論文ID: jslsm-44_0004
キャリアを用いた生体分子や薬物の細胞質内送達法において,積み荷物質(生体分子や薬物)がエンドソームに捉われてしまう問題がよく起こる.その解決法の一つとしてphotochemical internalization(PCI)と呼ばれる方法が知られている.この手法では,積み荷と共に光増感剤をエンドソーム内に局在させ,光照射することで,積み荷のエンドソーム脱出と細胞質内送達を引き起こすことができる.この手法では,必要最小限の光照射を行うことでほぼ細胞にダメージを与えずに積み荷を細胞質内輸送することができるが,光の強さに応じて細胞毒性や細胞死などの副作用が見られる.その原因が,PCI作用に不要な「細胞表面に吸着している光増感剤」であることが,我々の最近の研究結果から示唆された.そこで本研究では,光照射前の細胞に対する洗浄や,血清による処理,トリパンブルーによる消光,などにより,細胞表面の光増感剤の除去または不活性化を試み,PCI法の副作用を減らす効果を調べた.ここでは,PCI法に基づく光依存的細胞質内RNA導入を,副作用低減を検証するための題材として扱った.