日本レーザー医学会誌
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光線力学的療法(Photodynamic therapy: PDT)の費用対効果~悪性脳腫瘍に関して~
秋元 治朗 田倉 智之
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論文ID: jslsm-43_0020

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抄録

緒言:限られた医療財源の中で,国民にlow cost-high qualityな医療を提供すべく,国は各種医療行為の費用対効果の評価を始めた.本論文では成人悪性脳腫瘍の代表である膠芽腫に対する各種治療行為の費用対効果の比較を,質調整生存年(quality adjusted life years: QALY)と,標準治療に対する増分費用対効果比(incremental cost-effective ratio: ICER)という二つの尺度にて行なった.対象・方法:成人膠芽腫に対して,可及的摘出に引き続き,放射線療法,Temozolomide併用,維持療法(初回再発まで)を行なった標準治療群に対して,局所療法であるCarmustine wafer留置群,術中PDT施行群,術後にBevacizumab療法を追加した群,術後にTumor-Treating Field(TTF)による電場治療を追加した群を想定した.各種治療のQALYを既報をもとに算出し,標準治療に対する増分QALYを算出,治療を行う上での増分費用も算出した.QALYの算出においては,再発時までKPS80を維持,再発後はKPS 50でbest supportive careとし,死戦期2ヶ月はKPS 20という症例をシミュレートした.PDTの費用に関しては,術前に投与するTalaporfin sodiumの薬剤費,PDT技術料,DPC I,II期の入院加算費,半導体レーザーの減価償却費などを加算している.結果:各治療群のQALY/ICERは,Carmustine wafer留置群0.952(QALY)/468万3258(円/QALY),PDT施行群1.283(QALY)/219万6178(円/QALY),Bevacizumab投与群0.871(QALY)/3371万3971(円/QALY),TTF施行群 0.988(QALY)/3501万9455(円/QALY)などと算出された.結論:中央社会保険医療協議会における費用対効果の分析ガイドラインでは,各種医療行為のICERの閾値として500万円/QALYを提示しており,閾値を下回る治療行為は費用対効果が高い治療として推奨している.今回の分析では各治療における有害事象による増分費用を算出しきれていないが,悪性脳腫瘍に対するPDTは他治療選択肢に比して,費用対効果が高い治療として評価されるべきと思われた.今後,肺癌,再発食道癌などに対しても費用対効果の面からPDTの優位性を検討する報告がなされることを期待する.

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