固等の眼疾患の治療に用いる.また,パルスレーザーの衝撃波による破壊作用または/および熱作用を利用して,後発白内障・緑内障等の眼疾患の治療に用いる.

2.2  PicoSure Proピコセカンドレーザー(サイノシュアー株式会社)

令和5年4月3日承認.アレキサンドライトレーザー(ピコ)である.体表面の表在性および深在性良性色素性病変の治療,または外傷並びに入墨による刺青の蒸散および除去に使用する.

2.3  飛鳥半導体レーザD-Lase M20(飛鳥メディカル株式会社)

令和5年5月23日承認.ダイオードレーザーである.生体組織の切開,止血,凝固及び蒸散に使用する.

2.4  トライビームPREMIUM(Jeisys Medical INC)

令和4年11月14日承認.Nd:YAGレーザー(Qスイッチ)である.体表面の刺青の除去または深在性および表在性色素性病変の治療に使用する.

2.5  ビズラスYAG(カールツァイスメディテック株式会社)

令和5年1月23日承認.Nd:YAGレーザー(Qスイッチ)である.パルスレーザーの衝撃波による破壊作用または/および熱作用を利用して,後発白内障・緑内障等の眼疾患の治療に用いる.

2.6  クローム(Quanta System SpA)

令和5年3月17日承認.Nd:YAGレーザー(Qスイッチ)である.刺青及び良性色素性病変の治療に使用する.

2.7  Quanta Fiber Dust レーザー(エダップテクノメド株式会社)

令和5年8月16日承認.光ファイバレーザーである.生体組織の切開,止血,凝固,蒸散および尿路の結石破砕術に用いる.

2.8  レボリックスHTL(タカイ医科工業株式会社)

令和4年6月20日承認.TmYAGレーザーである.生体組織の切開,止血,凝固,蒸散および尿路の結石破砕術に用いる.

3.  今後の社会保険委員会の活動について

2025年は診療報酬の大改定年ではないため,診療報酬に対する提案活動は限定的となるが,2026年に予定される大改定に向けた準備を行う.具体的には9月下旬には外保連及び内保連経由での提案予定の技術についてのアンケートの締め切りとなるため,7月ごろよりホームページ等を通して提案を希望する技術の公募を行う.ここで提案を希望する技術に社会保険委員会が中心となって優先順位をつけそのリストを外保連に回答する.外保連及び内保連では,複数学会から重複して提案が希望された技術につき調整を行い,担当学会を決め,担当学会となった際には,例年5月頃に提案書の提出締め切りとなるため,それまでに提案書を作成する.提案書の作成には,その技術の有用性を示す論文や使用する薬剤や機器の添付文書の提出が求められており,あらかじめ資料を収集しておく必要がある.

4.  保険収載されているレーザー治療及び薬機法で承認されたレーザー機器一覧

現在保険収載されているレーザー治療に関する実態を調査した結果をTable 1からTable 4にまとめた.表の作成にあたっては,日本医用レーザ協会に協力いただいた.2024年の医科と歯科の診療報酬点数表からレーザー治療に関係するものを抜粋し,まとめた(Table 1).Table 1には保険診療の[区分]と[名称],[保険点数],[留意事項],そして「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和6年3月5日保医発0305第4号)4)から算定方法の該当部分を抜粋し[通知]とし,さらに該当の保険診療で使用可能な[特定診療報酬算定医療機器の区分],またその医療機器の[一般的名称],そして実際に使用されている[装置名][製造販売元][販売元],最後に[現況]とし現在も製造販売されている装置には○,製造販売は中止されているがまだ市場で使用されている装置には△で区別した.

特定保険医療材料として償還されるディスポーザブル材料をTable 2にまとめた.Table 2には特定保険医療材料の[特定診療報酬算定/決定区分]と[償還価格],そして「特定保険医療材料の定義について」(令和6年3月5日保医発0305第12号)5)から該当部分を抜粋し[定義]とし,さらに「特定保険医療材料の材料価格算定に関する留意事項について」(令和6年3月5日保医発0305第8号)6)から算定条件の該当部分を抜粋し[通知]とし,またその医療材料の[販売名],[製販業者名],[保険適用開始日],そして[承認番号]を記載した.Table 3には償還が認められていないディスポーザブル材料をまとめた.ディスポーザブル材料の[一般的名称],そして[販売名][製販業者名][販売会社名][承認年月日][承認番号],最後に[使用目的及び効能・効果]とした.

