昭和医学会雑誌
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原著
二次性副甲状腺機能亢進症に対する副甲状腺摘出術に関する検討
油井 健史大嶋 健三郎洲崎 春海門倉 義幸
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2009 年 69 巻 2 号 p. 166-173

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抄録

内科的治療に抵抗する高度な二次性副甲状腺機能亢進症(secondary hyperparathyroidism,以下SHPT)に対して行われる副甲状腺摘出術(以下PTx)は透析患者のQOLを改善させるばかりでなく,生命予後の改善に寄与する.今回われわれは,2001年4月から2008年11月迄にSHPTに対する外科治療を行った220例の手術成績と問題点について検討した.内訳は初回手術症例205例,初回手術後の再発に対して救済手術を行った症例16例であった.この救済手術症例16例のうち15例は他院で初回手術が行われていた.初回手術例205例の男女比は107:98であり,年齢は18~82歳(平均56.2±11.3歳)であった.術前透析期間は1~33年(平均13.7±6.6年)であり,術前のintact-parathyroid hormone(以下i-PTH)値は233~2616pg/ml(平均836±354.4pg/ml),術直後のi-PTH値は2~622pg/ml(平均36.1±76.9pg/ml)であった.初回手術例の術後成績をi-PTHで評価すると,副甲状腺全摘群(術直後i-PTH≦60pg/ml)177例86%,持続性SHPT群(i-PTH>60pg/ml)28例14%であり,5年生存率は96.7%であった.一方,問題点は初回手術後に生じる持続性SHPT症例,頸部や縦隔に再発した症例,前腕移植腺再発症例の取り扱いであった.持続性SHPT症例28例のうち1例に対して再手術を行い,27例に対しては内科的治療を行って全例とも制御した.頸部や縦隔に再発した7例に対して頸部再開創手術を行い,全例でi-PTHの制御が可能であった.前腕移植腺再発症例9例に対して移植腺切除術を行った.複数回の手術を7例に行ったが,二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドラインのi-PTH推奨値180pg/ml以下に低下しない症例を7例認めた.以上より,全220例中7例が制御困難となった.制御困難となった症例はいずれも移植副甲状腺が生体内で播種し,全摘出が困難になったことに起因すると考えられた.二次性副甲状腺機能亢進症を制御するためには初回手術時に過剰腺を念頭に置き,副甲状腺を確実に全摘することに加え,初回手術時の移植方法を再考する必要がある.

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© 2009 昭和大学学士会
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