Table 4は波長別のレーザー機器を,日本医用レーザ協会加盟企業から収集した情報をベースに作成した.各社から情報提供された機器に関し波長順に(短→長)並べた.Table 4中の項目は[波長][レーザーの種類][販売名][製造販売会社名][販売会社名]そして[承認年月日]と[承認番号],[使用目的及び効能・効果],最後に[現況]とし現在も製造販売されている装置には○,製造販売は中止されているがまだ市場で使用されている装置には△で区別した.[波長]は複数の波長を発振できる装置はそれぞれの波長を記載した.医療機器は改良が加えられていくのが常であり,ここにも一変申請されている装置が多くあるが,承認日は最初のモデルが承認された日とした.また[使用目的及び効能・効果]の項には,承認書に記載されている文言をそのまま記載した.[保険]にはその装置で可能な保険診療を,Table 1 で振った一連の番号を記載した.

今回これらの表を作成するにあたりご協力いただいた日本医用レーザ協会の会員会社の一覧をTable 5とした.

5.  まとめ

2024年診療報酬改定では,当学会からの提案はなかった.レーザー技術を応用した医療技術は概して費用対効果が良くQOLに対しても高い改善効果が期待されており,引き続きレーザー治療の普及に向けて活動を行っていくことが重要である.しかし,診療報酬改定のための技術評価には,ガイドラインへの収載や患者への利益を示すエビデンスが必要であり,さらに,レジストリー登録による有効性および安全性の検証も求められている.当学会においてはエビデンスを構築していく活動を期待する.また,レーザー関連の新規技術に関しては日本レーザー医学会の果たす役割は重要であり,産官学の連携を密にして安全なレーザー技術の普及に向けて活動を行っていくことが必要である.

外保連では,外科系技術について診療報酬を適正化するために外保連試案を提唱しており,引き続き外保連と連携することにより,診療におけるレーザー技術を適正に評価いただくことは,レーザー医療の普及のためにも重要である.

利益相反の開示

利益相反なし

Table 1 

Laser devices arranged in the order of insurance classification.

*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 1 

Laser devices arranged in the order of insurance classification.

*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 1 

Laser devices arranged in the order of insurance classification.

*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 1 

Laser devices arranged in the order of insurance classification.

*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 1 

Laser devices arranged in the order of insurance classification.

*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 1 

Laser devices arranged in the order of insurance classification.

*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 1 

Laser devices arranged in the order of insurance classification.

*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 2 

Special treatment materials related to laser device.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 3 

Approved medical device of light-delivery system related to laser device.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 4 

Laser devices arranged in the order of wavelength.

*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応をされているが販売は終了.

*2保険:Table 1の同番号の治療で使用可能.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 4 

Laser devices arranged in the order of wavelength.

*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応をされているが販売は終了.

*2保険:Table 1の同番号の治療で使用可能.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 4 

Laser devices arranged in the order of wavelength.

*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応をされているが販売は終了.

*2保険:Table 1の同番号の治療で使用可能.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 4 

Laser devices arranged in the order of wavelength.

*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応をされているが販売は終了.

*2保険:Table 1の同番号の治療で使用可能.

(注)2024年3月13日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.

Table 5 

Cooperative companies for investigation.

引用文献
  • 1)  外保連(一般社団法人外科系学会社会保険委員会連合)編,外保連試案2024,医学通信社,2023年
  • 2)  厚生労働省,診療報酬の算定方法の一部を改正する告示,令和6年厚生労働省告示第57号,厚生労働省,2024年,(参照2024年6月1日)
  • 3)  外保連(一般社団法人外科系学会社会保険委員会連合)編,令和6年度診療報酬改定に対する外保連要望書,2023年
  • 4)  厚生労働省,診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知),令和6年3月5日保医発0305第4号,厚生労働省,2024年,(参照2024年6月1日)
  • 5)  厚生労働省,特定保険医療材料の定義について(通知),令和6年3月5日保医発0305第12号,厚生労働省,2024年,(参照2024年6月1日)
  • 6)  厚生労働省,特定保険医療材料の材料価格算定に関する留意事項について(通知),令和6年3月5日保医発0305第8号,厚生労働省,2024年,(参照2024年6月1日)
 
© 2024 特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
feedback
Top